「迷惑かけていいんだよ」根暗ないじめられっ子が“明るいLiLiCo”になれた理由

好評連載 第34回 LiLiCoの「もっとホンネで話そう。私たちのこと」
タレントのLiLiCoさん
Yuko Kawashima
タレントのLiLiCoさん

世間を騒がすイシューからプライベートの話題まで、LiLiCoさんがホンネで語り尽くす本連載。今回のテーマは、「いじめ」です。

スウェーデン生まれのLiLiCoさんが18歳の時に日本に移住した理由のひとつが、11歳頃から高校時代まで続いたいじめだったといいます。当時LiLiCoさんは、何を感じ、どのように自分を奮い立たせていたのでしょうか。いじめに苦しむ人たちに伝えたいこととは。

スウェーデンで受けたいじめ

「ブス」「チビ」「アジア」「ダサい」……。

11歳頃、転校先の学校で突然いじめが始まりました。

理由は、私が日本とスウェーデンの“ハーフ”だったから。雑誌で見た映画や音楽のスターをいち早く真似して流行を先取りしていた私は、メイクやファッションが独特に映ったのかもしれません。2、3カ月後にはそれが学校で流行って、みんな同じファッションやメイクをしていたのにね。

Yuko Kawashima

一番つらかったのは、話しかけると無視され、私がいないかのように振る舞われたこと。学校で同級生の女の子に「夜、迎えに行くから一緒に遊びに行かない?」と誘われて、家で準備をして待っていても、彼女は来ない。そして深夜になってやっと玄関チャイムが鳴り、「ごめんごめん、忘れてた」と笑われたことがあります。

ほかにも、雪の日に雪玉をぶつけられたり、つばを吐いた雪玉を顔に押しつけられたりしたことも。「芸能人になりたい」という夢も「無理だよ」「なれるわけない」と完全否定されました。

高学年になった時には、カフェテリアに入っただけでブーイングをされました。本当は私に興味がない男子生徒にデートに誘われて、答えが「イエス」でも「ノー」でも「本気で言うわけないだろ」と吐き捨てられたことも。

こうしたいじめは、基礎学校(編集注:日本における小中学校。7~16歳まで通う)を卒業するまで続きました。

母には言えなかった。スターの自伝に学んだこと

いじめを受けていたとき、私は家でよく泣いていました。「神様、どうして私だけなのよ!」と叫び、いじめた人はどん底に落ちればいい、消えればいいと思っていました。

母には打ち明けられませんでした。「アジア人だから」といういじめの理由を知ったら、日本人である母が、自分のせいだと考えるとわかっていたからです。

でも、私は自分がいなくなりたい、死んでしまいたいと思ったことはありません。

それは、10歳の時から憧れるスターたちのインタビューや自伝を読み、私もこんなふうに人生を切り拓かないといけないんだ、と考えていたから。

Yuko Kawashima

例えば、最初は極貧で、ヌードモデルからスーパースターにまで上り詰めたマドンナ。

顔面麻痺や言語障害、いじめ、両親の離婚などを経験しながらも、一生懸命身体を鍛えるトレーニングをしてアカデミー賞俳優になったシルヴェスター・スタローン。

幼少期は孤児院や里親のもとで過ごし、夫に役者業を否定され、離婚後は生活に苦しむ時代を経て、ハリウッドスターとして花開いたマリリン・モンロー。

今輝いている人でも、その裏には悲しみを乗り越えた過去がある。その事実に勇気付けられて、私はいじめの悲しみをパワーに変えることができました。

今いじめに悩んでいるなら、ぜひ自分が憧れる人の自伝を読んでみて。キラキラした成功譚ばかりでなく、逆境から立ち上がった人たちの人生に触れて、どんなに勇気づけられるか知ってほしいんです。

力をくれる音楽にも出合ってほしい。私が今オススメしたいのは、シンガーソングライターの遥海さんの「ZONE」。自分の姿に重ねあわせると、3分の間に強い自分になれるはずです。

