2021年10月11日 12時00分 JST | 更新 2021年10月11日 12時00分 JST

「新品でなくてもいい」。当たり前のように見えて実は深かった、メルカリの「サステナビリティ戦略」が描く未来

リユースを通じてサステナブルな社会の実現を本気で目指すメルカリ。その施策は、人と社会、企業をつないで好転させる深い戦略だった。

メルカリ提供

国内最大手のフリマアプリのメルカリは月間の利用者数が約2,000万人(2021年9月単月数字)。2013年の創業以来、国内最大の利用者数、累計出品数20億品以上など好調な業績を誇る。メルカリは今、積極的なサステナブル施策を講じている。掲げるのは、循環型社会を叶えるための大きなビジョンと実現するための細やかなプロジェクト。背景をキーマンであるメルカリの原 央介さんに聞いた。

コロナで加速する、サステナブルな社会への変化

━━生活者の消費行動は変わったと感じますか? それはどんなことですか?

原 央介さん(以下、原) はい、コロナ禍で人と会う機会は格段に減り、個人的にはECが浸透した印象です。なかでも家の空間とステイホーム時間の使い方が大きく変わったことが「メルカリ」内の消費行動からわかります。「普段の生活をより良くしたい」という気持ちから、ルームウエアは昨年比約7倍、植物は約6倍の売上増。エンタメ系やリモートワーク関連のアイテムも伸び、PCやタブレットは昨年比約7倍です。

━━積極的にサステナビリティ施策を打ち出していますが、理由は?

原 メルカリは「自分にとって不要な物を必要とする人へ届ける」循環型サービスで、ミッションに「新たな価値を生みだす、世界的なマーケットプレイスを創る 」を掲げています。新興国では物が不足している一方、先進国で多くの物が作られ捨てられる。限りある資源を有効活用して物を循環させるために「メルカリ」は生まれました。サステナビリティを打ちすのはメルカリの核となる価値感、創業した理由からも必然かと思います。

Photo Sachiko Horasawa
原 央介(はら・おうすけ)さん:メルカリでマーケティングとブランディングのディレクションを行う。前職の金融機関時代から社会課題解決に強い関心があり、プロジェクトを立ち上げる。メルカリ入社後も社会課題をマーケティングで解決することに強いwillを持ち、循環型社会の実現に尽力中。

メルカリの月間約2,000万人の利用者は社会的にも大きな数字。また、ポストコロナでは「社会と人がどうつながるのか」に焦点が当たると考えています。それが利用者の消費行動の変化にも出ているのでは。多くの人が持続可能な社会に目を向けるなか、メルカリがそれを意識し、中長期で取り組むことはお客さまや投資家にしっかり知っていただき、理解を得るためにも必要です。

「新品ではなくてもいい」が、個人や他企業に与えるケミストリー

━━メルカリが循環型社会実現に向けて担う役割は?

 小さな頃から「物を大切に」とよく言われますが、まずあるべきは「不要な物は買わない」「持っている物を長く使う」「壊れたら修理する」こと。もし不要なら選択肢は「リユースにだす」「他人と共同利用する」。例えば布をカバンにするなどの「別の物に活用する=アップサイクル」もあります。最終的には廃棄となりますが、過程には様々な選択肢があり、選ぶのはあくまでも生活者です。メルカリは「リユース」を促進するマーケットプレイスで、選択肢を提供することで“循環型サイクルの気づき”を生活者に持っていただければと考えています。結果として、メルカリの価値を世間に伝えることにもつながります。

Photo Sachiko Horasawa

━━メルカリを利用することで、生活者の意識や社会が変化することを期待している印象です。

原 ただ単に「メルカリのサービスを使ってください」では情緒性がなく、単なる「場所」に過ぎません。リユースを通じて「自分の大切に使っていた物に価値を見出した人につなぐ」「使っていた人の想いを感じる」のも重要なコミュニケーションです。システムを整えることは重要ですが、“ストーリーをのせた想い”を提供することも大切な役割。

リユースを進めることは「新品ではなくてもいい」という選択肢を提供すること。メルカリを通じて、お客さまがサステナビリティを自分ゴト化してくれたら嬉しいですね。利用者が循環型社会の実現に共感し物を共有する、物を作るメーカーや小売企業も共感し「壊れにくくて長く使える物」を作ったり販売する。二次流通から新たな価値を生みだす活動が広がると、メルカリの企業活動もさらに意味あるものになります。

