「バンライフって、どうしたらできるの?」 そんな人のための私流・バンライフの始め方

「とりあえず一歩踏み出すこと」が何よりも大切なのかも。
菅原恵利さん
菅原恵利さん
筆者提供

最初のステップは本当に簡単

「バンライフって何から始めたらいいの?」

私の担当編集者である榊原さんに聞かれて、キョトンとしてしまった。「車に生活用品積んで出かけるだけだから、簡単なことだよ?」と思ったから、「iPhoneってどうやって使うの?」と同じような質問に聞こえた。

でも確かに、私のバンライフの日数が増えるにつれて「もっとこういう車中泊グッズが欲しい」「寒い冬でも車中泊したいから対策しよう」と思うようになり、自分の中でノウハウが蓄積されていっている。だから、バンライフをやったことのない人からしてみれば、そりゃあ「どうやってやるの?」と疑問になってもおかしくないよね、ということに気づいた。

でも、バンライフを始めるための最初のステップは本当に簡単。とりあえずやってみないことには始まらないし、実際に体験した後じゃないと自分がどんなバンライフをしたいか具体的には見えてこないけれど、誰もが最初にやるべきことを、今回私なりにまとめてみようと思う。本当に簡単なので、この記事が本当にいるのかどうかすら、躊躇してしまうくらいだ…。

バンライフという言葉を知らずに、バンライフをしていた

そもそも私が“バンライフ“という言葉を知ったのは、1年半前にとあるライターさんからの取材依頼がキッカケだった。

「あなたのバンライフについて、取材させてもらえませんか?」

バンライフ?

私たちの暮らし方って、バンライフって言うんだ、とその時初めて知った。

バンライフについて、改めて説明すると「車をただ移動手段として使うだけではなく、最低限の生活用品、快適に眠るための寝具を積んで、レジャーやワーケーションに出かけるアウトドアのスタイル」のこと。

日本ではまだまだ浸透しておらず、「バンライフって何なの?」と聞かれるので、私たちの暮らし方を誰かに話す時には、まだ説明が必要になる。

実はアメリカやヨーロッパではバンライフ人口は多く、インスタグラムで「#vanlife」と検索すると800万件(2020年9月時点)を越える投稿が並んでいる。自慢の車に、車中仕様になった内装。車の後ろには、絶景が広がっている。そんなおしゃれな投稿に憧れて、日本でもバンライフを始める若者が少しずつ増えている。

PhotoBus Japan

人と車の数だけ、スタイルはある

もともと私は夫と二人で企業のホームページ制作の仕事の仕事をしていたため、時には地方出張もあった。そんな時は、新幹線を利用せずに「道中も楽しみたいね!」ということで、ゆっくりと車中泊しながら出張先に向かっていたのがはじまりだ。

そんな自分たちのライフスタイルに名前があるなんて当時は思ってもおらず、ただ楽しくて、たまたま価値観にフィットした形が“バンライフ”と呼ばれるものだったのだ。

私たちの車=家は、バンライフの語源でもあり、よく使われているハイエースやキャラバンなどのバンではなく、軽自動車ハスラーだったので、「そもそも私たちは“バン“ではないのですが…」と思ったけれど、どうやら“バンライフ”では、車種にはこれといった定義はないらしい。広く言えば、車とライフスタイルを掛け合わせたもの。人と車の数だけ、バンライフのスタイルは無数にあるのだ。

ADHDの人は注意散漫だから運転すべきではない?

話を最初の「バンライフって何から始めればいいの?」に戻そう。

まずバンライフには、車が必要だ。そもそも車を動かすには、免許が必要だ。ということで、運転免許を持ってない人は取得するところから始まるし、運転に自信がない人はもう一度教習所に行ってペーパードライバー講習を受けるところから始まる。それでも自分で運転するのは不安だという人は、代わりに運転してくれるバンライフのパートナーがいれば大丈夫。

以前のブログに書いた通り、私はADHDという特性を持っていて、その記事を読んだ人たちから「ADHDの人は注意散漫だから運転すべきではない」という声をたくさんいただいた。

私はバンライフをする以前から、18歳で普通免許を取得し、それから頻繁に車を運転している。東京で一人暮らしをして自分の車がなかった時期は、よくレンタカーを借りて温泉旅行などに行っていた。そしてバンライフを始めてからは、ほぼ毎日運転している。まもなく34歳になるけれど、幸い、一度も事故を起こしたことはない。ゴールド免許だ。私の運転で同乗した友達は「安全運転だね」と安心してくれる。

ADHDの人は、自分の好きなことや興味があることに関しては、圧倒的な集中力を発揮することがあるらしい。私の場合は、車の運転というところで集中力が発揮されているのかもしれない。かと言って油断せずに、これからも細心の注意を払って安全運転を続けたい。運転は油断や過信が大敵だと思う。

初心者が車を選ぶポイントは?

