緊急避妊薬が薬局で買えないのはG7で日本だけっておかしくない? #緊急避妊薬を薬局で

私にとって「緊急避妊薬(アフターピル)」へのアクセスが悪く、値段が高いという問題は、日本社会の男女不平等を実感する問題の一つです。

「あぁ、こうやって、当事者の『必要』という声が捻じ曲げられるんだ」

私にとって「緊急避妊薬(アフターピル)」へのアクセスが悪く、値段が高いという問題は、日本社会の男女不平等を実感する問題の一つです。

緊急避妊薬とは、避妊に失敗した、または避妊せずに行った性交後72時間以内に緊急的に用いる薬。WHOが「大多数の人が健康を保つために必要不可欠で、誰もがアクセスできる値段で提供されるべきであること」と定義する「必須医薬品」に指定しています。

緊急避妊薬は、世界90カ国で処方箋なしで、薬局で入手ができます。一方日本では、医師の処方箋がないと入手できず、価格も高い。「先進国首脳会議(G7)」の参加国の中で、日本だけがそんな状況なのです。

緊急避妊薬とは?
緊急避妊薬とは?
提供写真(©️緊急避妊薬を薬局でプロジェクト)

なるべく早く服用するほうが効果が高くなるけれど、近くに産婦人科があるかどうか、診察時間内かどうか、学校や仕事の時間とどう折り合いをつけるかどうかなど、日本で緊急避妊薬へのアクセスの悪さにモヤモヤしたことがある人も多いのではないでしょうか。

現在、この緊急避妊薬を薬局で買えるようにする「OTC化」をすべきかどうかの議論が厚生労働省で行われています。2020年にはOTC化を求める10万筆を超える署名が提出されるなど、多くの人が望んでいるのは明らかです。

しかしおかしなことに、緊急避妊薬を必要とする当事者不在の動きが「大きな影響」を持ってしまっているのです。

次の生理が来るまでうっすら不安に思って過ごすことがないんだろう

先月下旬、緊急避妊薬の薬局販売に慎重な対応を求める自民党の議連が加藤厚生労働大臣に意見書を手渡していました。

多くの国で実現してるのに、日本では緊急避妊薬が薬局で手に入るようにならない現実は、こういう政治が裏にあるから。
緊急避妊薬を必要とする当事者不在のムーブが大きな影響力を持つのは本当におかしな話、一緒に闘いたい。#緊急避妊薬を薬局で https://t.co/XVU8cY4eZo

— 能條桃子 \NO YOUTH NO JAPAN/ (@momokonojo) December 26, 2022

この意見書を提出した議連とは、「地域で安心して分娩できる医療施設の存続を目指す議員連盟」(武見敬三会長)で、緊急避妊薬の安全な使用や悪用防止の立場から、OTC化に慎重な立場を取っています。

この議連は、2021年に日本産婦人科医会が武見敬三参議院議員に持ちかけてつくられたもので、日本産婦人科医会の意見が強く反映されています。

日本産婦人科医会は「安全使用」「悪用防止」のために産婦人科の受診を維持したい立場ですが、WHOは「正しい使用のために医学的管理下におく必要はありません」と示しています

また検討会議では、“悪用”を防ぐために面前服用(薬剤師の前で服用)するようにした方がいいのではないかといった話も出ています。

東京都内の薬局で、薬剤師がモーニングアフターピルの箱を受胎調節キットに入れる様子
東京都内の薬局で、薬剤師がモーニングアフターピルの箱を受胎調節キットに入れる様子
時事通信=AFP

過去には、2017 年に実施された「医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議」において賛成大多数のパブリックコメントを受けたにもかかわらず、緊急避妊薬のOTC化は見送られた経緯もあります。

きっと本件の意思決定の場にいる人の多くは、友達からLINEが来て日曜に空いている産婦人科を一緒に探した経験もなければ、緊急避妊薬を服用すること自体に罪悪感を感じさせられる空気に嫌気が差したこともないのでしょう。

次の生理が来るまでうっすら不安に思って過ごす経験をしたこともなければ、そういう経験をするかもしれないという心当たりもない人たちに、「悪用する可能性がある」とか理由を並べられて緊急避妊薬へのアクセスを制限されているのです。そんな現状が本当に悔しい。

日本産婦人科医会は当事者となる女性のことを本当に一番に考えているのか疑問ですし、当事者・当事者になる可能性がある人たちが声を上げていく必要性を感じました。

もし、日本社会のありとあらゆる意思決定の場がもう少し男女平等であれば、緊急避妊薬のアクセスがこんなにも悪い状況は生まれていないでしょう。でも、すぐに全てが変わるのは難しい。だから、一つ一つ声を上げるしかないのだと思います。

数や経験を可視化するために声を届けよう

現在、「緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る検討会議での議論」に関するパブリックコメントの募集が1月31日まで行われています。

パブリックコメントは、政治に直接声を届けることができる大きなチャンスです。同じ議題でパブリックコメントが行われることはなく、これを逃すとしばらくこの議論は暗礁に乗り上げてしまうかもしれません。

「自分に専門性はないから」と気後れする人にも、もし何か言いたいことがあるなら、ぜひそのストーリーをパブリックコメントに寄せてほしいと思っています。

パブリックコメントはこちらから。

「緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る検討会議での議論」に関するパブリックコメントの募集が1月31日まで行われている
「緊急避妊薬のスイッチOTC化に係る検討会議での議論」に関するパブリックコメントの募集が1月31日まで行われている
提供写真(©️緊急避妊薬を薬局でプロジェクト)

なお、パブリックコメントを記入する画面に移る前のチェックボックスが、そのページ内にある「意見募集要項」PDFを開いてからでないとチェックできない仕様になっていますのでお気をつけください!

パブリックコメントの書き方がわからない人や、どんな議論があるのか知りたい人は、「緊急避妊薬の薬局での入手を実現する市民プロジェクト」がまとめているこちらのページをぜひチェックしてみてください。

パブリックコメントに何を書けばいい?
パブリックコメントに何を書けばいい?
提供写真(©️緊急避妊薬を薬局でプロジェクト)

つい最近私は、日本で少し前まで「家庭科は女子だけ、技術科は男子だけ」だったことを知ってすごく驚きました。

次の世代の女の子たちには「緊急避妊薬も昔は違ったらしいよ」と驚いてほしいし、ちゃんと声を上げたら変わる社会だよねって繋いでいきたい。

1月31日(火)までパブリックコメント募集中なので、良かったら一緒に書きましょう!

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