2021年11月17日 12時00分 JST | 更新 2021年11月17日 12時00分 JST

SNSとの付き合い方や身の守り方、どうしてる? クリエイターも葛藤した安全な利用法とメンタルケア

今、Instagramは若者が安心できる環境作りやメンタルケアの方法をクリエイターと共に考え続けている。誰もが切実に期待する、健全なSNSを作る「ある会議」に迫る。

Instagramは世界で10億人以上が利用する巨大なSNSだ。なかでも日本は月間アクティブアカウント数が3,300万(2019年3月時点)、ハッシュタグの検索数は他国の平均の約5倍を誇る。

SNSの利用者数が増加するなか、世界中でSNSの健全で安全な利用法を求める声が上がっている。こうした状況に先んじてInstagramは若年層を守る取り組み、利用者のメンタルヘルスへの積極策を講じている。日本では「#インスタANZENカイギ」を通じて発信中だ。

メンタルヘルスとSNSの関係に、若年の利用者も関心度大

#インスタANZENカイギは2020年3月に、多くの人気クリエイターが所属するUUUM(ウーム)株式会社と共同で立ち上げたプロジェクトだ。クリエイターや若年層の利用者と共にInstagramの安心・安全な利用法を考えることを目的としている。大きな活動は以下の3つ。

・クリエイター自身にInstagramの安心・安全な使い方を理解してもらい、一緒に考える
・クリエイターと共同で、若年層の利用者が参加するアクティビティやイベントを実施
・若年層の利用者向けに、クリエイターを起用した啓発コンテンツを制作

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2020年10月25日にInstagramライブをBuzzFeed Japanと実施。若年層のメンタルヘルスを考えるテーマに視聴者からは200を超える質問が寄せられ、アーカイブの再生数は17,000回以上に達した。
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2020年12月には、動画クリエイターののえのんさんとコラボした、若年層向けのデジタルリテラシー教育プログラム「みんなのデジタル教室」を発信。SNSを利用するうえでの、より良い選択肢を考えた。

人気クリエイターのInstagramを利用する理由と活用術

2021年9月27日に、「#インスタANZENカイギ シンポジウム」が開催。3人のクリエイターがSNSの使い方の工夫やメンタルヘルスについて語った。その一部を紹介する。

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(右上から時計回りに)のえのんさん、臨床心理士のみたらし加奈さん、クリエイターのぁぃぁぃさん、ディスカッションの司会を務めたFacebook Japanの栗原さあやさん。

栗原さあやさん(以下、栗原) 普段、みたらしさんはInstagramをどう活用していますか?
みたらし加奈さん(以下、みたらし) 私は臨床心理士で、Instagramではメンタルヘルスケアの情報を発信しています。メンタルバランスが崩れて専門機関に行くのもしんどい方もいらっしゃいます。そうした方々に声が届けばとSNSを活用しはじめました。
情報発信にSNSを使ったのはInstagramが最初です。メンタルケアといわれても専門的でわかりにくかったり、当事者意識をもてない情報も多い。ビジュアルと文字を投稿すれば幅広い世代の方に届くのでは、と思ったのがきっかけでした。
栗原 ぁぃぁぃさんはいかがですか?
ぁぃぁぃさん(以下、ぁぃぁぃ)「自分とはこういう人」や、好きなものを発信する“家”のような存在ですね。Instagramはフォロワーとの距離が一番近いSNSと感じています。二つのアカウントを使い分けていて、メインは作品の投稿用で、サブではダイレクトメッセージ(以下DM)でフォロワーと密に関わっています。
栗原 のえのんさんはどうでしょう?
のえのんさん(以下、のえのん) 私は姉妹で動画クリエイターをしていますが、Instagramではトレンドをチェックしています。“私の事情”を発信できる身近なツールとしても注目しています。

クリエイターが痛感した、SNSでの「身の守り方」の重要性

栗原 #インスタANZENカイギへの参加で感じたこと、変わったことはありますか?
ぁぃぁぃ SNSで情報を発信するほど、他人の攻撃から身を守る術を知るのは大事だと思うようになりました。学校生活など距離が近い人からの攻撃もあると思います。身近なほど、ダメージをより受けてしまうのでは。

ぁぃぁぃさん:クリエイター。幼少期よりタレントして幅広く活動。現在はYouTubeをはじめ、多数のSNSで発信を行う。

ぁぃぁぃ 一方で#インスタANZENカイギのハッシュタグをつけて発信することで素直にフォロワーに受け入れられたと感じます。「コメントを制限してもいい」「相手に気がつかれずにやりとりを制限する方法」など、みんなのためになることを発信できたのも大きかったな、と。
のえのん 私は「みんなのデジタル教室」に参加しました。今、高校三年生ですが近い年齢の存在として発信したこと、反響が大きかったことが嬉しかったです。#インスタANZENカイギで知ったメンタルヘルスへの取り組みを発信できたことも良かったですね。

臨床心理士が考える、コロナ禍と心の健康。そしてSNSとの関係性とは

栗原 コロナ禍が長引くなか、メンタルヘルスへの影響はありますか?
みたらし コロナ禍のアメリカでは以前に比べ、3.6倍の方がうつ病に罹患しています。日本では2倍程度増えたと言われますが、これはあくまで専門機関を受診した数。専門家は氷山の一角と見ています。専門機関にかからずに一人で抱え込む方も本当に多いのでは。コロナ禍では常時ストレスが溜まっている状態と考えていいと思います。蓄積したストレスが溢れ、メンタルバランスも崩しやすいんです。