運転できる準備が整ったら、次は車。

自分の車でもいいし、自分の車を持つのはハードルが高いと思ったら、まずレンタルするのもいいと思う。

といっても、最初はどんな車を選んだらいいかわからないという人もいるだろう。まず初心者の人は、

・フルフラットになるか

・車内の広さにストレスを感じないか

をポイントに選ぶといいだろう。

ベンツのトランスポーター、フォルクスワーゲンのヴァナゴン、ワーゲンバスなどの見た目のデザインにこだわった外車も人気がある。その代わり燃費や修理代は高額になるので、あまり移動をしない滞在型のバンライフに向いていると私は思う。

遠方まで車中泊の旅に出たり、日本一周をするなど、移動が多い場合はなるべく燃費が良い車をおすすめしたい。

バンライフで車中泊をするうえで、一番大事なのは快適な睡眠だ。ちゃんと無理なく寝られる寝床を作らないと、エコノミー症候群になる可能性がある。だから寝る体勢の確保がポイント。

私たち夫婦が乗っている軽自動車ハスラーのように、もともと車中泊向きに作られている車であれば、特別なDIYをする必要はない。スズキの正規アクセサリーでフルフラットにするためのシートや、目隠しのカーテンが販売されている。私の場合は、そういったグッズは自作した。

車がフルフラットになったら、その上に車中泊専用のマットやシュラフを引いて寝てもいいし、私の場合はニトリで買った家庭用のマットレスとシーツをそのまま積んでいる。車中泊専用のマットやシュラフ(Amazonや楽天などのネットショップや、キャンプグッズを販売するメーカーやアウトドア専門店で売っている)はいろいろ試してみた中で、普段使っているような布団は荷物としてかさばってしまうけど、寝心地は一番しっくりきた。

自分でDIYした車の中でも、強度もデザインもしっかりしている車でバンライフしている人に聞くと、だいたい知り合いの大工さんなど、プロにアドバイスをもらいながら内装を作ったという人が多い。

運転中に内装が壊れてしまったりしたら危険も伴う。もし私がDIYで車の内装を作るとしたら、必ずプロに監修してもらおうと思っている。

自分のスタイルに合った車を

今ではそういった、バンライフ向けの車・キャンピングカーをレンタルできるところも増えている。

私が今乗っている車はハスラーで、細い道や山道でも幅や坂道を気にする事なく走れるし、どんな場所でも高さ制限を気にすることなく駐車できる。だから普段使いはもちろん、オートキャンプ場でテントを設営できる場所でテント泊するにはちょうど良い。夫婦二人と、愛犬も家族としてお迎えしたので、最近は大きいキャンピングカーをレンタルして車中泊する機会も増えている。

先日は、旅する車というサイトでバンライフ仕様にしたマイクロバス、通称・バスコンをレンタルして、山中湖まで行ってきた。他にも軽キャン(軽自動車ベース)から、バンコン(バンベース)、キャブコン(トラックベース)などがレンタルできる。来月はキャブコンを借りて、また旅に出る予定だ。

今は私自身、バンライフ用に大きな車が欲しいと思っているところだけど、決して安い買い物ではないから、いろんなタイプのキャンピングカーに乗ってみて、最終的に自分がやってみたいバンライフのスタイルに合った車を手に入れたいと思っている。

筆者提供

どんなバンライフを楽しむかは自由

布団以外の生活必需品といえば…、銭湯/温泉に行くためのおふろグッズ、スキンケアやメイク用品、服、靴、調理道具、ランタンくらい。

バンライフするための車と最低限の生活道具が準備できたら、あとはどんな場所に行きたいかを決めるだけ! 場所や旅の目的を決めてから、車を決めるのもよし。

言ってしまえば、バンライフの正しい始め方なんてなくて、とりあえず一歩踏み出すことが何よりも大切なのかもしれない。

睡眠をとるために駐車する車中泊スポットは、道の駅やパーキングエリアなど無料で休憩できる場所もあるけど、私はRVパークなどの有料車中泊スポットや、オートキャンプ場を予約することが多い。

有料スポットを利用するメリットは、誰でも自由に入れる敷地ではないので、無料スポットに比べて防犯面で少し安心ということ。車の出入りも激しくないので、人目を気にせずゆっくり過ごすことができる。

そこを拠点にドライブ観光、ご当地グルメを堪能するのも良し。自然が多い車中泊スポットを選んで、風景を楽しみながらキャンプや車内で調理するのも良し。どんなバンライフを楽しむかは、自分次第。自由なのだ。

車を移動手段としてだけ利用するのではなく、バンライフを楽しむ人は「まるで秘密基地のようだ」と口々に話している。

自分の工夫次第で、快適な居住空間にも、オフィスにも変化する。

場所にとらわれずに働き、暮らせる時代だからこそ、バンライフは一つのライフスタイルとして確立されていくだろう。

(編集:榊原すずみ

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