新型コロナ危機にあえて立ち止まる。「ポスト・コロナ」時代に向け一人一人ができること

パンデミックで苦しみが広がるなか、「東京五輪 延期」の可能性も覚悟をしないといけない。経済を回し続け、家族について考え、地道なアクションを重ねるために。

街が、静かだ。

新型コロナウイルスの感染拡大で、学校は休みになり、テレワークで会社に行かない人も増えた。

イベントは中止になり、スポーツの試合も延期に。夜の飲み会も減っている印象だ。

経済的ダメージは大きい。人とモノの動きが止まれば、経済は悪い方へ、逆回転を始める。

3月16日の日経平均株価は続落し、一時的に1万7千円を割り込んだ。アメリカのニューヨーク株式市場もダウ工業株平均が前週末比約3000ドル安で終え、史上最大の急落。世界経済は失速している。 

日経平均株価は大きく下がっている(写真は3月13日)。
日経平均株価は大きく下がっている(写真は3月13日)。
Athit Perawongmetha / Reuters

帝国データバンクによると、新型コロナの影響で、クルーズ船、旅館、学習塾、観光企業などの倒産が相次ぎ、負債額が12億円を超えた企業もある。

同社が全国1万社以上から回答を得たところ、63%以上の企業が「業績へのマイナス影響」を予測した。

世界保健機関(WHO)が「パンデミック」宣言をした、新型コロナウイルス。亡くなった人も、治療中の人も大勢いる。

いつ終わるかわからない人類にとっての危機。

これからの私たちは、残念ではあるが、「日本経済を元気にする」と期待を寄せていた「東京オリンピック・パラリンピック」の中止や延期という万一のことも考えないといけない。

その分、働き方を改めて、テレワークやビジネスのオンライン化で経済を回しつづける。在宅勤務が増えることで、家族との関係の変化にも対応して行く。

それぞれの会社、団体、そして一人一人ができることは何か。

私たちは否応なしに、「ポスト・コロナ」時代に向けた準備を迫られている。

Test tube with Corona virus name label . REUTERS/Dado Ruvic
Test tube with Corona virus name label . REUTERS/Dado Ruvic
Dado Ruvic / Reuters

 「僕ができることはリモートでも、仕事を続けること」

「コロナの感染という大変な状況のなか、個人としてできる事を考えています…」

在宅勤務中のある大手企業の30代社員に聞くと、そんな答えが返ってきた。

2月下旬、会社の在宅勤務が決まった。その分、スマホのチャットやオンライン会議で仕事を進めている。オンラインツールが苦手な年配の上司の手助けもしているという。

「僕みたいな普通の個人は、手洗いなどの感染防止に加えて、こういう地道なアクションが大事だと思うんです。コロナが終息した後も、安定してビジネスがおこなえるよう、仕事をなんとか続けることが今のゴールでしょうか」

満員電車は、日本のビジネスパーソンにとって「苦しみ」となっている。「時差通勤」でそれを考え直す動きもある。
満員電車は、日本のビジネスパーソンにとって「苦しみ」となっている。「時差通勤」でそれを考え直す動きもある。
Yuya Shino / Reuters

140社のうち5割が在宅勤務

日本経済新聞が国内の主要企業140社近くに聞いたところ、約5割の会社が原則または一部で在宅勤務に切り替えたと答えた。歓送迎会や飲み会などを自粛する会社は8割。

パナソニックやユニ・チャームなど大手企業の在宅勤務の動きが連日ニュースになった。

思い切った対応を取り、経済を回し続けようという意思を感じる。

厚生労働省は、テレワークを新しく導入する中小企業に対する助成金もつくった。

経済が戻らないと弱い人にしわ寄せがいく

クラウドファンディング企業のREADYFORは、感染拡大の影響でイベントを中止した企業やアーティストらがネットで支援金を募れる仕組みを発表した。通常は12%の手数料を5%に引き下げ、損失のダメージを少しでもやわらげる。

コロナ対策は医療面だけでなく、経済活動を止めないことも大事だ。景気が悪くなれば、倒産や解雇が相次ぎ、弱い立場の人にしわ寄せがいく。

だから、コロナが終息した後にビジネスをいち早く通常モードに戻して経済的ダメージを最小限に押さえ、雇用を維持しなければならない。

渋谷の交差点を歩くビジネスパーソンたち
渋谷の交差点を歩くビジネスパーソンたち
d3sign via Getty Images

 イベントのオンライン化。参加者50人の予定が6000倍に

オンラインでマンガを配信したり、家庭教師のレッスンをおこなったりする企業が次々とあらわれた。経済産業省はLINEヘルスケアやMediplatと組んで、オンラインで健康相談ができる窓口を開いた。

様々なビジネスやサービスのオンライン化が進んでいる。もちろん「すぐに大きな収益に繋がりにくい」(ある学習サービス企業の担当者)という声もあるものの、「お試し」で体験した消費者が、コロナ終息後もオンラインサービスを続け、新しい市場の活性化に繋がる可能性がある。

カメラ
カメラ
HuffPost Japan

私たちハフポスト日本版も、大型クルーズ船ダイヤモンド・プリンセス号などで感染者が広がっていた2月22日、あるイベントを予定していた。

醒剤を所持していたなどとして2016年に逮捕された俳優の高知東生さんを招き、薬物依存や社会の偏見について考える催しだ。中止も考えたが、Twitterを使ったオンライン配信の「無観客」イベントに、4日前に急遽変更した。

