検索を通じて社会課題の解決を。ヤフーが貫く信念とは?

ヤフーが検索を通じた社会課題の解決に力を入れています。その狙いについて、西田修一執行役員と永田佑子マーケティング統括本部長に話を聞きました。
取材に応じる西田修一執行役員(左)と永田佑子マーケティング統括本部長
取材に応じる西田修一執行役員(左)と永田佑子マーケティング統括本部長
ハフポスト日本版

ヤフーが検索を通じた社会課題の解決に力を入れている。

2014年に、利用者がヤフーで「3.11」と検索すると、1人あたり10円が東日本大震災の復興を支援する団体などに寄付される取り組みを開始。復興支援と震災の記憶の風化防止に貢献している。

21年からはLINEと共同で実施。22年は延べ約1127万人が参加し、計約8197万円を寄付した。

他にも、検索による寄付の仕組みを使って、新型コロナウイルス感染症の最前線で働く医療従事者を支援したり、ウクライナ避難民を支援したりしてきた。

検索を通じた社会課題の解決についてどう考えているのか。ヤフーの西田修一執行役員と永田佑子マーケティング統括本部長に聞いた。

主な一問一答は以下の通り。

「自分ごと化」して考えてほしい

ーー検索を通じた支援のポイントは何でしょうか?

西田氏:検索は、もはや当たり前のように生活の中に浸透したツールです。検索窓を提示することで、多くを説明せずともこの取り組みへの参加方法を伝えることができるシンプルな設計がポイントです。

例えば、「3.11」と検索をすると必ず結果が表示されます。そこでは当時のニュースや今の復興状況などを知ることができます。これは当時を思い出し、そして今を知るという意味で風化の防止になります。

ーー利用者は検索するというアクションを起こすことによって、どういう意識が芽生えるのでしょうか?

西田氏:利用者は検索による支援を通じて「3.11」を思い出し、被災地に思いをはせ、SNSなどを通じて周囲の人々に伝えていく。そして、この取り組みが広がることにより、災害に対する意識や被災地への関心の輪が広がっていきます。

検索している人が実際にお金を払っているわけではないので、厳密に言えば寄付ではないのかもしれませんが、寄付そのものというよりは、意識を持ってもらう、伝えてもらう、みんなで参加することで一体感を醸成するというのがこの取り組みの真価だと思います。

また、著名人やYouTuberが紹介してくれます。そうすると、著名人と同じ取り組みを自分もしていて応援しているというのが空気として作られます。

検索するという能動的な行為をすることによって震災や防災を「自分ごと化」して考えてもらうことを期待しています。

ーーコロナ禍が続く中、医療従事者に対する検索による支援も継続して実施しようと考えていますか?

永田氏:コロナに関しては今のところ、もう一度ということは考えていません。検索による支援を実施した2020年はどちらかというと、コロナに関してワクチンもまだ出ていない頃で、医療従事者のリソースや病床の数が逼迫している中で、医療従事者を応援しようという気運を作るために実施しました。今はモメンタム(勢い)が違うと考えています。

西田氏:モメンタムというのは結構大事なポイントです。モメンタムをどう生かすか。その生かし方にはいろいろ手段があって、検索支援がうまくいくパターンと、はまらないパターンがあります。

例えば、「3.11」の検索の場合、毎年3月11日にモメンタムが強くなります。一方で、今のウィズコロナの状況の中では、検索による支援とは違うアプローチが必要だと考えています。

防災は永続的に取り組みたい

ーー現状、ヤフーが取り組むべき一番大きな社会課題は何だと考えていますか?

永田氏:一番大きい社会課題はちょっと選べませんが、ヤフーとして永続的に取り組んでいきたいのは防災の領域です。

防災や有事の際には、ヤフーのトップページに「本当なの?」「事実なの?」と利用者が確認しにきていただけるので、日本を代表するメディアという自負を持ってやっています。

その中で災害や有事の時に必ず正しい情報を届けるという矜持を持っているし、いち早く情報を届けるためにいろいろな機能をどんどん追加しています。

ーー3.11から10年以上が経ちますが、今後どのように取り組んでいきますか?

永田氏:今年3月に震災から11年を迎え、あらためて3.11以降に生まれた子どもの数を調べてみたら1023万人でした。

日本の国民の約8%は「あの日を忘れない」どころか、実体験として3.11を知りません。

そういう世代が増えていく中で、どうやって3.11を風化させないで、防災は大事だと伝えていくか。今年は新しい局面に入った感覚があります。

3.11企画は2031年まで継続することが決まっています。(ヤフーの親会社である)Zホールディングスと経営統合したLINEは我々よりも若年層のコミュニケーションに強い部分があるので、Zホールディングス全体で防災に取り組んでいきたいと思います。

注目記事