初めて「同性カップル」とカミングアウトして引っ越ししてみた

「ふつう」に対応されることの嬉しさを感じつつ、「引っかかりポイント」もいくつかあったので、この経験を備忘録として残したいと思います。
via Flickr (CC0 1.0)

引っ越しをしました。今回、不動産屋で初めて同性カップルであることを伝えた上で家を探しました。

引っ越そうと思いパートナーと不動産会社へ。若めな男性スタッフに「ご友人ですか?」と聞かれて、はじめて「パートナーです」と答えてみた。驚かず「そうですか!」とだけ言われてあとは通常対応。「ベッド1つなら1LDKも良いですね」とか"ふつう"に対応されるのが結構嬉しいものだなと感じたり。→

— 松岡宗嗣 (@ssimtok) September 23, 2019

 「ふつう」に対応されることの嬉しさを感じつつ、「引っかかりポイント」もいくつかあったので、この経験を備忘録として残したいと思います。

カミングアウトできなかった2年前の引っ越し

パートナーと一緒に住み始めたのは2年前。私の大学卒業をきっかけに「二人で住んだ方が家賃も半分になるし」ということで一緒に住むことにしました。

その時もカミングアウトすべきか悩んだのですが、不動産屋の受付で「お二人のご関係は?あ、もちろんソッチ系じゃないと思うんですけど」と笑われ即座に断念。別の不動産屋でも、男性同士のルームシェアを数件断られました。

なんとか見つかった家を契約しましたが、続柄には「友人」と記入。
2DKで完全に部屋が別れているタイプの物件だったのですが、担当者に「女の子連れ込みたい放題ですね」と言われて苦笑いしたのを覚えています。

とはいえミッションは「家を借りること」なので、目的は達成。契約更新までの2年間、まずまずな暮らしができたと思っています。 

パートナーと家探しで不動産行った時は「ソッチ系じゃないですよねw」と言われたけど、目的は家を借りることだから結局カミングアウトせず友人どうしということに。住み始めてそろそろ5ヶ月。やっぱり一緒に居られる安心感が全然違う。けどここまでオープンにしていてもなかなか外で手は繋げないなあ。

— 松岡宗嗣 (@ssimtok) May 22, 2018


はじめてのカミングアウト

今回引っ越したのには大きな理由があるわけではなく、家の日当たりが悪かったり、通信電波が入りにくかったり、駅前のお店の種類がもうすこし多いといいなという理由で、もうすぐ更新月ということもあり引っ越すことにしました。

SUUMOで目ぼしい物件を探して、パートナーと二人で不動産会社を訪問。対応してくれたのは若い男性の担当者でした。

受付表を記入して、さっそく「お二人のご関係は?」と聞かれたので、はじめて「パートナーです」と伝えました。

隣に座っていたパートナーは(おそらく無意識に)かぶっていた帽子を深くかぶり直していました。私も軽く握っていた拳に少し力が入り、心拍数もあがった気がします。

担当者の発した言葉は「そうですか。」ただそれだけでした。

あとは、「他に良いなと思った物件があったか」とか、「駅から徒歩何分が良いか、他に条件はあるか」など。

2年前は、2DKしか想定できなかったのですが(理由は、“友人どうしのルームシェア”なのにベッドが一つだとおかしいだろうと思ったから。)今回は、ベッドが一つであることを伝えると「じゃあ1LDKも良いですね」と通常対応。“ふつう”に対応されるのが結構嬉しいものだなと感じました。

担当の方に後から聞いてみた所、以前30代の同性カップルの家探しを対応したことがあるそう。自治体の「パートナーシップ制度」が導入されてから数年が経過しています。社会は少しずつ変わってきているのかな。

全てスムーズに行くわけではない

男性二人の場合は大屋さんからNGが出る可能性があると言われ、「一つずつ確認していきましょう」と。第1希望の物件はやはり断られました。

ちなみに担当者の方によると男性二人が断られてしまう理由は「友人を呼んだりうるさい・近所迷惑・汚い」だそう。

一見しょうがないと思うかもしれませんが、しかし、2017年のリクルート住まいカンパニーの調査によると、不動産オーナーの約46%がゲイカップルに対して「入居許可をためらう/他の希望者をなるべく優先する」や「入居してほしくない」と回答しており、残念ながら「うるさい・近所迷惑」などの理由ではない部分による差別的な取り扱いが起きてしまっている現状があります。

私はパートナーシップ制度を導入している自治体に住んでいますが、「パートナーシップ制度を利用した方が良いですか」と担当の方に聞いても、「わからない」という回答でした。

結局、今回は書類上は「男性二人のルームシェア」ということで申請。第2希望の家を内見し、無事契約することができました。

まとめ:相談できる幅が広がった

いざ引っ越し。前の賃貸の解約、水道・電気・ガス、インターネットの契約、いらない家具の処分など、引っ越しって大変ですよね。

ダブルベッドしかない家に男性二人で住んでいるので、引っ越し業者が見積もりに来る際に、どんな反応されるのかと少しどぎまぎしたシーンがありましたが、無事引っ越しも終えました。

まとめとしては、2年前の家探しよりも、カミングアウトして探した今回の方が明らかに精神的に楽で、担当者に相談できる幅も広がりました。

しかし、実際に第1希望の家は断られるなど、男性の二人暮らしという属性が断られやすいという課題はあります。

今回はたまたま同性カップルを対応したことがある担当者ということで、カミングアウトしてもスムーズに行きましたが、他の担当者だったらどうだったか。必ずしも全ての不動産担当者へのカミングアウトがスムーズに行くわけではないでしょう。

引っ越し業者の見積もりや、当日の業者の対応など、カミングアウトしていない他人と対面する際に家の中を見られるというのは(例えばダブルベッドが一つだけなど)否が応でも私たちの関係性を察せられる状況が生じます。

この辺りも含め、そもそも心理的なハードルが低い、安心して利用できる不動産会社や引っ越し業者が可視化、増えていくと良いなと思いました。

この記事は2019年10月31日note掲載記事