Twitter「倒産もありうる」とマスク氏。今、何が起こっているのか【解説】

広告主の撤退から認証バッジまで...。物事がスムーズにいっているとは言えなさそうだ。
マスク氏がTwitterを買収して約2週間。今Twitterでは何が起こっているのか(イメージ画像)
マスク氏がTwitterを買収して約2週間。今Twitterでは何が起こっているのか(イメージ画像)
NurPhoto via Getty Images

新たなTwitterへようこそ。

ここでは、誰もが他人になりすますことができ、8ドルという低価格であなたにうわべだけの認証を与えてくれます。

少なくとも、今のうちはーー。


Twitter社の「イーロン・マスク時代」が始まってから約2週間、従業員の約半数が解雇され(➡︎集団訴訟に)、大手広告主は支出を一時停止し(➡︎「悲惨な」財務状況に)、以前の本人認証システムは破壊された。

つまり、誰でも他人のふりをしてアカウントを開設し、かつては一定の基準を満たしたアカウントにのみ付与されれていた「認証バッジ」が8ドルで購入可能となり、今や「認証」の意味を失った。

そのため、アメリカ元大統領“ジョージ・W・ブッシュ”が11月10日、「イラク人を殺していたのが懐かしい」とツイートし、それにイギリス元首相“トニー・ブレア“が「正直同感」と反応するという事態が起きた。

両アカウントは偽物で、最終的に停止されたが、それは最初の投稿から9時間以上経ち、広く注目を集めてからのことだった。

このような状況は広告主にとって、まさに「参加自由の地獄絵図」だろう。

Twitterで今、いったい何が起きているのか?簡単に振り返ってみよう。


連邦取引委員会との度胸試し

ソーシャルメディア専門のニュースメディアPlatformerのレポーター、ケイシー・ニュートン氏によると、Twitterの最高プライバシー責任者ダミアン・キエラン氏、最高情報セキュリティ責任者リー・キスナー氏、最高コンプライアンス責任者マリアン・フォガティ氏の3人は、この1週間のうちに全員辞任したという。

彼らが不在の中、エンジニアたちは「(連邦取引委員会による)必要条件やその他の法律のコンプライアンスを自己証明する」ことが求められていると報じられている。

こうした辞任により、Twitter社と個々の従業員たちは、数十億ドルの法的責任にさらされる可能性がある。特に、広告配信のために個人ユーザーのデータを悪用したとして同社が5月に連邦取引委員会と合意したことに起因するものだ。

テックメディアThe Vergeが入手したTwitterの社内メッセージでは、同社のプライバシーチームの弁護士が社内で警鐘を鳴らし、不快なことを頼まれたら内部告発の保護を求めるよう従業員に勧めているという。

また、メッセージには、「この2週間で、イーロンはTwitter買収という拘束力のある義務から逃れられなかった結果、被った損失を取り戻すことだけを考えていることが分かった」

「この契約は彼が選択したことだ。しかしその結果、私たち全員がこのような目に遭っている」

「(現法務責任者)アレックス・スピロは、イーロンはこの会社とそのユーザーに関して大きなリスクをとる覚悟があると言っていたのを聞いた」

「イーロンは宇宙にロケットを飛ばす人だ。連邦取引委員会を恐れていない」
などと書かれていたという。

また、Twitterの信頼&安全責任者でプラットフォーム上のヘイトスピーチと戦いにおける中心人物であったヨエル・ロス氏も辞任した、とBloombergが報じている。


広告主の相次ぐ撤退

マスク氏就任後、いくつかの大手広告バイヤーは、この「言論の自由絶対主義者」マスク氏が物議を醸すようなコンテンツをどのように抑制するかの計画について懸念を挙げ、同社への支出を一時停止した。

Twitterは買収後もコンテンツモデレーションや施行方針を変更していないが、マスク氏自身の行動は、アメリカの大企業らを不安に陥れており、人種差別が急増しているとの調査結果が出ているという。

人権団体などを含む50以上の擁護団体はTwitter広告主への公開書簡で、「過激派はマスク氏のTwitter買収を祝うだけでなく、最も口汚く、嫌がらせ的で、人種差別的な言葉や画像を投稿する新たな機会として捉えている」と述べた。

10日の全体会議で、マスク氏はTwitterを好転させるためにどれだけの時間があるか分からないと従業員に話し、「倒産の可能性もある」と述べた

また、買収完了直後、同社の広告営業部長が公然と辞任したことも助けにはならなかった。

マスク氏は9日、Twitterスペースで1時間の質疑応答を行い、広告主の不安を緩和し「可能な限り包括的なデジタル上の街の広場」のビジョンを描くよう求めた。

月8ドルの購読料は、プラットフォーム上のスパムを減少さること、そしてブランドにとって安全な環境を作るための手段として大々的に説明された。

「広告の隣にヘイトスピーチがあることは素晴らしいとはもちろん思わない」とマスク氏は広告主に話した。

「しかし、8ドル支払っている自分のアカウントでヘイトスピーチを投稿し、アカウント停止のリスクに晒すという傾向は非常に少ないだろう」と述べた。

しかし、こうした説明で広告主がこぞって戻ってくるような結果にはならなかった。

その数時間後、マスク氏はTwitter社に初めてメールを送り、広告費への大きな依存による「悲惨」な経済状況を警告した。そしてそのメール内で、リモートワークの方針も覆した。


本物は誰?

他人になりすまして認証アカウントを得るために毎月8ドル支払う人はいないだろう、とマスク氏が広告主に話した直後、多くのTwitterユーザーがまさにそれを実行した。

前出の“ジョージ・W・ブッシュ”元大統領や“トニー・ブレア”元首相を装った認証アカウントが出現し、イーロン・マスクやNBA選手レブロン・ジェームズなどの偽物が無数に現れたのだ。

そして、広告主にとって特に恐ろしいのは、偽物なのに「認証」されたブランドが出現したことだ。ゲームで有名な「Nintendo of America」はマリオが人々を跳ね飛ばしている写真を投稿し、医薬品メーカーの「Eli Lilly」は「インスリン注射薬が無料になった」と投稿した。

Twitterはアカウントを二重認証するためグレーの「公式ラベル」を一時デビューさせたが、マスク氏はそれをほぼ即座に中止させるなど混乱が続く。

マスク氏は広告主に対し、「あらゆる種類の欺瞞や不正に関与したアカウントを積極的に停止する」と述べたが、従業員の半分を解雇し、残った人たちに果てしないモグラ叩きゲームをさせている以上、それはいうほど簡単なことではないだろう。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。

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