PRESENTED BY JICA

世界のジェンダー平等を、日本から変えるために。JICAは、“いま”を超えていく。

女性たちが生きやすい社会にするには、どうすればいい?ジェンダーの公平と平等を目指す組織「内外両面」の取り組みを、3人の女性役職員が語ります。

3月8日は国際女性デー。国連が発表した今年のテーマは「持続可能な明日に向けて、ジェンダー平等をいま」です。

ジェンダー平等の“いま”とは ──?

日本の“いま”にも課題は山積ですが、世界の“いま”に目を向けてみると、「ジェンダー平等」という一言では表しきれない、多様な現状があります。そしてその背景には、さまざまな社会課題が絡み合っていることも。

そうした課題解決に対し、国際協力を通して貢献するのが独立行政法人 国際協力機構(以下、JICA)です。

JICAは世界各地、組織内、そして日本国内での取り組みを通して、ジェンダー平等の実現を目指しています。JICAが超えたい“いま”と、思い描く世界の“これから”について、3人の女性役職員に聞きました。

SOTA OHARA
<プロフィール>
井本佐智子さん(写真中央):
1993年JICA入構。2人のお子さんの育休を経て、一家で渡印したインド事務所次長、広報部長などを経て2021年10月、理事就任。

川淵貴代さん(写真左):
1996年JICA入構。2人のお子さんの育休を経て、フィリピン事務所次長(子連れ単身赴任)、2021年4月よりJICA人事部人事課長。

長手英里香さん(写真右):
2021年JICA入構。イタリアで生まれ、日本在住を経験しながら学生時代の多くをヨーロッパで過ごす。JICA中東・欧州部中東第一課に所属し、モロッコを担当。

ジェンダー問題の裏にある、生きづらさのワケ / JICA理事 井本佐智子さん

JICA理事 井本佐智子さん
JICA理事 井本佐智子さん
SOTA OHARA

「もしかしたら結婚するかも」「いつか子どもをほしいと思うかも」「その時、私のキャリアってどうなる?」

就職活動の際、こんなことを考える女性もいるのではないでしょうか。当時、友人たちにそんな話をしたんです。すると、男友達に「女が家庭も仕事も望むなんて、贅沢だ」と言われ、それはそれは衝撃的だったことを覚えています。

その時、「“こうあるべき”からまず自分が自由にならないと、社会は変わらないんじゃないか」と思ったんです。これまでも、今も、多くの女性たちが「女性はこうあるべき」という価値観を押し付けられてきました。そんな社会は、みんなで変えていかなきゃならない。そのためには、自分の意識を変え、そして男性中心の組織の意識を変えるべきだ、と。

そう考えながら目の前の仕事に一生懸命取り組んできた結果、今の私がいます。

世界各地で、ジェンダーを取り巻く状況は大きく異なります。途上国でも、女性が大統領を務める国がある一方、妊娠中に女の子だと分かると、産むことすらできない地域もあります。国際協力の舞台では、絡み合うさまざまな社会課題をひもとき、“隠れた格差”に気づく多角的な視点が求められます。多様な視点がなければ、”隠れた格差“を見過ごしてしまいがち。だからこそ、JICAという組織は多様なのです。

日本の状況はまた異なっていて、たくさんのアンコンシャスバイアス(無意識の思い込み)があります。ジェンダーによる役割を押し付けられるがゆえに、多くの女性が生きづらさと直面しています。それは、男性も同様ではないでしょうか。

SOTA OHARA

以前、ある会議で「父兄」という言葉が出てきたことがありました。ジェンダーバイアスを含む言葉である「父兄」ではなく、「保護者」を使うべきだととっさに声を上げました。このスピード社会では、どんなに些細なことでも違和感に声を上げないと、そのまま議論が進んでしまう。この気づきや意識変化の積み重ねが、数年後に大きな違いを生むと思います。

JICAも確実に変わってきていますが、ある程度の役職になると、まだまだ男性が多いのが現状です。物事を決める時って、同質性が高い構成の方がスムーズなんですよね。だから、「意思決定層は男性が多い」というのは、男性が無意識に同質性を求めている...ということもあると思います。こうしたアンコンシャスバイアスが、一人ひとりのキャリア形成にも影響してしまいます。

誰だって、自分の得意なこと、やりたいことでキャリアを選択したいはず。その選択肢を考える上で、私の経験が参考になればと思います。

自分の意見や気づきを話す。自由にキャリアを選択する。それって当たり前のことなんだ。いろんな働き方があるんだ。

世界各地で活躍するJICA職員の姿が多くの人に気づきを与え、ジェンダー平等を含めたさまざまな面で世界に変化を起こしていけると信じています。

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“遠慮”が作り出す、「ガラスの天井」 / JICA人事課長 川淵貴代さん

JICA人事部人事課長 川淵貴代さん
JICA人事部人事課長 川淵貴代さん
SOTA OHARA

JICAはジェンダー平等を体現しつつある組織です。新卒採用者の男女比率は2007年から現在までほぼ1:1で推移。管理職全体の女性比率は既に20%を超え、2021年7月の管理職登用でも、男女比がほぼ1:1になりました。それくらい、ジェンダーを問わない環境と文化が整ってきているように思います。

