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2020年11月20日 15時17分 JST | 更新 2020年11月20日 15時18分 JST

本物の「カリオストロの城」は映画と全く似ていない。どういうこと?

実在したカリオストロ伯爵は18世紀の「天才詐欺師」。イタリアのサンレオ城砦に投獄されていました。

ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント/安藤健二
「ルパン三世 カリオストロの城」のDVD(左)とサンレオ城砦

宮崎駿監督のアニメ映画「ルパン三世 カリオストロの城」が11月20日午後9時から、日本テレビ系の『金曜ロードSHOW!』で放送される。映画のモデルになったという噂がある本物の「カリオストロの城」がイタリアにあることはご存じだろうか。

 

■映画とは全く違う姿

安藤健二
城下町から見たサンレオ城砦(2018年9月6日撮影)

それが、巨大な岩山の上にあるサンレオ城砦だ。標高589メートルのフェルトロ山の山頂に砦があり、中腹には城下町が広がっている。天然の要害だ。

サンレオの地名は、4世紀初頭にレオーネという石工が、キリスト教の布教活動をしたという伝説に由来する。14~15世紀に入ると周辺領主によって激しい争奪戦が繰り広げられた。1441年にウルビーノ公国のフェデリーコ・ダ・モンテフェルトロ公が手中に収め、ルネサンス期の華麗な砦が建造された。

サンレオ城砦は曲線を多用した丸っこい姿をしており、映画に登場したカリオストロ城とは全く似ていない。カリオストロ城はもっと、尖塔が立ち並んでいたはず。モデルになったのなら、なぜこんなに違うのだろう。

 

■モデルになったという話は怪しい

実は18世紀、「カリオストロ伯爵」と呼ばれた人物がサンレオ城砦に投獄されていたのだ。この人物は、宮崎駿監督の映画に登場する「ラザール・ド・カリオストロ伯爵」の名前の由来になったとみられる。

つまり、サンレオ城砦が「カリオストロの城」の映画のモデルになったという噂は信憑性に乏しい。「カリオストロの城」という出自が共通していることから、「映画のモデルになった」と噂が広まったように思える。

  

■本物のカリオストロ伯爵は「天才詐欺師」

安藤健二
サンレオ城砦に展示してあったカリオストロ伯爵の肖像画

実在したカリオストロの本名は、ジョセッペ・バルサモ。「天才的な詐欺師」として歴史に名を残している。

1743年、イタリア南端のシチリア島に生まれ。錬金術師、医師、占い師など様々な肩書きを名乗って、ヨーロッパ諸国の宮廷に潜入。アラビアで生まれた「アレッサンドロ・カリオストロ伯爵」と称していたが、名前も経歴も真っ赤なウソだった。

フランスのマリー・アントワネット王妃が男児を出産するという予言を的中させたことで名を馳せ、貴族階級から多額の金を巻き上げていた。しかし、同王妃に関連した「首飾り事件」に伴い、詐欺容疑で逮捕。無罪放免されたものの地位は失墜する。

1791年には、秘密結社フリーメイソンの分派の拠点をローマに設置したことが咎められて、教皇庁に異端の容疑で逮捕される。カリオストロは終身刑となり、教皇領となっていたサンレオ城砦に送られて4年後に亡くなったという。

 

■カリオストロ伯爵が収監された牢獄に行ってみた

安藤健二
カリオストロ伯爵が収監されていた「井戸の牢獄」

筆者は、2018年9月にイタリア旅行に行った際にサンレオ城砦を訪問。カリオストロが収監されていた「井戸の牢獄」という部屋を見学した。6畳ほどの部屋には、小さい窓と木のベッドがあるだけ。天井の穴から、カリオストロは釣り下げられて入獄し、食事も上から差し入れられた。

教皇庁は、このような厳重な警備体制を敷くことで、「天才的な詐欺師」が脱獄しないように警戒していたのだろう。 

イタリア人とみられる家族連れの観光客で、狭い部屋はいっぱい。写真を撮るのにも苦労した。現在では石壁に新しくドアが設置されて、自由に出入りできるようになっていた。

狭い窓の隙間から、山腹に広がる中世さながらの城下町が見えた。「生前のカリオストロもこの光景を眺めていたのかな」と、思いを馳せた。

安藤健二
城砦から撮影したサンレオの町