Yuko Kawashima

今、いじめられてつらい人たちへ

私が今、LiLiCoとしてここにいるのは、いじめられても生き続けてきたから。

いじめがつらくて死にたいと考えている人は、たくさんいると思うんです。でも、私はあなたに生きてほしい。

最近、日本には「迷惑をかけるから命を絶つ」という考え方があると知り、ショックを受けました。そんなことがあっていいわけがありません。生きていれば、迷惑の一つや二つかけるのは当たり前。身近な人が亡くなって、あなたがどれだけ落ち込むか、思い出してください。あなたが死んだら、別の誰かが同じように悲しむんです。

生きるために産まれ、いつか必ず死ぬのだから、その日まで命を大事に生きましょうよ。

いじめを受けている人は、今いる場所がすべてに思えるかもしれません。でも実際は、学校を変えたっていいし、社会に出てもいい。私のように、どこか別の国に行ってもいいんです。

外の世界に出てみると、そこにいる人たちは、あなたのことをまったく知らないし、別の価値観を持っています。スウェーデンでは「チビ」と言われた私が、日本に来たら「体の大きな人」という扱いを受けているように。

自分のことを変えたかったら変えていいし、変えたくなかったら変えなくていい。

根暗で後ろ向きだった私が日本に来て、“明るいLiLiCo”になったように、あなたのなりたい自分、あなたらしくいられる場所を探してほしいな。

世界のどこかにはあなたと波長の合う人間がいるはず。時間はかかるかもしれないけれど、大爆笑できる日だって来ます。

Yuko Kawashima

今、あなたが誰かをいじめているなら…

いじめとは、相手の人生を壊す行為。もしいじめた側が自分のしたことを忘れても、いじめられた人は一生、心の傷に苦しみながら生きていくことになります。

事実、私は40年以上経っても、いじめられたことをありありと覚えているし、それを思い出すだけで涙が出てきます。

いじめのトラウマも残っています。「ブス」「バカ」と陰口をたたかれたせいで、今でも街でこちらを見て何か言っている人がいると、悪口を言われているように感じてしまうんです。

いじめた側の心にも、いじめたことへの後悔がずっと残り続けるのではないでしょうか。「人に悪いことをしたな」という罪悪感は、意外に消えないものですから。

あなたが誰かをいじめているなら、相手のためにも自分のためにも、すぐにやめた方がいい。直接的ないじめだけじゃない。SNSで気軽に人の悪口を言う大人たちも、自分の言動がどれだけ自分と他人を傷つけるのか、真剣に考えてほしいです。

Yuko Kawashima

周囲にいる人たちは、できることを今すぐしよう

「子どもがいじめられていないか心配なら、その子の話に耳を傾けましょう」――そんな言葉をよく聞きます。でも、大変な状況にいる人が言葉を発するのは、とても難しいこと。そんなとき、私はその人の目を見ます。そうすれば、いつもと何かが違うと気づくことができるから。

もしあなたの周りにいじめられている人や苦しんでいる人がいるなら、できることは今すぐしましょう。状況が悪化したら、絶対に「もっと気にかければよかった」「もっと自分にできたことがあったかも」と後悔するはず。心配に思う相手がいるなら、今メールや電話をしてあげて。

いじめがあるかどうかにかかわらず、大人たちは子どもに対して「迷惑をかけていいんだよ」という空気を作ってあげてほしい。

学校では、月に一回、「いじめはよくない」という授業をやってもいいぐらいだと思います。「いじめがわからなかった」と話す先生もいますが、もし誰かが孤立しているなら、授業が始まる前にドアの陰からのぞいて見るだけでも、いじめに気づくことができるのではないでしょうか。先生もかつては、いち生徒だったんですから。

いじめは、何も生み出しません。どうかみんな力を合わせて、困ってる人を助けましょうよ。

Yuko Kawashima

(取材・文=有馬ゆえ、写真=川しまゆうこ、編集=若田悠希

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