『AAA』與真司郎さん、ゲイとカミングアウト「本来の自分を分かってもらい、みんなと距離が縮まることを願ってます」

『AAA(トリプル・エー)』の與真司郎さんが、自身のセクシュアリティを公表し、「僕と同じ境遇に置かれている方々にも、勇気を持つきっかけにしてもらいたかった」と思いを伝えました。
ゲイだとカミングアウトした『AAA』の與真司郎さん
ゲイだとカミングアウトした『AAA』の與真司郎さん
提供写真

ダンス・ボーカルグループ『AAA(トリプル・エー)』の與真司郎(あたえ・しんじろう)さんが7月26日、東京都内で開いたイベントで、ゲイであることをカミングアウトした。

長い間、自分のセクシュアリティを受け入れられなかったこと。

自分がゲイだと認めたら、世の中が自分のことをアーティストとして認めてくれないのではないかと、恐怖を感じることもあったことーー。

これまでの半生で感じてきた葛藤を打ち明けた上で、「本来の自分をわかってもらい、ファンのみなさんとの距離が縮まることを願っています」と語りかけた。

◆「自分は一人ではないということを、わかってほしかった」

「これから僕が話すことは、みなさんが期待して、望んでる内容ではないかもしれません。中には、理解するのに時間がかかる方もいると思います。でも、これから僕が話すことがきっかけで、少しでも、このことについて理解が深まり、世界が変わってくれることを、願っています」

東京都渋谷区のLINE CUBE SHIBUYAで開いたイベントで、與さんはこの日、こう切り出した上で、手紙を読み上げ、思いを伝えた。

「僕自身、長い間この不安と、たたかってきました。本当に何年もの間、自分の一部を、受け入れることができませんでした。それでも、さまざまな葛藤を乗り越え、今やっと、みなさんにこのことを、打ち明ける決意ができました。それは僕が、ゲイであるということです」

「カミングアウトを決意するまでに、すごく時間がかかりました。自分ですら、自分のセクシュアリティを、受け入れることができませんでした。もし自分が、ゲイだということを認めてしまったら、今度は、世の中が自分のことを、アーティストとして、認めてくれないのではないかと、恐怖を感じることもありました」

「でも、悩みに悩んだ結果、ファンのみなさんをはじめ、僕が大切にしている全ての人達、そして僕自身のためにも、本当のことを受け入れ、それをしっかりとみなさんに伝えることが、僕なりの誠意だと思いました。そして、僕と同じ境遇に置かれている方々にも、勇気を持つきっかけにしてもらいたかった。自分は一人ではないということを、わかってほしかったんです」

◆辿り着いた3つ目の選択肢

イベントでは、カミングアウトを決意する前は、2つの道だけしかないと思っていたことも明かした。

「1つ目は、本来の自分を受け入れることなく、エンターテイメントの世界に居続けること。もう1つは、エンターテイメントの世界からしりぞいて、世間から隠れて、ひっそりと暮らすことでした」

だがたくさん考えた上で、3つ目の選択肢にたどり着いたという。それは、ゲイということを公表した上で、エンターテイメントの活動を続けるということだ。

「ありのままの自分で生きていく事で、大好きなエンターテイメントの活動を、諦めたくなかったんです」

「僕はこれを機に、全く違う人間になってしまうわけではありません。むしろ、このことを打ち明けたことによって、本来の自分をわかってもらい、ファンのみなさんとの距離が縮まることを、願っています」

◆「ゲイだからといって、これまでの自分が変わってしまうわけではない」

手紙では、10代LGBTQ当事者の48%が自殺を考えたことがあるという調査結果にも触れ、こう訴えた。

「例えば、自分の性の対象が、同性や、どちらの性にも向いているというだけで命を絶つ必要があるのでしょうか。理解されずに、自分のことを責め続けて、最終的に耐えられずに、追い込まれてしまう方が、これだけ多く存在するということを、一人でも多くの方に、知ってもらいたいです」

「様々な固定概念によって、一人で抱え込み、悩んでいるLGBTQ+の方達が、世界中にいます。ハラスメント、いじめ、世間的なプレッシャーに苦しみ、それによって、精神的にダメージを受ける人も、決して少なくはありません」

その上で、今の率直な思いを語った。

「そして、もう一つわかっていただきたいのが、ゲイだからといって、これまでの自分が変わってしまうわけではない、ということです。僕は、今の自分のままで幸せです。これからも変わらず、與真司郎として、生きていきます」

