発達障害と生きる
2021年12月04日 08時00分 JST

塗り絵が大嫌いな息子がお絵描きにハマったまさかの理由【漫画】

子どもたちは「塗れない」のか、「塗りたくない」のか? 発達凸凹(発達障害)を抱える親子が見つけた「抜け道」とは──。定説どおりにいかない育児の難しさと、偏りとともに生きるヒントを絵日記として発信し、共感を呼んだモンズースーさんに話を聞いた。

凸凹ハウス~親子で発達障害でした~
(「塗り絵の楽しみ方がわからなかった話」3 より)

体幹が安定しない、集中力が続かないなどの理由から、発達障害のある子どもには塗り絵が苦手な子が少なくないという。 

凸凹ハウス~親子で発達障害でした~

発達障害グレーゾーンの2児を育てる母で、自身もADHD(注意欠陥・多動性障害)の診断を受けている当事者のモンズースーさんは、当時幼稚園に通っていた子どもたちが塗り絵が苦手なことに気づく。 

「同学年の子と比べてしまうと圧倒的にできませんでした」

育児中に直面した困りごとを漫画にしたブログ「凸凹ハウス〜親子で発達障害でした〜」が、当事者や発達障害傾向のある子どもを育てる親の共感を呼び、『生きづらいと思ったら親子で発達障害でした』(KADOKAWA)シリーズとして書籍化。2020年9月には、当事者9人の過去と現在を描いた『発達障害と一緒に大人になった私たち』(竹書房)も発売されるなど、話題の絵日記ブロガーだ。 

そんなモンズースーさんのブログの中でも「塗り絵の楽しみ方がわからなかった話」には、定説どおりにいかない育児の難しさと、偏りとともに生きるヒントが描かれている。

子どもたちは「塗れない」のか、「塗りたくない」のか? 凸凹を抱えるモンズースーさん親子が見つけた「抜け道」とは──。

 

何をやっても効果なし…そもそも私も苦手だった

ASD(自閉症スペクトラム症)の特性が見られる長男のそうすけ君は、自分の気持ちを説明したり、姿勢を維持することが苦手。次男のあゆむ君は、幼少の頃から検診で発達の遅れを指摘されてきた。

ある日、療育の場で塗り絵の効用について耳にする。

「塗り絵は脳の発達にいいのでたくさんやってください」

凸凹ハウス~親子で発達障害でした~

指先の訓練、達成感による自己肯定感アップ、集中力の向上、自律神経も整える──いいことずくめだ。

さっそく準備を整えて子どもたちに促してみるも、2人はまるで楽しくなさそう…。

凸凹ハウス~親子で発達障害でした~

「どうしたら楽しく塗れるかな…」と思案を巡らすなかで、自身の子どもの頃の記憶にヒントを求める。そして、ハッとする。

「…楽しく塗れたことなんて…あった?」

凸凹ハウス~親子で発達障害でした~

小さい頃から塗り絵が苦手だったことを思い出したモンズースーさん。

ムラなく塗ったり、はみ出さないように塗ったりすることができなかったという。

凸凹ハウス~親子で発達障害でした~

メリットの一つとして挙げられた「達成感による自己肯定感アップ」は、不器用なせいで思いどおりに塗ることのできない子にとっては逆にストレスになってしまう。

「それでも」と、工夫を凝らす。

色鉛筆と比べて一度に塗れる範囲の広い水性ペンや、ボタン一つではみ出さずに色をつけられるタブレットでの塗り絵を勧めてみるも、やっぱり挫折……。

凸凹ハウス~親子で発達障害でした~

塗り絵は嫌いだけど、お絵描きは好き?

万策尽きたモンズースーさんは、塗り絵を勧めることをやめた。

しかし数年経つと、なぜか長男は自ら絵を描くようになり、色を塗り始めた。

あんなに苦手だったのに、なぜ? 長男に理由を尋ねると…。 

凸凹ハウス~親子で発達障害でした~

「だってだれかが描いた絵を塗っても楽しくないし」

この頃、そうすけ君は自分で考えたオリジナルの仮面ライダーやマリオカートのコースをずっと描いていたという。タブレットやゲーム雑誌で色やデザインまで調べていたというのだから、よほどの入れ込みようだ。

食べることが大好きなあゆむ君が描くのは、やはり食べものの絵だった。

「もし色塗りが苦手な子がいたら『好きな絵を描いて塗る』ことを試してみるのはありかもしれません」

このエピソードの締めくくりで、モンズースーさんはそう綴っている。

何度も好きな絵を描いて塗っていく過程で、2人ともだんだん線をはみ出すことなく塗れるようになっていったという。

 

■モンズースーさんとの一問一答

──お絵描きはその後も続いている?

長男は小学校高学年になりましたが、今でも自分の描いた絵に色を塗るのを楽しんでいます。何年も描き続けているからか、長男なりに上達して細かい絵も塗れるようになってきました。

──ご自身も塗り絵が苦手だったと。

塗り絵を楽しめなかったこと、絵を描くのが好きなことが、私と子どもたちの似ている部分です。ただ、モノクロが好きで自分の描いた絵に色を塗ることがほとんどなかった私と違い、子どもたちは自分の絵に色を塗るのが好きです。

──当事者ならではの困難を感じるのはどんな場面?

日記を書くのが苦手です。漫画なら多少表現できるのですが、テキストが書けなくて、短い文章を書くのにもかなり時間がかかってしまいます。絵日記ブログを描き続けてきたことで書きたい話はなんとかまとめられるようになりましたが、他のブロガーさんのように上手には書けません。

長男も自由度の高い課題は苦手で宿題のなかでも一番時間がかかっています。好きそうな題材を見つけてもその気持ちを文字にまとめるのは困難なようで、泣きながら書いていたこともありました。正解といえるような答えはなく何を書いても自由だけど、暗黙のルールやNGはある。そこは絵と違うところで、長男にはとても難しいのだと思います。

──漫画の中で発達障害のことを「発達凸凹」と表現する理由は?

私のなかの発達障害のイメージに“凸凹”が一番近い気がしたからです。発達障害の特性ってプラスな所もマイナスな所もあるのですが、“障害”という言葉を使うとマイナスなところが目立ってしまう気がしていました。

凸凹ハウス~親子で発達障害でした~

“個性”などのプラスなイメージも私のなかでは少し違うように思っていて、発達の偏りのことを一番表している言葉が“凸凹”かなって個人的に思いました。 でも他の表現も間違いではないと考えています。人によっては“障害”であったり、“個性”であったりすると思うんです。そんななかで私は“凸凹”かなって感じて、この言葉を使っています。

 

「塗れない」と「塗りたくない」は地続き

「『塗れない』と『塗りたくない』は、どちらかじゃなく繋がってるんですよね」

子どもたちの変化を目の当たりにする中でモンズースーさんはそう考えるようになったという。

「できない」が積み重なり「やりたくない」に至るという意味で両者は地続きだ。

自ずとお絵描きを始めたそうすけ君とあゆむ君の事例が示すのは、その矢印の逆バージョンなのかもしれない。

「やりたい」から「できる」し、「塗りたい」から「塗れる」──。

偏りとともに生きていく上で、折に触れて思い出したい法則だ。

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 (取材・文:岩辺智博 編集:毛谷村真木/ハフポスト日本版)