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みたらし加奈(みたらし・かな)さん:臨床心理士。メンタルヘルスケアを身近な存在にするためにSNSを通じて活動。NPO法人 mimosasで副代表理事も務める。

栗原 クリエイターへのコロナ禍の影響や特徴的な悩みはありますか?
みたらし 前に立って活動している人も多いと思うので、ストレスのはけ口にされてしまうこともあるかもしれません。例えばコロナ禍でメンタルのバランスが崩れ、ベッドの中でSNSしか見られなくなってしまう人がいるとします。その時、マイクロアグレッション(無意識で、見えにくい差別)や誹謗中傷の対象となるのは、発信力の大きいクリエイターかもしれません。
クリエイターのなかにはコロナ禍のストレスを抱えながら、ネガティブなコメントにもさらされる「二重のストレス」がある人もいます。

クリエイターにも切実な問題。ネガティブコメントやDMへの対処法

栗原 SNSで発信する際に気をつけていることはありますか? 誹謗中傷コメントやネガティブなDMがきた時にはどうしていますか?
のえのん 投稿にアンチコメントがつくと「ネガティブなコメントをしていいんだ」という空気感になりがちなので、削除、制限機能を使って嬉しいコメントが溢れる環境を心がけています。

のえのんさん:ほのぼのさんとの姉妹YouTuber。SNSでは購入商品の紹介をはじめ、ファッションやピアノ、ダンスを披露。Z世代から高い支持を得ている。

ぁぃぁぃ コロナ禍で誰もがすごく我慢している世の中なので、発信内容にはとても気をつけています。私がしている対策の一つは「非表示ワード」の設定。他人からすれば何気ない言葉でも、コンプレックスを刺激する言葉は非表示にしています。
検索画面の「おすすめ」も、興味がない投稿を外して好きなものだけが出てくるようにしています。良い機能なので、利用者に広がってほしい使い方です。
みたらし ブロックは正しい対処法だと思うので、活用してもらいたいですね。私も「非表示ワード」をコメント欄に設定しています。
また専門家として発信しているので、発言が正しいのかのファクトチェックはかなり厳しくしています。

深い悩みの渦中にいる時。クリエイターだからこそ「できること」

栗原 心の健康にために悩んでいる時にすること、相手のためにできることはありますか? また、「クリエイターだからできること」があれば教えてください。
ぁぃぁぃ 「本当に気分がのらないな」という時にSNSを見てダメージを感じるなら、離れることが一番なのでは。
ショッキングな内容のDMをもらうこともあります。私に依存しすぎる関係は良くないと思うので、絵文字で気持ちを表現して返信。みんな話を聞いてほしいんですよね。適度な距離を保ってフォロワーといい関係性を築いていけたらと思います。
のえのん DMで繊細な悩みを相談されることがあります。変に返して傷つけたら、返事をしないで怒らせたら…と悩んだ経験も。#インスタANZENカイギでDMへの返し方を学んで、心が軽くなりました。
みたらし つらいDMや誹謗中傷コメントを目にすることでトラウマになってしまう可能性もあります。また自分に対してのコメントじゃなかったとしても、二次受傷といって間接的に傷ついてしまうこともあります。Instagramの制限機能をうまく使うこと、周囲もサポートしてあげるのが良いですね。
メンタルヘルスが崩れそうになったら、余裕があるうちに心の専門機関に相談することも大事です。

若年層も親世代も、もっと知りたい。Instagramが次々に放つ施策

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2021年7月から16歳未満の新規アカウントはデフォルトで非公開に。機能テスト時に10人中8人の若年層が非公開を選択したことから実装された。

Instagramは若年層の安心・安全な利用のための施策を続けている。また、ネガティブな大人を若い利用者にアプローチさせない仕組みもあり、若年層やクリエイターだけではなく、子どもをもつ親世代も目を向けたい機能だ。また誹謗中傷から利用者を守る、全年代向けの機能も。特に注目したい施策は以下だ。

16歳未満の新規アカウントをデフォルトで非公開設定
18歳未満の非フォロワーに大人がメッセージを送れない機能
一部の大人が若年層の利用者を見つけにくくする技術
望まないやりとりからアカウントを保護する「制限」機能
誹謗中傷目的のコメントやDMから利用者を守る「抑制」機能
「セキュリティの確認」に関する通知を表示(*1)
※1…現在日本の一部の利用者に表示され、今後すべての利用者に表示される予定

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著名人やクリエイターを守る、コメントを「制限」する機能。相手に通知されずにコメントを非表示にできる。クリエイターに限らず、一般利用者も利用可能。
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2021年8月に導入された、非フォロワーや直近にフォローした利用者からのコメントを非表示にする「抑制」機能。DMを「リクエスト」フォルダに自動的に分類することも可能。これは非フォロワーや最近フォローしたアカウントからの誹謗中傷コメントが多いというデータから実装された。

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SNSはコミュニケーションの場として拡大、成熟し続けている。SNSの雄であるInstagramが利用者の安心・安全な環境とメンタルまで踏み込んだ策を講じることで、これからのSNSのスタンダードが作られていくのかもしれない。そして利用者も積極的に施策を知り、有効活用すべき時期にきているのだろう。

 
(グラフィック・高田ゆき/ハフポスト日本版)