リアルなイベントとしては50人の参加者を見込んでいたが、オンラインでは30万の視聴があった。単純計算で、6000倍の人数だ。

「薬物依存」ということで、リアルな場ではまだ顔を出しにくい当事者の関係者や東京の会場まで足を運べなかった方からの熱い感想も届いた。

当初の参加者やゲストの方には大変迷惑をかけたが、場所や顔を合わせることにとらわれない「ネットの良さ」を再発見した。

「就活のオンライン化」で日本型採用は変わるのか 

新型コロナは採用にも影響を与えている。USEN-NEXT HOLDINGSは、グループでの新卒採用で、会社説明会から最終面接までのすべての選考プロセスをオンラインで行うことを決めた。

「就活生の健康」を第一に考えてのことだが、わざわざ何度も学生に会社まで足を運ばせるような、画一的な日本企業の「面接のあり方」への問題提起にもなっていると感じた。

子育てと仕事の両立は常に難しい。
子育てと仕事の両立は常に難しい。
d3sign via Getty Images

 在宅勤務で「夫婦の家事時間」を考える

新型コロナを機に、家族のあり方を考え直している人もいる。

夫婦で企業広報支援の会社「シプード」を経営する舩木真由美さん。これまでも夫は家事をよくする方だったが、在宅勤務が増えてさらに動くように。

「家事は私が6割、夫が4割だったが、いまは完全に逆転した。夫が6割やります。娘も学校が休みなので、家族のチーム感が増して、みんなの力で、家のことも仕事も、勉強のことも回している」という。

 フリーランスのエディター/ライターの宮本恵理子さんは、休校中の8歳の息子が楽しんで家事をやるように「お風呂掃除」や「床をふく」などの「カード」を選んでもらうゲームを考えた。

「日本の男性が家事に費やす時間が国際比較で圧倒的に少ないのは、家事教育が影響しているはず。息子には、家事力の高い大人に育ってほしい」と宮本さん。

フリーランスのライター/エディターの宮本恵理子さんが、小学校2年生の息子用に考えた「かじ(家事)とりゲーム」のカード
フリーランスのライター/エディターの宮本恵理子さんが、小学校2年生の息子用に考えた「かじ(家事)とりゲーム」のカード
Eriko Miyamoto

通勤・通学時間が往復1時間半以上かかっているとされる日本。 これまでの日本人夫婦の1日の家事の平均時間(平日)をみると、妻が263分なのに対して、夫はたった37分。

女性が「仕事も、家事も」やっているというのが現実だった。それが変わるか。

CHARLY TRIBALLEAU via Getty Images

オリンピックが延期になったとしても

私がここまで書いたいくつかのエピソードは極小の「スケッチ」に過ぎない。

マクロの数字で見れば、日本社会や経済にとってのダメージは大きい。世界的に亡くなる人が増え続けていて、いつ終わるか分からない不安が覆っている。

しかし、在宅勤務やオンライン経済の活性化など、地味だけど、一人一人が起こしているこうしたアクションは今後の日本社会を考えるうえで、とても重要なポイントになるとも、感じている。

それは、「1年延期がいいのではないか」(アメリカのトランプ大統領)という声も出てきた「東京オリンピック」のような大きなインパクトはないかもしれないがーー

経営共創基盤CEOの冨山和彦さんは、NewsPicksでのインタビューで、オリンピックは「見方を変えれば、五輪は、たかだか2週間のスポーツイベントにすぎない」と語り、「(インフラが整備され、日本が成長するきっかけとなった1964年の東京五輪のように)多くの人の人生がかわることはないと思う」とした。

経済を回し続け、弱い立場の人を支援し、さらに個人個人が自分のライフスタイルを見つめ直して、なんとか対応する。健康管理をしっかりすると同時に、できることを地道にやって行く。生命に関わる方への医療支援に加えて、こうしたことが求められているのではないか。

カミュの小説「ペスト」
カミュの小説「ペスト」
HuffPost Japan

「ずっと前から、とっくにペストに苦しんでいた」 

フランスの作家アルベール カミュが1947年に発表した小説「ペスト」が再び売れている。伝染病で封鎖された街の物語と、新型コロナを重ね合わせて読む人も多い。

小説の中で、謎めいた青年タルーはこう言う。

「僕はこの町や今度の疫病に出くわす、ずっと前から、すでにペストに苦しめられていたんだ」

現代社会は、人とモノが急速に移動し、遠くの国で起きた出来事がSNSで瞬時に広がる。中国で広がった新型コロナが世界各地に影響を与え、Twitterで人がパニックになる。

それは、ウイルスの怖さだけでなく、「グローバル化とデジタル化の不気味さ」をも、私たちに突きつけている。

新型コロナが来る前から、私たちは”コロナ時代”を生きていたのかもしれない。

オリンピックによって、「日本は元気になる」という声がここ1-2年はよく聞かれた。しかし今大事なのは、そうした大きなイベントに期待するのではなく、コロナを乗り切り、終息した後の「ポスト・コロナ」時代を生き抜くための準備だ。

小説「ペスト」にはもう一つ、印象的なセリフがある。それは悲劇を巻き起こした疫病と戦い続ける医師リウーのものだ。

「こんな考え方はあるいは笑われるかもしれませんが、しかしペストと戦う唯一の方法は、誠実さということです」

″新型コロナウイルスで日本経済はどう変わる?”

ハフポスト日本版とTwitterが毎週火曜の夜9時から生配信している就活応援番組「ハフライブ」では、「ポスト・コロナ」時代の経済や働き方について議論します。番組は3月17日(火)夜9時から。こちらのURLからご覧いただけます→https://twitter.com/i/broadcasts/1lPKqVWpvVWGb

ハフライブ緊急特番
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Maya nakata

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