アートとカルチャー
2019年09月24日 12時00分 JST

「シティーハンターのすべてが詰まっていた」神谷明さんと伊倉一恵さんが語る新作実写版と2人の歴史

フランス実写版「シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」が11月29日に公開される。アニメ版で主人公・冴羽獠と、相方・槇村香を演じていたお二人に、実写版で吹き替えを担当する山寺宏一さん、沢城みゆきさんへのエールを聞いた。

Huffpost japan/Jun Tsuboike
シティーハンターの魅力を語る神谷明さん(左)と伊倉一恵さん(右)

1980年代から連載が始まり、30年以上経った今も根強い人気を誇る不朽の名作『シティーハンター』シリーズ。

原作の北条司さんが描いてきた世界観そのままに、新たなストーリーを引っさげてフランスで制作された実写映画が『シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション』だ。

今回、原作の故郷である日本に逆上陸することになった。

(C) AXEL FILMS PRODUCTION - BAF PROD - M6 FILMS
ティーザービジュアル (C) AXEL FILMS PRODUCTION - BAF PROD - M6 FILMS

シティーハンターの主人公・冴羽獠(さえば・りょう)と、史上最高の相方・槇村香(まきむら・かおり)といえば、まず頭に浮かぶのは神谷明さんの独特の声色と、伊倉一恵さんのハスキーで明るいテンポの口調だろう。

しかし、今回は実写映画ということもあり、神谷さんは冴羽獠役のオファーを辞退、獠を山寺宏一さんが、香を沢城みゆきさんが担当するという。

神谷明さんと、伊倉一恵さんはスペシャルゲストとして別の配役で作品に重要な味付けを加えることになった。
 
神谷さんと伊倉さんにとって、シティーハンターとはどんな作品なのか。山寺さんや沢城さんへの期待、そして新作の魅力について話を聞いた。

獠ちゃんは、カッコイイの塊。いつの時代も愛される男

時にハードボイルドに、そしておまぬけでドジもするお調子者。誰よりもカッコよくて、誰もが憧れ、恋をしてしまう男。

それがシティーハンターの冴羽獠だ。

そして、心から信頼し合うパートナーの槇村香。獠ちゃんの女好きも下ネタも、香がきっちり反撃するのがお約束。

どちらが上でも下でもなく、同じ目線で語り合える2人の絆に、うらやましさを覚えたファンは数えきれない。伊倉さんはそんな獠を「カッコイイの塊じゃないですか」と語る。

Huffpost japan/Jun Tuboike
シティーハンターのこれまでについて振り返る伊倉一恵さん(左)と神谷明さん(右)

「カッコイイの塊」の横にいても、香はやきもちを焼かれない。

伊倉さんは「香はハンマーを振り回して色っぽくないんだけど、共感を女性ファンにも得られているんじゃないかな」といたずらっぽくほほ笑んでいた。

 
「この役はやりたい。この役は自分だ」そんな不遜なことを思ったのはこの作品だけ

シティーハンターがアニメ化されたのは、1987年。神谷さんはその頃の思いを次のように語った。

Huffpost japan/Jun Tuboike
アニメ版で主人公・冴羽獠(さえば・りょう)と、相方・槇村香(まきむら・かおり)を演じた神谷明さんと伊倉一恵さん

 (神谷)オーディションをやった時から、『この役はやりたい。この役は自分だ』そんな不遜なことを思ったのはこの作品だけでした。ですから、この役への思いは最初からあった。すべてが揃ってないとできない役。シリアスな部分があったり、優しい部分があったり、ギャグがあったり。ギャグでも色んな種類があって。
 
ある程度、役者として揃ってないとできない作品でした。ちょうど役をいただいたときに、自分ができる年齢になっていたので、それまで先輩たちからたくさんいただいたもの、自分で培ってきたものをすべて注ぎ込める。
絶対やりたいと。あとは、(原作者の)北条さんの作ってくれたシティーハンターという世界、冴羽獠というキャラクターで、もうたくさん遊ばせていただいた。楽しかったですよ。

オーディションの合格を聞いて、床が抜けると思うほど喜んで飛び上がったという伊倉さん。彼女にとって「香」とは、もう自分の半身のような存在になっている。

(伊倉)獠は若い人ではできない。大人の懐の深さがある、人間の大きさがある。でもどちらかというと香は猪突猛進。どんどん行っちゃう。新人だった私を使ってもらったんです。何も分からないけど、やたら声はでかくて。勢いしかないぞ!みたいな。その時の私にはハマった役だったと思います。
 
オーディションを受けたときはものすごい二日酔いで行っちゃって。有名な話なんですが、前の日に本当に飲んじゃったんです。(笑)
「リョーウ!」って大きい声出すと「ウッ……」ってくる。まずいなって思いながら受けた作品だったんです。
でも飲んじゃう理由も、香っぽいっちゃ、香っぽい。久しぶりに同級生何人かと会って、これは飲まずにはいられないでしょ?香なら飲んじゃうって思っちゃった。
なので、体力さえ整っていれば、ふつうにやっていれば香になると、おこがましいですが思いました。そして受かったので、私が演じる運命だったのかなって。

