PRESENTED BY 環境省

「課題こそイノベーションの源泉」唯一無二のフロンティア・福島が向かう未来とは?

「福島、その先の環境へ。」シンポジウム2024が開催された。福島を一歩先へ進めるために、私たちは何ができるのか? イベントの様子を取材した。

福島は、成熟しきった日本社会に突如現れたフロンティア。
課題こそ、イノベーションの源泉だ。その意味で、福島は無限の可能性を秘めている。

東日本大震災および東京電力福島第一原子力発電所事故から、13年を迎えた。震災や原発事故について、教科書でしか知らない世代もいる。一方、その復興・環境再生の進捗は区域によってまばら。いまだ道半ばだ。

そうしたなか、3月10日、「福島、その先の環境へ。」シンポジウム2024が開催された。

福島県双葉郡楢葉町に位置するナショナルトレーニングセンター・Jヴィレッジのホールでは、福島の復興と環境再生をテーマに白熱した議論が交わされた。

福島を一歩先へ進めるために、私たちは何ができるのか? イベントの様子を取材した。

KAORI NISHIDA

除去土壌の県外最終処分まで、あと21年。認知が課題。

「東日本大震災から13年を迎える。復興に精一杯取り組んでいる浜通りの方々に、心からエールを送りたい」

今年で4回目となる「福島、その先の環境へ。」シンポジウム2024。主催の環境省を代表し、国定勇人政務官が開会の挨拶をおこなった。

「発災直後、新潟三条市市長として、およそ850人の避難者を受け入れました」

 

国定政務官は2011年の記憶を振り返り、「当時と今では、大きく状況が変わっている」一方「浜通りの現状をみると、復興は道半ば」であると指摘。そのうえで、セクターを超えた連携を強化し、それぞれの未来に向かって道を切り拓くことが重要だと強調した。

環境省 国定勇人(くにさだ・いさと)政務官
環境省 国定勇人(くにさだ・いさと)政務官
KAORI NISHIDA

環境省では3.11以降、除染をはじめとした被災地の環境再生に加え、脱炭素などの環境施策にも取り組んでいる。新産業の創出を通じ、復興を新たなステージへ引き上げる狙いだ。   

そんな福島の環境再生・復興に向けた課題の一つが、「除去土壌(※)」だ。

※除染で取り除いた土や放射性物質に汚染された廃棄物など。約1400万ヘクタール(東京ドーム11杯分)にも上る除去土壌等は、適切に処理されたのち、中間貯蔵施設で集中的に管理されている

環境省の環境再生事業について活動報告をおこなった、中野哲哉参事官は次のように語る。

「大熊町、双葉町にまたがる1600ヘクタールの広大な区域に中間貯蔵施設を建設。復興を進めるため、福島全土にあった除去土壌を集めました。その土地の地権者は被災者。避難先で憔悴しているところ、土地を借りるお願いをしてきました。

被災者へ多大な負担がかかったなか、一生涯、あの土地を使い続けるのか? 未来永劫、大熊町、双葉町に除去土壌を置き続けるのか――? 福島にすべてを負わせることはできない。その判断のもと、2045年までに除去土壌等を福島県外の最終処分場に搬出することを国として約束しました」

しかし、除去土壌等の県外最終処分に関する認知度は低いという。

「今年度に実施したネットアンケートによると、福島県内で5割、県外で2割しか認知がない。県外最終処分まで、あと21年。認知を上げていく必要がある」

環境省 中野哲哉(なかの・てつや)参事官
環境省 中野哲哉(なかの・てつや)参事官
KAORI NISHIDA

今から福島について知ってもいい。考えてもいい。

そうした背景からおこなわれた施策の一つが『福島、その先の環境へ。』ツアー2023だ。

除去土壌の最終処分をはじめとした、福島の復興や環境再生をめぐる課題について考え発信してもらうことを目的に、大学生や若手社会人がオリジナルツアーを企画。昨年9月には実際にツアーが開催され、総計162人が参加した。

シンポジウムではツアー企画者がプレゼンテーションを実施。『福島、その先の環境へ。』ツアー2023の様子を報告した。

ツアー企画者の1人である村上さんは、現地を訪れたことで「福島に関係ない人から、関係ある人へ変わった。ツアーを通じて見聞きしたことが『自分の物語』になりました」と話す。

『福島、その先の環境へ。』ツアー2023についてプレゼンテーションをおこなう村上さん
『福島、その先の環境へ。』ツアー2023についてプレゼンテーションをおこなう村上さん
KAORI NISHIDA

ツアーに参加し、初めて福島を訪れた村上さん。現地での経験を通じて、多くの気づきや学びがあったという。

「復興状況は場所によって異なり、被災者の体験はそれぞれ違う。そして、未来に向かっている場所、時間が止まっている場所があることを知りました。

私は今まで、福島と接点を持つことなく過ごしてきました。だから、ツアーへ参加することに不安も感じていた。けれど、今回のツアーを通じて、今から福島について知ってもいい。考えてもいい。そう思えるようになりました。

