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2020年10月21日 07時42分 JST

「知れば、理解者に変われる」足立区議の謝罪、ゲイの中野区議はどう見たか?

中野区の石坂わたる区議は「少なくともご本人に全くその気がなければ読み上げない文章だと思いますので、読み上げた以上は自身の言葉に責任を持っていただきたい」と話す。

同性愛が法律で保護されれば「足立区が滅んでしまう」と発言し、謝罪した足立区の白石正輝区議。発言が批判を浴びても「謝罪する気はない」と頑なだったが一転、10月20日の区議会本会議で「認識の甘さによりたくさんの方々の心を傷つけ、苦しめてしまった」と謝罪する文書を読み上げた。

中野区の石坂わたる区議は「少なくともご本人に全くその気がなければ読み上げない文章だと思いますので、読み上げた以上は自身の言葉に責任を持っていただきたい」と話す。

Kasane Nakamura
石坂わたる・中野区議

ゲイであることを公表して議員活動を続けてきた石坂氏は、白石区議についても「知れば、理解者に変われる可能性がある」と話す。一連の騒動をどう見ていたのか。

 

「同性愛は選べる」偏見の根底にあるのは恐れ?

白石区議の問題の発言があったのは、9月25日に開かれた足立区議会定例会。「L(レズビアン)やG(ゲイ)が広がってしまったら、足立区民がいなくなってしまう」などと発言し、批判が殺到した。

石坂氏は「実際に公の場で発言したのは問題だが、口に出さなくても白石区議と同じように思っている人はたくさんいると思う。氷山の一角なんだろうと感じていた」と語る。

SNSを中心に辞職を求める声や、「#私たちはここにいる」というハッシュタグで発言に抗議する動きが広がったが、白石区議は毎日新聞の取材に対し、謝罪するつもりはないと強調。「LとGは、楽しいからと選んでいる」「(LGBTは)わたしの周りにはいない」などの発言を繰り返した。

養護学校で教えた経験から、石坂氏は、こうした無理解と偏見の根底にあるのは「恐れではないか」と指摘する。

「性的マイノリティでも障害者でも、当事者に接したことがなく、知らないから怖い、近づきたくないと感じてしまう人は多い。でも、知れば理解してくれると信じています」

 

「人は変われる。いつからでも、何度でも」

2011年に初当選した当時、中野区議会には「中野でLGBTが増えているが、いかがなものか」という発言をしていた議員がいた。石坂さんは敢えて自分から積極的に関わるようにしたという。

食堂で「一緒にいいですか?」と相席を申し込んだり、「(議会の)この提案について「どう思いますか?」と話しかけたり。

「一緒に仕事をしていく中で、『勉強熱心だね』というところを認めてくれて、だんだんと会話が増えていきました」

2013年に音喜多駿参院議員(当時は都議会議員選挙中)が同性愛を中傷した過去の文章が炎上した際にも、本人に会いに行った。

音喜多氏は白石区議の発言について、10月5日付けのブログの中でこう述べている。

炎上したからこそ、誰よりも本を読み、当事者たちの話を聞き、いまはセクシャル・マイノリティなどの多様性政策をもっとも推し進めている議員の一人であると自負しています。

人は変われる。いつからでも、何度でも。

ぜひ今回の発言をされた白石議員には、なぜこれほどの批判が巻き起こっているのかを省みていただき、足立区とセクシャル・マイノリティのための政策を推進していただきたいと願うばかりです。

 

音喜多氏ブログ『「LGBTを法で守れば足立区が滅ぶ」わけがない。滅びを加速させるのは、ベテラン議員の奢りと無知』

 

知れば、理解者になってくれる

今回、白石区議の発言に対しては、足立区民らから謝罪や撤回を求める声が上がった。

石坂さんは「地元の市民の動きで状況が変わったのは大きい」と話す。

「中野区はLGBTが多いとされています。保守的な議員も自分が活動しているエリアに当事者がいるという認識はあるので、『あいつらを追い出してやれ』という人はいない。地元から声が上がると、議員は有権者を意識するので、考え方も変わると思います」

中野区では、当事者団体が議員にイベントの案内を持ち寄ったり、要望書を手渡したり、交流の機会も多い。2018年の中野区長選挙では、前区長と現区長がLGBTQに関する政策のアピール合戦を繰り広げることになった。

当事者の姿が可視化されるだけでなく、議会の多様性も必要だと石坂氏は指摘する。

「全国若手市議会議員の会という超党派で作る若手議員で意見交換や政策研究をしている会でも、性的マイノリティの当事者として勉強会などさせてもらっています。知らなかった人が理解者になってくれて、それぞれの議会で質問してくれたこともあります」

Jun Tsuboike / HuffPost Japan
白石正輝区議

「僕が足立の区議だったら、あの発言の後で白石区議と周囲で笑っていた人に対して話をしに行きます。不安に感じていること、疑問に感じていることを聞いてみたい。少なくとも同性愛が自分で選択できるという認識は改めてもらえると思う。感情的な部分は時間がかかるかもしれないけれど、諦めずにいきたい……」

 

パートナーシップ制度の要望も「伝え続けることも大事」

3週間以上にわたって日本中から注目を集めた議会は、白石区議の謝罪とともに閉会した。

閉会間際、近藤弥生区長は「足立区が性的少数者を差別するかのような誤ったメッセージが広く区内外に広まっているとしたら、これは大きな危機だと考えている」と述べた。

 区にはパートナーシップ制度の制定についての要望もあったという。

「どのような困りごとがあるのか伺って、どのような対策を取れるのか検討する。早急に相談の窓口は整える必要があると感じている」として、性的マイノリティの当事者と意見を交わす機会を3回設けると語った。

「怒りの声を上げることと同じくらい、伝え続けることも大事」と語る石坂氏は、「これを機に、足立区で当事者たちが声を上げやすくなり、議会に理解者が増えればいい」と期待をにじませた。