2021年03月18日 17時41分 JST | 更新 2021年03月18日 17時41分 JST

ナイジェリアの貧困地区から、世界最高峰のバレエスクールへ。少年の運命を変えた、一本の動画の誕生秘話

「新しい時代のロールモデルに」12歳の少年が思い描く、夢のその先とは

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ナイジェリア最大の都市・ラゴス。その郊外にある貧困地区から、一人の少年が世界に羽ばたこうとしている。  

12歳のバレエダンサー、アンソニー・メソマ・マドゥ(Anthony Mmesoma Madu)さんだ。

昨夏、Instagramに投稿された動画をきっかけに、その名が世界中に知れ渡り、夢への切符を掴んだ。

「新たな時代のバレエダンサー、そのロールモデルになりたい」

アンソニーさんと、彼のコーチであるダニエル・アジャラ・ウェセニ(Daniel Ajala Owoseni)さんに話を聞いた。

独学で開設した、無料のバレエ教室

ナイジェリア南西部に位置する、ラゴス(Lagos)。かつては首都として栄え、現在でも同国最大の規模を誇る都市だが、その郊外には貧困地区が存在する。それが、アジャンバディ(Ajangbadi)だ。

この地区にある「Leap of Dance Academy」は、ダニエルさんが運営するバレエ教室。「経済的余裕がない家庭の子どもたちにも、アートやスポーツ、カルチャーに触れる機会を」との思いで、ダニエルさんは独学でバレエを学び、2017年、レッスンも道具も無料のバレエ教室として設立した。

現在12歳のアンソニーさんは、この教室に通うレッスン生の一人。

5歳で「バレエダンサーになりたい」と決心してからは、夢中でバレエの練習に励む日々。8歳でダニエルさんと出会い、同アカデミーに通い始めた。

提供写真

アンソニーさんに大きな転機が訪れたのは、2020年夏のこと。

同アカデミーは、Instagramを通じて生徒たちのレッスンの様子を日々発信している。「自分の進歩を確認し、自信をつけるためにも、毎日のように踊りの様子を録画してもらっている」というアンソニーさんも、ダニエルさんに多くのビデオを撮影してもらってきた。

ある日投稿したのは、雨が降る中、裸足で踊るアンソニーさんの様子。

この動画は瞬く間に世界中に拡散され、アンソニーさん、そして同アカデミーへの支援の申し出が多数寄せられた。バレエ用品の寄付や、支援金...アンソニーさんには、ニューヨークを本拠地とする世界最高峰のバレエ団「American Ballet Theatre」傘下にある名門バレエスクール「Jacqueline Kennedy Onassis School」からの留学受け入れ、および奨学金のオファーが舞い込んできた。

アンソニーさんは今後、同スクールに留学してトレーニングを積み、海外で活躍するバレエダンサーになるための一歩を踏み出す予定だ。彼が目指す「新しい時代のバレエダンサー」、そのビジョンとは。

ナイジェリア初のバレエダンサーに

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リモート取材に応じてくれた、アンソニー・メソマ・マドゥさん。

── 5歳の時に「バレエダンサーになりたい」と決意した、その理由を教えてください。

アンソニーさん(以下、アンソニー) この世界にはたくさんのダンスがあります。例えばナイジェリアでは、カルチュラルダンスやヒップホップが人気ですし、それを見る人、踊る人もたくさんいます。

たくさんのダンスの中でも、私は「バレエ」を見ている時が一番幸せな気持ちになれたし、とても情熱を感じられるダンスだと感じました。自分もそういう思い、感動を届けられる存在になりたくて、「バレエダンサー」になろうと決心しました。それが5歳の時。その当時から夢中になって、毎日、一日中練習をするようになりました。

ナイジェリアでは、まだまだバレエはマイノリティです。ナイジェリアには、プロのバレエダンサーはまだ一人もいないですし、アカデミーで一緒にレッスンをする仲間は、私以外のほとんどが女性です。

男性ダンサーが少ないから、一層、男性がチャレンジしにくい環境ではあります。そうした状況を変えるためにも、私がロールモデルになりたいと思っています。

── Instagramの動画が世界中で「バズ」を生み出したとき、どんな気持ちでしたか?

アンソニー とてもハッピーでした。この動画のバズは、私のバレエダンサーとしてのキャリアを大きく変えてくれました。

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この動画を撮影したのは、ダニエルです。彼は、私がレッスンする様子を今までも撮影し続けてくれて、動画のコレクションがたくさんあります。このたくさんの動画によって、私は「できるようになっている」ことを実感でき、自信を得られるのです。

知らないステップやダンスがあっても、まずはトライしてみる。最初は全然上手にできなくても、練習を重ねる度に上達していることが、日々撮影してきた動画で実感できる。この積み重ねが「バズ」という形で、夢への一歩に繋がったのだと思います。

── バレエダンサーのほかに、夢や目標があれば教えてください。

アンソニー まずは、たくさんの人に見てもらえる、感動を与えられるようなダンサーになりたいですし、それにより、ナイジェリアのことも世界中の人に知ってほしいと思っています。

そのほかには、歌を歌うことも学んでみたいです。

Instagramの動画によって、アメリカでバレエを学ぶチャンスを得ることができましたが、他の国でもバレエや、歌を学んでみたいです。たくさんの踊り、美しい場所、素敵な人を見ることで、バレエの表現にも生かすことができるのではと思っています。

バレエはスポーツでもあるし、アートでも、カルチャーでもあります。バレエを通して叶えられること、伝えられることはたくさんあると信じています。これからも一生懸命練習を重ねて、世界で活躍できる、ナイジェリア初のプロバレエダンサーという夢を叶えたいです。

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