(神谷)「伊倉ちゃん=香」的なところはありますよね。ただ勢いがあるだけじゃなくてかわいいし優しいし、本当に魅力的な役。

(伊倉)褒められると言いにくくなっちゃったな。(笑)

新人だった私にはすごくうれしかったですよ。オーディションに受かったというのは実家で聞いたんです。あまりに暇だったので、信州の実家でスキーをしてました。
天気があまり良くなかったのですぐ家に戻ってきて、そしたら事務所から電話が掛かってきました。「シティーハンター決まりました!」と。
もう、飛んだ飛んだ。どんだけ飛んだかってくらい、廊下を走り回って飛んで喜んで。親に「もう床が抜けるからやめなさい」って言われました。そのくらい大喜びしたんです。

テレビスペシャル版の放送から20年。2019年2月にアニメ映画で復活

シティーハンターシリーズは2019年、1999年のテレビスペシャル版以来、実に20年ぶりにアニメ映画『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』として復活。2月に公開され、アニメシリーズの声優陣が再び集結した。

神谷さん演じる獠と伊倉さん演じる香は、時間の流れを感じさせないほど、ファンが求めていた2人の姿そのもので魅了した。

(c)北条司/NSP・「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会
劇場版シティーハンター <新宿プライベート・アイズ>

ただ、2人はアニメシリーズに声を吹き込んでいた頃とは、違った景色があったという。

(神谷)20年ぶりに復活すると聞いたとき、まずうれしかった。ただ、それだけの時間が空いていますから、実際にオンエア当時のイメージで演じられるか不安はありましたね。
でも作品自体が好きなので、オファーをいただいて、脚本が面白くて。「これは大丈夫だ」と作品的な自信もできたんですが、それに今度は負けない自分でいなければいけないということで、1年間かけて準備しました。
すべてを注ぎ込めたので、自分としては良かったかなと思います。
それと同時に、想像していた以上にたくさんの方に観ていただき、支持をいただいた。それは本当に、今さらながらシティーハンターの力というものを実感できました。この作品に携わることができて、良かったなと思いましたね。

年齢を重ね、命に関わるような緊急事態も経験していた伊倉さん。作品で演じ切るまでに神谷さんとはまた違った不安も感じていた。

(伊倉)私はすごく怖かったです。「できるかな?」という不安があった。
年を重ねてから昔演じた役を演じるのが初めての事なので、どうなるんだろうということが私自身、分かっていない。
年齢を重ねると急に色んなことが肉体の中で起きてくるんだなという体験を、何年か前にしました。救急車で運ばれたこともあり、もしかしたらこのまま亡くなっていたかもしれないという状態もあった。お話をいただいたとき、「収録はいつですか」と聞いたら「秋です」と。その時に「自分がどうなっているかは分からない」という漠然とした思いがありました。
不安ということはないのですが、「やれるのかな」というぼんやりとした不安。肉体が変わっているので、ちゃんと操れるのだろうか、という不安で「トレーニングしなきゃな」と思いました。
ですので(あの頃と変わっていないというファンの声は)ありがたかったですね。

神谷さんは、30年前に演じていた頃と、久しぶりに“再会”した獠では、役への入り方も変わったという。

(神谷)最初のシリーズの時は、自分が感じた獠や香をそのままやれば良かった。しかしその年から歴史を経ていますので、そこにまず一回戻って、演じなければいけない。
 
大変ではあったんですが、終ってみれば楽しくて、なおさらたくさんの皆さんに観ていただけて、新しいファンの方も増えてうれしかったです。

フランス実写版が上陸するもオファーを辞退。実写版の獠と香を演じる2人への思いは

2019年2月、新宿プライベート・アイズと時を同じくしてフランスでは、フィリップ・ラショー監督・主演の実写版シティーハンターが公開されていた。

新宿プライベート・アイズでは変わらぬ声の演技で魅了してくれた2人だが、今回の実写版では、2人は別の役として、作品にオリジナルの彩りを添えることになった。

神谷さんは最初に獠役でオファーを受けたが、「やはりアニメと実写は違いますし、そういう意味でこれは自分の役ではないなと。獠ではあるけれども、自分の役ではないと思って」と辞退した理由を明かす。
 
そこで主人公の配役に声が掛かったのが、山寺宏一さんだった。

山寺さんはシティーハンターシリーズにもたびたび出演し、新宿プライベート・アイズの舞台あいさつでは「テレビシリーズで冴羽獠に1番やられた男です。シティーハンターに育てて頂きました!」と語るほど。