與さんは手紙を読み終わった後、『AAA』のメンバーが会場に駆けつけてくれたことも公表。メンバーと「愛してるよ」「大好きだよ」と掛け合う場面もあった。

◆與さんが読んだ手紙全文

これから僕が話すことは、みなさんが期待して、望んでる内容ではないかもしれません。中には、理解するのに時間がかかる方もいると思います。

でも、これから僕が話すことがきっかけで、少しでも、このことについて理解が深まり、世界が変わってくれることを、願っています。

今日、沢山のファンのみなさんが、ここに参加することを希望していたのに、
席に限りがあり、来られなかった方も沢山出てしまったと、スタッフさんから聞きました。

これから話すことを、SNSや、プレスリリースを通して、発表するという選択肢も、正直ありました。でも、今日はどうしても、みなさんの顔を見ながら、直接伝えるべきだと思い、このような形をとらせてもらいました。

僕自身、長い間この不安と、たたかってきました。本当に何年もの間、自分の一部を、受け入れることができませんでした。それでも、さまざまな葛藤を乗り越え、今やっと、みなさんにこのことを、打ち明ける決意ができました。

それは僕が、ゲイであるということです。

みなさん、今すごく驚いていると思うし、でも最後まで聞いてください。

カミングアウトを決意するまでに、すごく時間がかかりました。自分ですら、自分のセクシュアリティを、受け入れることができませんでした。もし自分が、ゲイだということを認めてしまったら、今度は、世の中が自分のことを、
アーティストとして、認めてくれないのではないかと、恐怖を感じることもありました。

でも、悩みに悩んだ結果、ファンのみなさんをはじめ、僕が大切にしている全ての人たち、そして僕自身のためにも、本当のことを受け入れ、それをしっかりとみなさんに伝えることが、僕なりの誠意だと思いました。

そして、僕と同じ境遇に置かれている方々にも、勇気を持つきっかけにしてもらいたかった。自分は一人ではないということを、わかってほしかったんです。

カミングアウトを決意する前は、2つの道だけしかないと思っていました。

1つ目は、本来の自分を受け入れることなく、エンターテイメントの世界に居続けること。もう1つは、エンターテイメントの世界からしりぞいて、世間から隠れて、ひっそりと暮らすことでした。

でも、沢山沢山考えて、3つ目の選択肢に、たどり着きました。それは、ゲイということを公表した上で、エンターテイメントの活動を続けるということです。
ありのままの自分で生きていく事で、大好きなエンターテイメントの活動を、諦めたくなかったんです。

僕はこれを機に、全く違う人間になってしまうわけではありません。むしろ、このことを打ち明けたことによって、本来の自分をわかってもらい、ファンのみなさんとの距離が縮まることを、願っています。

自分がゲイであるということを、明確に理解するまでには、時間がかかりましたが、今振り返れば、昔からその認識はあったような気がします。僕が子供の頃、テレビでは、LGBTQ+のことを、面白おかしく取り扱っている時代でした。

もちろんその頃は、今みたいにインターネットが普及していなかったので、自分のセクシュアリティーについて、疑問を持ったとしても、そのことについて知る機会が、ほとんどありませんでした。だからその頃は、“自分が間違っているんだ”、“自分はおかしいんだ”と思っていました。誰かにこのことを相談することもなく、自分の感情を押し殺していました。

そんな中、14歳でエンターテイメントの世界に入り、毎日仕事が忙しく、気付いたら自分の疑問や悩みが、多忙な日々にまぎれていきました。その頃から、本当にたくさんの方々に、支えてもらってはいましたが、それでもどこかで、自分は一人ぼっちかのような感覚でした。

そんな生き方をしているうちに、このままではメンタルにも影響が出てくると思い、ある時、海外に移住することを、考え始めるようになりました。

海外に行き始めた頃の話ですが、ある日、男性同士が街中でキスをしているのを見て、僕は衝撃を受けました。周りの人達で彼らの行動を気にしている人は、誰もいませんでした。その時初めて、自分は1人じゃないんだと、どこかホッとしました。LGBTQ+の人でも、堂々と幸せになる道はあるんだと、希望が湧いてきました。

完全に自分のセクシュアリティーを受け入れるには、そこからさらに時間がかかりましたが、LGBTQ+であろうと、どんな人間でも、“幸せに自分らしく生きる権利があるんだ”、ということに、気付かされました。

だから僕も、自分らしく生きていこうと、この出来事がキッカケで、自分と向き合っていくようになりました。

LGBTQ+の僕達も、同じ人間です。他の人と違う扱いをされたくありません。僕でさえ、このことを受け入れるまでに、時間がかかりました。それと同じように、みなさんにとっても、時間がかかることだと思います。

日本では、あまりオープンにLGBTQ+について、話し合うことも少ないと思うので、さらに難しいことなのもわかっています。僕自身も、今日カミングアウトをしたばかりなので、これからも、LGBTQ+について学ぶことが、たくさんあると思っています。

