アートとカルチャー
2021年04月07日 10時22分 JST

耳が聞こえない私が美容院で受けた、忘れられないサービス。「心温まる」と反響【漫画】

作者のミカヅキユミさんは、「聴こえるお客さんと同じように会話を楽しんでもいいんだ」ということがうれしかったと言います。

聴覚障害の女性が、初めて訪れた美容院で受けた忘れられない「サービス」の体験を描いた漫画が、「心が温まる」「素敵な話」などと話題になっています。

作者は、ミカヅキユミさん@mikazuki_yumi)。7年ほど前、初めて利用した美容院での出来事でした。

しばらく髪を切っていなく「ジャングル」状態に。ミカヅキさんは、以前から気になっていた美容院を予約して向かいました。聴覚障害者であること、筆談をお願いしたいことを前もって伝えていました。

ミカヅキユミさん提供
以前から気になっていた美容院に行った

<ムラタと申します よろしくおねがいします どんな髪型をご希望ですか?>

担当の美容師のムラタさんが、筆談で希望を尋ねました。

多くの場合、美容院では髪型の希望やなりたいイメージを筆談でヒアリングしてくれるそうです。

ミカヅキユミさん提供
いつものように、希望のヘアスタイルを筆談で伝えた

<ショートボブでおねがいします 毛量が多いのですいて下さい>

と記したミカヅキさんの希望に<OKです>とムラタさん。<かなりジャングルですね!最後に切ったのはいつですか>と返しました。

その後も、ムラタさんは合間合間に筆談用のメモを手に取って、書き込みました。

ヒアリングや必要な時に書いてくれる美容師はこれまでに何人も見てきましたが、「トーク」をしてくれたのはムラタさんが初めてでした。

ミカヅキユミさん提供
「トーク」をしてくれた美容師は初めてだった

これまで美容院に行くと、他のお客さんは、美容師さんとの会話を楽しんでいる。一方、自分を担当するときは会話がないーーということが常でした。

髪を切りに来たんだもんね、おしゃべりが目的じゃない。髪を切りながら筆談なんて大変だもんね...仕方ないよ。

ミカヅキユミさん提供
しゃべらないね...当たり前か

わかってはいるけれど やっぱりちょっと寂しいな。

ミカヅキさんは、これまで美容室でそう感じることがありました。

ミカヅキユミさん提供
わかってはいるけれど やっぱりちょっと寂しい

でもムラタさんは、少し違いました。

「私もおしゃべりを楽しんでもいいんですか?他のお客さんと同じように」

ミカヅキユミさん提供
私もおしゃべりを楽しんでもいいんですか?

ムラタさんとトークする中で、ミカヅキさんはふと心配になりました。

「でも待って ムラタさんは時間大丈夫なんかな?」

<お時間大丈夫ですか? 次のお客さんに影響ないようにして下さい>と筆談で伝えると、ムラタさんはこう返しました。

<ぼくは大丈夫です。今は余裕あるし、それにぼくもお話ししたいので。ユミさんこそお時間大丈夫ですか?>

ミカヅキユミさん提供
「ユミさんこそお時間大丈夫ですか?」と気遣ってくれた
ミカヅキユミさん提供
シャンプーするときは...

ムラタさんはシャンプーをする時も、「視界が遮られると困るのでは」と気遣い、目を覆わないようにシートを被せてくれようとしました。

ミカヅキさんは、「自分が目で情報を得る人だから気にしてくれたんだ」と感じました。

ムラタさんの美容院にはその後数回通いましたが、夫の転勤で引っ越すことになりました。ミカヅキさんは、今も美容院で髪を切ってもらうたびに、ムラタさんとのエピソードを思い出すと言います。

ミカヅキユミさん提供
今も髪を切ってもらうたびに、ムラタさんを思い出す

選べることがうれしかった

ムラタさんのサービスを受けた時、どのような気持ちだったのでしょうか?

ミカヅキさんは「ムラタさんの配慮によって会話するかしないかを選べるようになったこと、聴こえるお客さんと同じように会話を楽しんでもいいんだということ、ムラタさんの『逃げずに構えずに』私とコミュニケーションを取ろうとする前向きな気持ちを感じられたことがうれしかったです」と振り返ります。

筆談で「トーク」をすることで、ムラタさんの時間を奪ってしまうのではないか。そう心配したとき、ムラタさんはむしろミカヅキさんの時間を気にして、尋ね返してくれました。

私はことあるごとに、『相手に時間を使わせてしまっている』という意識が働いてしまっていました。ですがムラタさんからそのような言葉をかけてもらい、お互いのための対等なコミュニケーションなのだから、相手の時間も自分の時間も同じように大事にして良いんだ、と思いました」

 

“生きづらさ”に気づいてくれる人の存在

ムラタさんとの出会いから約7年。2人のエピソードの漫画がSNSで話題になっていることを、ミカヅキさんはどう受け止めているのでしょうか?

「私はいわゆるマイノリティで、聴こえる人が当たり前のように受けることができるサービスや時間が手に入らないことがあります。ですが、私の『生きづらさ』に気づき、それを行動に移してくれる存在があって初めて、私は聴こえる人と同様にサービスを受けたり、満足のいく時間を過ごしたりすることができる、という場合もあるのです。これが当たり前の社会になってほしいなと心から願っています。同時に、感謝の気持ちを伝えることも忘れないでいたいです」

Twitterでは、8万件を超える「いいね」が付くなど大きな反響を呼んでいます。「心が温まります」「ムラタさん、素敵」といった声が上がっています。

「筆談をサラリと、必要なこと以外のトークを交えてやってくださる方のいるお店に行くと感動しちゃいます」と、自身の体験を重ねる人も。

同業者とみられるTwitterユーザーからは

「理容師ですが、これからは耳の遠いお年寄りにも筆談で『会話』しようと改めて思いました」

「私も長く接客業をしてますが、ムラタさんのように自然にお客さんに寄り添える、そんな仕事ができるように努力していきます」

といったコメントが寄せられています。