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2019年03月22日 11時49分 JST | 更新 2019年03月22日 11時59分 JST

夫婦別姓は実現する?いよいよ判決、弁護士は「裁判所内にも、別姓を求める声がある」と期待

「国会議員が認めないから困っていて、戸籍法上の氏を認めるいい案が出てきたと思っているのではないか」

選択的夫婦別姓の実現を求めた訴訟が、3月25日に東京地裁で判決を迎える。夫婦別姓を選べない現在の戸籍法は、法の下の平等に反するとして、「サイボウズ」社長の青野慶久氏らが国を訴えた裁判だ。

最高裁が、夫婦同姓を求める民法750条を「合憲」と判断してから3年3カ月。今回は切り口を変えて臨み、夫婦別姓を求める社会の機運も高まっている。

裁判の争点や、夫婦別姓訴訟で実現されることは、何なのか。判決を前に、訴訟を担当する作花知志弁護士への取材などからおさらいしていく。

時事通信社

民法上の氏、戸籍上の氏

氏には「民法上の氏」と「戸籍法上の氏」の2つがある。

日本人同士で結婚すると、夫か妻のどちらかの氏(姓)を選ばなければならないと、民法750条が定めている。また、配偶者の氏を選択した人は、離婚した場合に旧姓に戻る。(民法767条1項) 

このように、民法の規定により、結婚・離婚などの身分変更に伴って変動するのが「民法上の氏」だ。

ただし、長年配偶者の氏を名乗ってきたのに、離婚後は旧姓しか使えないと、日常生活や仕事上で不都合が生じる。

そこで、届け出れば、戸籍上は婚姻時の氏を名乗ることができる。(民法767条2項、戸籍法77条の2、107条1項)

つまり、「民法上の氏」は旧姓に戻るが、「戸籍上、別の氏を名乗っていい」というルールが設けられている。

これが、「戸籍上の氏」だ。

外国人との結婚の場合は、民法750条が適用されないため、民法上の氏は変わらないが、届け出れば、戸籍上は外国人配偶者の氏を名乗ることができる(戸籍法107条1項、2項)。

離婚した場合も、戸籍上の氏をそのまま使い続けるか、再度届け出をして、戸籍上の氏を旧姓に戻すこともできる(戸籍法107条1項、3項)

①日本人同士の結婚

②日本人同士の離婚

③日本人と外国人の結婚

④日本人と外国人の離婚

4つのケースの状況を表にすると、こうなる。

作花弁護士提供

「日本人同士の結婚も、本来なら戸籍上の氏を選択できるルールがあるべきだ」「必要なルールがないのは、憲法に違反するのではないか」という主張だ。

求めることは?

原告側は、いまの戸籍法に次の条文を加える改正案を提案している。

「婚姻により氏を変えた者で婚姻の前に称していた氏を称しようとする者は、婚姻の年月日を届け出に記載して、その旨を届け出なければならない」

日本人同士の結婚でも、届け出をすれば、戸籍上も旧姓を名乗ることができるようにする、ということだ。

夫婦別姓を求めた2015年の別の訴訟では、夫婦別姓を認めない民法750条が合憲・違憲かが争われたが、作花弁護士の訴訟では民法を変えることは求めていない。

「戸籍法上の別姓を認めることは、一つの条文を加えるだけですみます。ルール変更も簡単です」 

「私の解釈では、民法750条を変えるとなると、選択的別姓するのか、子供の姓はどうするのか、国会で新たに決めなくてはなりません。実現した場合も、婚姻届を出す時に、民法上の同姓・別姓するのかを夫婦間で決めなければならなくなる。一方が別姓の結婚をしたくても、もう片方が反対したらできない、ということが起こってしまいます」

DrAfter123 via Getty Images

何が変わる?