Photo Sachiko Horasawa

メルカリで自分にとって不要な物を売る=物を共有する、二次流通市場が形成されつつあると思うんです。生活者の意識も「ゴミになる物は買わない」「他人の価値にもなりそうな物を買う」ことに。するとメーカーも「長く使える物を作る」「リペアしたり、形を変えて使える物を作る」となり、新たな価値や可能性が広がります。これはメルカリだけではできないことです。生活者やメーカー、小売企業と共創することで生活意識や社会が変わり、メルカリがその一端を担えたらいいですね。

「捨てない大掃除」に「メルカリ先生からの挑戦状」。次世代への取り組みを含むサステナビリティ戦略

━━サステナビリティ施策の具体例を教えてください。

 物を大切に長く使う、地球環境に優しい持続可能な消費を啓発する「グリーンフライデープロジェクト」があります。その一環で、お客さまのタンスに眠っている洋服とメルカリでの購入品をコーディネートして披露する、新作ゼロの「サステナブルファッションショー」を開催しました。メルカリの調査で試算したところ、日本の家に眠る不要品約7.2兆円です。身近な衣類で「服を新たな形で着られる」「大量にあるのに新しく物を作り、購入している」気づきを提供できたのは、循環型社会参加への入り口としてわかりやすかったですね。

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2020年11月26日に行われた新作ゼロの「サステナブルファッションショー」。ショー応募者の家で眠っている洋服とメルカリで購入した服を、スタイリストがコーディネート。ランウェイで披露した。

また、「捨てない大掃除」という取り組みも実施しました。日本では年末、大掃除を行う習慣がありますが、大掃除ででた不要品をメルカリやブックオフで譲ることを訴求しました。大掃除に「物を捨てることが大前提じゃないよね」という視点の転換を提供できたのは大きな意義があったと感じています。

衣類や大掃除といった身近なテーマ以外にも、子どもたちに循環型社会を知ってもらう取り組みも行っています。「メルカリ先生からの挑戦状」というイベントでは、トイレットペーパーの芯やニンジンの葉などを例に「自分の家ではいらない物。でも、どういう人なら欲しいと思うか」を考えてもらいました。子どもの豊かな創造性がサステナブルな社会につながるーー未来につながる行動のきっかけになればと期待しています。

必要な物を作ることは、いわば価値創造です。アーティストユニットのmagmaとは「アップサイクルプロジェクト」で、メルカリオフィスのエントランス用オブジェを制作いただきました。不要品がアートという再現不可能なオンリーワンアイテムになるのは、素晴らしい創造です。メルカリはリユースを通じて市場や価値創造を目指していますが、このプロジェクトとも相通じるものがありました。アップサイクルはメルカリの取引に関わらず、循環型社会を実現するためには必要なアプローチの一つです。

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メルカリに出品された物を使い、「座れるアート」をmagmaが制作。もともとmagmaはクリエイションに必要な資材をメルカリで探していたという。

サステナブルな社会の実現には「生活者のメリット」が不可欠

━━現在、進めている施策や将来的な目標は?

 生活者がメルカリを利用する上で最も大きな課題は「出品の手間」です。これはメルカリ単独で解決するには限界があります。例えば、ミスターミニットと協業し、「メルカリ リペアby ミスターミニット」を東京都内に6店舗オープンしました。メルカリ購入品や出品予定アイテムのリペアやクリーニング、出品のやり方のレクチャーする実店舗実験を開始しています。また、成約した出品物を店員と対面することなく投函できる「メルカリポスト」は、コンビニやクリーニング店を拠点に国内に800カ所以上設置しました。

環境負荷への取り組みも進行中です。メルカリのサービスで最も負荷が高いのは物流。梱包材をリユースできるものや梱包レスへ変え、将来的には最小化するのが大テーマです。配送時のCO2削減も重要課題ですね。お客さまがメリットを感じられるような仕組みにし、納得して使ってもらう。循環型社会を実現するうえで非常に重要な要素だと考えています。

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数百回のリユースを想定した梱包材「メルカリエコパック」。素材は耐久性の高い、テント等で使用されるターポリンだ。

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単なる取引の場に留まらない、生活者や物の作り手の想いものせた施策を次々に放つメルカリ。有機的なサステナブル企業として、生活者意識や流通を変えながら今後も快進撃が続きそうだ。