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2018年05月19日 20時22分 JST | 更新 2018年05月21日 15時49分 JST

身長77センチの目線に合わせてみたら。よちよち歩きのむすめが私にくれたもの

小さい子どもがいると、遠出しづらい。それでも…

Emi Kawasaki

むすめが歩き始めたのは、1歳2カ月を過ぎたころだった。ついこの間まで、お腹の中にいたはずの我が子が、たったひとりで支えもなく歩いている姿に唖然とした。

もっとゆっくり育ってくれていいのに。そう思った。

ありえないスピード感で時間が過ぎていく

私は、ハフポストで記事広告のディレクションを担当している。企画、営業、制作(取材・執筆・編集)、SNS運用、レポーティングなど仕事の内容はいろいろだ。やればやるほど仕事は増える。

裁量労働制を取り入れているため、子どものお迎えの時間になると退社できるし、リモートワークも認められている。働きやすい職場だといつも感じている。

でも――。

産休、育休を合わせて10カ月ほど仕事を休んでいたためか、復帰直後は仕事のペースを取り戻せずにいた。チームのメンバーに迷惑をかけないように、ペースを乱さないようにと、実際には無理をしていたように思う。

毎日、企画書、原稿、レポートなどの締め切りが迫っている中、新たなタスクも次々と増えていく。

仕事が片付かないまま、保育園のお迎え。家に帰ると、夫と分担しながらタスクをこなす。むすめのご飯、お風呂、寝かしつけ。洗濯を回しながら翌日の保育園の準備......。

適当に食事をとった後、パソコンを開いて仕事の続きをしていたら、深夜にむすめの夜泣きが始まることもある。

なんにも片付かない。

しっかりしなくちゃ。自分に発破をかける。もっと仕事にコミットしなくては。そう思いながら過ごしていると、今まで味わったことがない速さで時間が流れていった。

働きながら子育て。これほど恵まれた環境はない

生後9カ月でむすめを保育園に入れた。区の認可園は全て落ち、このままでは仕事復帰できないと嘆いたが、夫が勤めている企業内の保育施設(認可外保育園にあたる)に運よく入れてもらうことができたのだ。

とってもありがたかった。

子どもを保育園に送り届け、仕事に向かうときは、いつも「この子の将来のためにも、おかあちゃんがんばってはたらくぞーー」そんな気持ちになれる。だから保育園は尊い。

待機児童を受け入れてくれる保育園。

早めの退社、リモートワーク等を認めてくれる会社。

家事も育児もしっかり取り組んでくれる夫。

働く母親にとって、これほど恵まれた環境はない。

それなのに――。

思うように仕事が進まない。子どもと過ごす時間が少ない。それでも子どもはどんどん成長していく。

何もかもが中途半端。

子育てにきちんと向き合えていない自分が、子どもの成長に追いついていないようにも感じていた。

Emi Kawasaki

あるとき保育士さんに「〇〇ちゃん、スプーンも上手に使えるようになりましたね」と言われ、絶句した。

スプーンを持たせると、こぼして服も食卓もめちゃめちゃになるのが億劫だったから、家では私が口元にスプーンを持っていき食べさせていた。スプーンを使って食事する保育園での様子を想像して、なんともいえない寂しさが込み上げてくる。

私はいつしか、子どもの成長を素直に喜べない母親、「いつまでも赤ちゃんでいてほしい症候群」になっていた。我が子の成長がなによりのよろこびだとよく聞いていたし、それが当たり前だと思っていたのに。

むすめのペースで歩くことで見えたもの

ある雨上がりの休日だった。

いつもの公園に連れて行く。ベビーカーや抱っこ紐を使えば徒歩3分くらいの距離。

むすめが歩けるようになってからは、時には手をつなぎ、時にはてくてく歩くむすめを見守りながら、公園まで続く小道を一緒に歩く。

むすめは、一歩一歩ゆっくり歩く。立ち止まる。途中で座り込む。

時間に追われているときは、スタスタ歩いてくれないむすめにいらだったり、抱きかかえて移動したりすることもあった。

でも今日は休日だ。(もういいや。)この子のペースに合わせよう。

Emi Kawasaki

時間を気にせず見守ってみると、むすめは本当にいい表情で、落ち葉を拾ったり、道端に咲く花をツンツンしたり、虫を追いかけたり、目の前に広がる世界を存分に楽しんでいるようだった。

目をキラキラさせながらいろんなものに手を伸ばす。

なかなか前に進まない。徒歩3分の距離を、20分かけてゆっくり移動する。

Emi Kawasaki
壁には、(子どものための覗き?)穴が空いている。

Emi Kawasaki
雨上がりの綿毛は湿っていてくずれにくい。

Emi Kawasaki
消化器の箱の中に、消火器が入っているとは限らない。

まだ子どもが小さいから、なかなか遠出できないとか、出かける場所や時間帯も限られていて不自由であるとか。子育てしていると、どこか閉ざされた狭い世界にいるような気持ちになっていた。

でも、そうではなかった。子どもが、世界を広げてくれる。

Emi Kawasaki
落ちているものはなんでも拾う。拾ったものは、なんでもくれる。

身長77センチの目線に合わせて見たら、そこには今まで見えていなかった景色が広がっていた。時間を気にせずむすめのペースでゆっくり歩いてみたら、日々の焦りはどこかに消えていた。

むすめとの散歩は安心できる時間に変わった。

犬の散歩をしている人が、「ママとお出かけいいわねえ」と声をかけてくれたり、近所のご夫婦と挨拶を交わしたりすることも、これまで味わえなかった時間だ。

これからは、むすめの小さな成長を、楽しみながら見守っていきたい。

Emi Kawasaki

徒歩3分の道のりも、子どもの歩幅で歩いてみると「アタラシイ時間」に変わりました。見慣れた景色でも、新たな気づきがあることを知りました。

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