結婚時に別姓を選択できないことで、さまざまな不都合が起きている。作花弁護士や訴状は、次のような例をあげている。 

・銀行口座やクレジットカード、パスポート、運転免許証などの名義を結婚後の氏に変える余儀なくされ、手続きに膨大な時間と労力がかかる

・長年親しんだ名前を変更を余儀なくされ、アイデンティティの喪失感がある

・研究者や教授が結婚して氏が変わった場合、旧姓で書いていた過去の論文が検索が困難になる

・こうした状況を懸念する人たちにとって、結婚の妨げとなっている

原告のひとりで、妻の氏に変えた「サイボウズ」の青野社長は、創業者として保有していた株の改姓手続きの手数料に81万円かかったほか、さまざまな契約書類や公式文書で、結婚後の氏か旧姓かを使い分ける手間を強いられている。

別の原告カップルは、お互い結婚の意思があったが、別姓を選べないため入籍を見送った。事実婚をしているが、結婚を選べないことで、結婚が与える法的・社会的な権利が得られず、不利益を被っている。 

選択的夫婦別姓が実現することで、こうした不都合は解消される。別姓を選びたい人は戸籍上の届け出をし、今まで通り同じ氏を選ぶこともできる。

 作花弁護士は言う。

「戸籍法は、夫婦の制度ではなく個人の氏の不都合をケアするものです。(不都合を)救済する制度ができたら、結婚した後、配偶者の同意なく、個人が自由に氏を選択することができます」 

夫婦別姓への反対意見として、子供が困るというものがたびたび上がる。だが、結婚後の「戸籍法上の氏」の変更だけが可能になれば、ファミリーネームは結婚時に選択する「民法上の氏」となる。

 「民法上のファミリーネームはひとつですし、家族が氏で分断されることもない。戸籍法上は、通称を使い続ける。今でも、実際にたくさんの人が通称を使っていても社会は混乱していないので、問題ないのではないでしょうか」

Huffpost Japan

国の反論は? 

国側は、争う姿勢を見せている。作花弁護士によると、国の反論は次の通りだ。 

「国は『民法を変えずに戸籍法を変えるのは許さない』という立場です。『戸籍法の改正のみで選択的夫婦別氏を実現させる規定を設けるのは、法体系を無視している。戸籍法上の氏を設けるためには、民法に根拠規定が必要だ』と訴えています」

国側は準備書面の中で、原告側が比べた①(日本人同士の結婚)と、他の②(日本人同士の離婚)③(日本人と外国人の結婚)④(日本人と外国人の離婚)とでは、「民法750条が適用されているかいないか、決定的な違いがある」と指摘。

にもかかわらず、「前提条件の異なる4つの場面を同列に論じた上で、旧姓使用を認める規定が戸籍法上に設けられていないのが差別だとする主張はおかしい」と反論している。 

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「裁判所内にも、別姓を求める声がある」

2015年の夫婦別姓訴訟の判決では、憲法24条2項は人権だけでなく、単なる人の利益についても尊重するよう求めている。結婚・家族に関する規定や法律を作る上で、そうした利益も考慮されるべきだと指摘している。

作花弁護士は、この点が「まさに、日本人同士の結婚で起きる不利益をケアすべきだと言っている」と述べ、今回の訴訟の主張の正当性を強調する。

2015年の判決後、通達により国の行政機関や最高裁でも、旧姓で行政文書を書くこと認めるようになったという。

「通達を踏まえると、裁判所内にも、別姓を求める声がある。国会議員が認めないから困っていて、戸籍法上の氏を認めるいい案が出てきたと思っているのではないか」と、期待をにじませる。

結婚の時、夫が妻かどちらかの氏を選択できるが、96%が夫の氏を選択し、女性にとって差別的な状況を許している。

「明治憲法時代の家制度の意識が、今の民法や日本の社会に残っている。それを払拭しようとした日本国憲法での家族法改正は、形式的平等には配慮たが、実質的平等への配慮が乏しかった」

近年、同性婚を求める訴訟が起こされるなど、夫婦や家族をめぐる状況に変化が起きている。こうした現状を踏まえて、「日本の国際・人権水準を高める立法を行う立法府であってほしい」と、作花弁護士は願っている。