手早く復興することはできません。地道な人々の取り組みが、福島を前進させると思います。そして、私たち福島県外から訪れた人が福島のさまざまな課題や魅力を体験し、アウトプットすることも、復興の手助けになると考えています」

「福島はフロンティア」開拓者になりたい若者たちが集う土地。

ツアーのプレゼンテーションを終えると、タレントのIMALUさん、NPO法人あなたのいばしょ理事長の大空幸星さんらがステージに登壇。トークセッションがおこなわれ、白熱した議論が展開された。

トークセッション登壇者。左から、フリーアナウンサー・政井マヤ(まさい・まや)さん、株式会社小高ワーカーズベース 代表取締役・和田智行(わだ・ともゆき)さん、NPO法人あなたのいばしょ 理事長・大空幸星(おおぞら・こうき)さん、タレント・IMALU(いまる)さん、環境省・国定政務官、環境省・中野参事官
トークセッション登壇者。左から、フリーアナウンサー・政井マヤ(まさい・まや)さん、株式会社小高ワーカーズベース 代表取締役・和田智行(わだ・ともゆき)さん、NPO法人あなたのいばしょ 理事長・大空幸星(おおぞら・こうき)さん、タレント・IMALU(いまる)さん、環境省・国定政務官、環境省・中野参事官
KAORI NISHIDA

「東日本大震災と福島第一原発事故を風化させず、継承するために何が必要なのでしょう。震災について知らない、興味がない人たちへ、いかに伝えていくべきか――?」

ファシリテーターを務める政井さんの問いかけに対し、IMALUさんは「テーマ設定の重要性」を指摘。

「福島についてSNSで発信したとき、『記憶が薄れてきているなか、発信をありがとう』など、リアクションをいただきました。だけど数字(いいね数など)として、たくさんの人が興味を持ってくれたかというと、残念ながらそうでもなかった。

だから、福島について興味が薄い人も『見たい』『知りたい』と思えるテーマで発信していくことは今後の課題だと思っています」

IMALUさん
IMALUさん
KAORI NISHIDA

一方、福島の課題解決に資するビジネスの立ち上げを支援する小高ワーカーズベース代表・和田智行さんは、具体的なアクションを起こす重要性について強調する。

「復興や環境再生について、ビジョンを発信するだけでなく、現地で事業を立ち上げることが大切。ただ福島の現状を語るだけでは、興味を持ってもらいづらい。だから、たとえば地域創生を絡めることで興味喚起できる。かつて住めなかった土地で事業を始め、運営し、ちゃんと儲かっていると話すと興味を持ってもらえます」

株式会社小高ワーカーズベース・和田さん
株式会社小高ワーカーズベース・和田さん
KAORI NISHIDA

さらに福島の可能性について、和田さんは次のように続ける。

福島は、成熟しきった日本社会に突如現れたフロンティア。閉塞感がある日本において、ゼロから新しくつくれる土地です。

避難区域になった地域は、住民がゼロになった。だからこそ、別のスタート地点からまちづくりが始められるとも言える。そんなフロンティア精神に共感した若い層が、福島に集まり始めています。

 

課題こそイノベーションの源泉。その意味で、福島は無限の可能性を秘めている。そうした視点から情報を発信することで、『復興に参加したい』ではなく『開拓者になりたい』ワクワク感で福島に来る若者がさらに増えていくのでは

大空さんは和田さんの意見に賛同し、福島で興る新産業について語った。

「福島には先進的なエネルギーシステムがある。たとえば、水素エネルギーが各地で実際に使われている。革新的なビジネスモデルを持つ、スタートアップが参入する土壌が福島にはある。また、スタートアップを増やそうというマインドもある。まさにフロンティア。強い活力と大きな可能性を感じました」

NPO法人あなたのいばしょ・大空さん
NPO法人あなたのいばしょ・大空さん
KAORI NISHIDA

「FUKUSHIMA / フクシマ」の文字には、さまざまな響きがある。

東日本大震災による甚大な被害。苦い記憶。そして原発事故による環境汚染という負の遺産――。薄暗い感情が想起させられる。事実、いまだに人が住めない区域も存在し、復興と環境再生は道半ばだ。

他方で、先進的な新産業が創出され、唯一無二の「フロンティア」として盛んに人々が出入りしている。希望に満ちた土地でもある。

「復興」「環境再生」というと、元の姿に戻すことをイメージしがちだ。しかし、福島の現状は大きく異なる。時計の針を巻き戻すのではなく、前に前に進めていく。そんな力強い未来志向な姿を知ることで、福島と私たちの関わり方が変わるかもしれない。

『福島、その先の環境へ。』ツアー2023の企画をおこなった次世代会議のメンバーたち
『福島、その先の環境へ。』ツアー2023の企画をおこなった次世代会議のメンバーたち
KAORI NISHIDA

福島の環境再生に関する情報は、こちら
除去土壌の県外最終処分に向けた取り組みに関する情報は、こちら

写真:西田香織
取材・文:大橋翠

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