ただ、長いキャリア人生の中で、どうしてもギアの上げ下げが必要なタイミングも訪れます。その時の選択肢は多ければ多いほど良いですよね。海外勤務を一時的に避けたい人には勤務地限定制度もありますし、3年取得できる育児休暇の前にはキャリアカウンセリングもおこなっています。そうした「環境づくり」には今後も積極的に取り組んでいきたいです。

世界を見渡すと、性別を理由に均等な機会が与えられない地域が少なくありません。それは途上国に限った話ではなく、ヒラリー・クリントン氏が大統領選に敗れた際に「ガラスの天井」に触れたことは記憶に新しいです。JICAも例外ではないかもしれません。ただし、組織や制度としての障壁ではなく、精神的な「ガラスの天井」だと思っています。

育児や介護に時間を取られることで「成果を挙げられていないのでは」「周りが気を遣うのでは」と、自らの心に“遠慮”という「ガラスの天井」を作ってしまうこともあるのではないでしょうか。

私は、時間的制約で周りのサポートが必要な時には協力を仰ぎ、遠慮よりも感謝を伝えることが大事だと思っています。その結果として、お互いのチャレンジのために支え合い、背中を押し合える組織になっていくこと自体に価値があると信じています。育児や介護という経験によって、業務に多様な視点を持ち込むこともできますよね。

私も約5年の育休のあと、家族・友人・同僚に支えられながら、出張や子連れ駐在を経験してきました。この組織を信じて、心のガラスの天井を破ってほしい。後輩にはそう伝え続けるつもりです。

フィリピン事務所時代の川淵さん(写真中央)。現地職員「ナショナルスタッフ」にも女性が多かったことがうかがえる。
フィリピン事務所時代の川淵さん(写真中央)。現地職員「ナショナルスタッフ」にも女性が多かったことがうかがえる。
川淵さん提供

昨年度は、途上国を中心とした96拠点の現地職員「ナショナルスタッフ」にも、女性の管理職が誕生しました。長年JICAという組織を見てきて、プロジェクトを推進したり、政府高官との交渉を円滑に進めてくれたり、活躍する女性が増えていることをとてもうれしく思います。

日本全体が「性別に関係なく活躍できる社会へ」目線は向いているものの、まだまだ道半ば。JICAが世界でジェンダー平等を体現しつつあること、それをもっと発信していくことで、日本に、そして世界に勇気を届けたいです。

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JICAの発信が、世界をより良い場所に / JICA職員 長手英里香さん

JICA中東・欧州部中東第一課 長手英里香さん
JICA中東・欧州部中東第一課 長手英里香さん
SOTA OHARA

難民キャンプで出会った友達の存在が、私の原動力です。

幼少期からヨーロッパでの生活が長く、人種問題は身近なトピックでした。自分も海外では「移民」の一人であり、クラスメイトの家族が難民だったことも。そうしたバックグラウンドもあり、大学在学中にボランティアでギリシャの難民キャンプを訪れました。

そこで出会った同年代の難民の方々が、困難な状況の中でも「世界は人の力で、もっと良い場所になる」と信じ、希望を持っていることに心を打たれ、「自分も世界のために、何かをしなければ」と使命感を抱きました。

大学時代に訪れた、ギリシャの難民キャンプでの長手さん(写真右)
大学時代に訪れた、ギリシャの難民キャンプでの長手さん(写真右)
長手さん提供

日本の強みと課題を理解し、長い海外生活の中で得た知識と組み合わせることで、世界も、日本もより良い場所にしていけるのではないかと考え、昨年JICAに入構しました。現在担当しているモロッコでは、過去に女子児童の低い就学率が社会課題の一つでしたが、近年は教育環境などが積極的に改善されており、他の国、地域にも生かせるノウハウがあると感じています。

こうして世界を見ていると、国や地域によって、「ジェンダー平等」という言葉の意味する価値観が異なることを実感します。それを意識して、文化や習慣の違いに敬意を払いながら、現地のニーズに寄り添ったサポートを提供するのがJICAの国際協力です。さまざまなバックグラウンドを持った職員による気づきやアイデアが、より良い国際協力を生み出していくのではないでしょうか。

国際協力の現場では、精神的にも体力的にもタフさが求められますが、JICAではたくさんの女性が活躍しています。ライフプランとキャリアを両立させている女性職員を見ていて、とても勇気が湧いてきます。JICAが組織内でジェンダー平等、多様な活躍を実現していくことは、多くの国や地域に希望を与え、世界をより良い場所に変えていくチカラになるのではないでしょうか。

そして、ジェンダー平等を実現するためには、みんなで話し合っていくことが重要です。JICAがそのような「会話」を積極的におこない、周りを巻き込んでいくことで、社会全体でも気軽に話せるようになっていくことを願っています。

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JICAは、組織内から、そして世界の現場から、「内外両面」の取り組みで、ジェンダーの公平と平等を目指しています。

“いま”を超えていくことで、明日は、もっと良い世界になる。

JICAは日本から、そして世界各地から、社会課題解決に向けた取り組みを続けていきます。

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