AV新法の素案「被害救済にとって画期的」1年は無条件で出演契約の解除が可能に。支援者ら会見

アダルトビデオ出演契約の被害防止と救済に関する新たな法案。与野党がまとめた素案には、事業者側に対して映像の回収などの義務を課す内容も盛り込まれた。
イメージ写真(本文とは関係がありません)
イメージ写真(本文とは関係がありません)
Five via Getty Images

アダルトビデオ(AV)の出演契約をめぐる被害救済に関し、与野党の実務者会合が新たな法案の素案をまとめたことを受け、支援団体らが5月16日に記者会見を開いた。

素案は、年齢や性別にかかわらず、AVの公表から1年間は無条件で契約を解除できるようにすることなどが柱。

国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」メンバーら支援者は会見で、「被害者に寄り添った被害救済を規定している」などと肯定的な受け止めを示した。一方で、課題を指摘する声も上がった。

何が問題になっている?

新たな法案の略称は、「AV出演被害防止・救済法案」。

法制化を目指すきっかけは、改正民法の施行に伴い成人年齢が4月から18歳に引き下げられたことだ。

児童買春・ポルノ禁止法は、18歳未満のAV出演を認めていない。一方、同法の対象ではない18歳と19歳の場合、親の同意なく結んだ契約を取り消すことができる民法上の「未成年者取り消し権」を従来は使うことができた。

そのため、18〜19歳がAV出演を強要される被害に遭っても、映像の流通前に取り消せば販売や配信の中止が可能だった。

だが成人年齢の引き下げに伴い、18歳と19歳は未成年取り消し権の対象外となることから、高校生を含む若年者の被害増加が懸念されていた。

素案、どんな内容?

実務者会合が取りまとめた素案は、出演者の年齢や性別にかかわらず、映像の公表から1年間は無条件で契約を解除できるようにすることを規定した。経過措置として、法施行後2年間は、契約を無条件に解除できる期間を映像の公開から2年間とする。

事業者側は、契約解除に伴う損害賠償を出演者に請求することはできないとの規定も盛り込まれた。

さらに、契約解除となった場合、映像の回収といった原状回復の義務を事業者側に課す内容となっている。事業者側は出演者に性行為を強制できないことも明記した。

このほか、契約から撮影まで1か月、撮影から公開まで4か月の期間をそれぞれ置かなければならないと定めている。

アダルトビデオ(AV)出演強要対策に関する与野党の実務者協議に臨む自民党の上川陽子幹事長代理(中央)ら=5月13日午後、東京・永田町の衆院議員会館
アダルトビデオ(AV)出演強要対策に関する与野党の実務者協議に臨む自民党の上川陽子幹事長代理(中央)ら=5月13日午後、東京・永田町の衆院議員会館
時事通信社

規定に違反した事業者に対する罰則規定も盛り込まれた。契約に関して事業者側が出演者に虚偽の内容を伝えたり、契約解除を妨げようと脅したりした場合には、3年以下の懲役・300万円以下の罰金を科す。

新法の施行から2年以内に見直しを行い、必要な措置を講ずると定めている。

支援者「希望の持てる法案」

素案の取りまとめを受け、「AV出演被害防止・救済法の実現を求める会」は声明文を発表

「被害者に対し、人権と尊厳の回復を実現できる強力な法的手段を付与するものであり、被害防止と被害救済にとって画期的なものと言える」と評価し、法案の早期成立を求めた。

16日の記者会見で、国際人権NGO「ヒューマンライツ・ナウ」副理事長で弁護士の伊藤和子さんは、契約解除の規定などを踏まえ「非常に手厚い保護が与えられていることは重要だ」と述べた。 

デジタル性暴力の被害者支援に取り組むNPO法人「ぱっぷす」理事長の金尻カズナさんは、個人的な見解だと前置きした上で、「被害者にとって希望の持てる法案になったのでは」との受け止めを示した。

その上で、金尻さんは「性行為を伴うAV撮影の契約は無効であると盛り込まれなかったことは課題」と強調。「国民世論の高まりによって性行為を伴うAV撮影の禁止を今後実現できれば、性的搾取の根本的な被害救済ができる」と述べた。

記者会見で素案への受け止めを語る「ぱっぷす」理事長の金尻カズナさん
記者会見で素案への受け止めを語る「ぱっぷす」理事長の金尻カズナさん
HuffPost Japan

ぱっぷすの相談員の内田絵梨さんは「過去や現在だけでなく、未来までも奪われてしまうのがデジタル性暴力の問題。未来に対して少しでも有効な手立てになることを期待しています」と話した。

素案を評価する意見がある一方で、「カメラを回すことで性交を伴う契約を合法と認めるものだ」「性売買の合法化につながる」などと反対の声も上がっている。

実務者会合では、新法に関して「公序良俗に反する契約や違法な行為を容認するものでも、合法化するものでもない」との見解が示された。

 (國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)

注目記事