当初迷いがあった山寺さんの背中を押したのは、神谷さんだったという。

(神谷)オファーをお断りした後、山ちゃんに依頼が行っているということは聞いていたんです。

それで新宿プライベート・アイズの打ち上げの時に、山ちゃんとその話をした。なにかちょっと迷っているというか、僕に遠慮しているところを感じました。

だから僕が「山ちゃん、頼むよ」と伝え「山ちゃんしか獠を演じられないから、山ちゃん演ってよ」とお願いしたんです。

「やりたくないの?」と聞いたら「そんなことはありません!」と言うから、何か遠慮があったんだなと。それなら頼むよとお願いしました。

あの獠を立派に演じていただけると思っています。

そう話す神谷さんは穏やかに笑顔を見せ、伊倉さんにも意見を聞いた。

伊倉さんも、力強く山寺さんと沢城さんのタッグに太鼓判を押した。

(伊倉)間違いない。お二人とも。沢城さんも。お任せしたら、すごいことにしてくれると思っています。

私は養成所が山寺くんと同じで、同じ先生に教わったんですが、彼は入って来た時から違いました。「すごいのが入ってきた」と上の学年でも噂になりましたから。すごく楽しみな、何十年に1人の役者が入ってきたよと。謙虚で努力家。カンは良いしできるし、盛り立ててくれる。

そして、山寺くんはべらぼうに歌がうまい。好きな歌手の歌を本当にいい声で歌ってくれて、ぼろぼろ泣いてしまいました。泣いて発散していました。凄くうまいの。(笑)

(神谷)彼の吹き替えを色々見せていただいて、自在にあんなにたくさんのキャラクターを演じられる人はこの長い吹き替えの歴史を振り返っても、まずいない、一番だと思うんです。

素晴らしい俳優さんだと思います。

ディズニー・アラジンの映画で、(山寺さんが)ジーニーで、僕がイアーゴの役でした。

テレビシリーズと合わせて100本以上ご一緒したんですが、もう見事。

あとはエディー・マーフィーの演技とか、できないですよね。あのテンポの中でしっかりした芝居を入れていくっていうのは、本当に今の時代に山ちゃんしかいない。

だから今回、山ちゃんにオファーが行っていると聞いて「よし!」っていう感じでした。

収録までには相当仕上げてくるんじゃないかなって思います。思ったとおりにやっていただけたら、山ちゃんの冴羽獠ができてくると思う。

そこが楽しみです。

(伊倉)アラジン実写版を観に行って、山寺くんがジーニーをやっている。そして、ダリアを沢城さんがやっているんです。

それを観たときに、「凄く良い!この女優さん誰?」と思ったら沢城さんだったんです。ジーニーと恋仲になる役で、「あ、間違いない」と思いました。

アラジンとは全然違う作風でくると思いますが、本当に楽しみです。

“北条イズム”が随所に。フランス実写版の魅力とは

アニメや漫画の実写版、しかも海外の作品となると、ファンにとっては不安が付きまとう。文化的背景が違ったり、原作の雰囲気が壊されてしまったり。
 
だが、今回の映画は、主演も務めたフィリップ・ラショー監督のシティーハンターへの強いリスペクトが感じられる出来栄えになっている。
 
「間違いなくシティーハンター」と2人は揃って口にする。その魅力を紹介してもらった。

Huffpost japan/Jun Tsuboike
シティーハンターの魅力を余すところなく伝えてくれた神谷さん(左)と伊倉さん(右)

(神谷)まず、獠の出で立ち。腕をまくった状態でもうすでに、衣装ができている。獠ちゃんの基本スタイルがそこにある。

さらにびっくりしたのは、「どっから手に入れてきたの?」って、たぶん作ったんじゃないかと思ったんですけど、もう生産されていないはずの(獠の愛車)ミニクーパーが新車で走っている!ところ。

海坊主も、冴子も、槇村も……そっくりなんですよ。そこもびっくりしました。原作のシティーハンターファンでも、すんなりとその世界に飛び込めると思いますね。

ハンマーに関しても、北条司先生のアドバイスであのハンマーになったそうなのです。

シティーハンターファンが観ても、そこに“北条イズム”がいかされている。心配しないでぜひ足を運んでいただきたいです。

 
伊倉さんは、書き留めてきたという“おもしろポイント”をつぶさに語ってくれた。

(伊倉)観た後に、思わず神谷さんと(原作者の)北条さんにLINEしちゃいました。「すっごい面白かった!」って。

吹き替えが、海外の名前でやるのかなって思ったら、獠と香なんですよね。

なので、危うく香をチェックしそうになっちゃって。やっぱり、すごく「獠と香」感が強いんです。香も最初に見たときから「香っぽい!」と思っていて、そこに声を当てたくなっちゃう。クセで。

今回は「違うんだ、違うんだ」って思いながら、香にセリフを当てたくなっちゃうくらいシティーハンターの世界でした。

日本で作るときはおよそ新宿から出ないんですが、モナコとか行っちゃって、超ゴージャスな客船とかが映っちゃって、きれいな海見えちゃって。お城のような建物とか、ふんだんにきれいな場所が映っていて、堪能しました。

本当に面白くて、数えだしたらキリがないくらい。ハンマーも3種類くらい出てきて、あの重量感で物を壊すとこういうことになるんだなと思いました。

間抜けなのとカッコいいところが交互に、見事に来る。ファンが観て、間違いなく「あ、シティーハンターだ!」と思えるし、シティーハンターファンじゃなくても、凄く楽しい映画になっています。

「シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」は、11月29日に封が切られる。

スペシャルゲストとなる神谷明さんと伊倉一恵さんがどの役で出演するのか、ぜひ“冒頭”から目を離さずに観てほしい。