様々な固定概念によって、一人で抱え込み、悩んでいるLGBTQ+の方達が、世界中にいます。ハラスメント、イジメ、セケン的なプレッシャーに苦しみ、それによって、精神的にダメージを受ける人も、決して少なくはありません。

僕がとある記事を読んで、得た情報なのですが、LGBTQ+と自認している方のうち、48%は、自殺について考えたことがあり、さらに、そのうちの12%は、実際にそれを行動に移していた、という統計を目にしました。

例えば、自分の性の対象が、同性や、どちらの性にも向いているというだけで
命を絶つ必要があるのでしょうか。

理解されずに、自分のことを責め続けて、最終的に耐えられずに、追い込まれてしまう方が、これだけ多く存在するということを、一人でも多くの方に、知ってもらいたいです。

今日僕がこの発表をしたことに、驚いている方もいると思います。受け止めるのも、難しいと思う方もいるでしょうし、受け止めるのに、時間がかかることも、理解しています。

今、たくさんの情報を、一度に発信しているので、それも当然のことだと思います。

母にカミングアウトをした時、幸い、母はすぐに僕のことを受け入れてくれました。しかし、公にカミングアウトをしたいと話した時に、母は、僕がひどいバッシングを、受けるのではないかと心配し、反対されてしまいました。でも、時間が経つにつれ、母もLGBTQ+の課題について、一緒に考えてくれるようになり、僕が公にカミングアウトをすることにも、賛成してくれました。

僕のウェブサイトを見ていただくと、LGBTQ+に関するリンクが、いくつか貼ってあります。これを機に、知らないところで苦しんでいて、助けを必要としている人達がいるということを、多くの方に知ってもらいたいと思いました。

LGBTQ+の方達の多くは、セクシュアリティーを理由に、いじめられたり、平等でない扱いを受けています。でも、希望はあると思いますし、世界は変わってきていると思います。何事も、ネガティブなことでも、みんなで力を合わせれば、ポジティブなことに変えていけると思います。

もし、この会場の中にも、自分のセクシュアリティで悩んでいる方がいたら、
僕のホームページを是非ご覧下さい。あなたは絶対に一人じゃない。僕も、あなたのことを全力で応援します。同じ悩みを抱えていた、一人の人間として、LGBTQ+の方々には、胸を張って、堂々と生きていってほしい。

ただ、カミングアウトをするか、しないかは、個人の選択の自由です。もしも、カミングアウトをしたいと思っているならば、僕もそうしましたが、周りにサポートしてくれる方を見つけてからのほうが、心強いと思います。

今は誰もいないと思っていても、支えてくれる方は、“必ずいます”。僕も今となっては、周りに応援してくれる人がたくさんいますが、それも長い時間をかけて、築き上げてきたものです。

僕もそれを踏まえた上で、今日、ここでカミングアウトをしています。どんなセクシュアリティだとしても、ゆっくり時間をかけて、まずは自分を大切にしてあげて下さい。自分を愛することが一番です。

そして、もう一つわかっていただきたいのが、ゲイだからといって、これまでの自分が変わってしまうわけではない、ということです。僕は今の自分のままで幸せです。これからも変わらず、與真司郎として、生きていきます。

そして最近僕は、アーティスト活動を再開することについて考えるようになりました。

AAAが活動休止になって、自分はソロアーティストとして、活動を続けていく意味はあるのかと、悩んだ時期もありました。自分はアーティストとして、どんなメッセージを発信していけば良いのかが、わからなくなってしまったからです。

でも、LGBTQ+の課題にかかわらず、悩んでいる人を、一人でも多く救いたい、という気持ちがありました。そして、ありのままの自分を打ち明けようと、決意したことによって、発信したいメッセージが明確になりました。

本来の自分を表現しながら、聴いてくれる人を幸せにするということが、
僕のアーティストとしての一番の目標です。

そこで一つ、発表があります。アーティスト活動を続けていこうと、決意したことによって、今回、新曲をレコーディングしました。タイトルは“Into The Light”です。日本語では、「新たな光の指す方へ」という意味です。世界中にこの曲が届いたらいいな、という思いを込めて、歌詞は全て英語になっていますが、日本語訳も考えました。後ほど、ここに来てくれたみなさんにいち早く聞いていただきたいと思っています。

そして、この曲の売り上げの一部を、日本のLGBTQ+の支援団体に寄付します。
“Into the Light”を通して、僕の経験だけではなく、僕と同じ境遇に置かれている方についても、理解を深めるキッカケになってくれれば嬉しいです。

そして、LGBTQ+の方々に限らず、みなさん、一人一人の経験と重ねあわせて、聴いていただきたいと思っています。音楽は世界共通です。

辛いトラウマを乗り越えた経験や、今実際、人生で葛藤している方々など、たくさんいると思いますが、僕がメンタルヘルスについて発信することで、世界のどこかで、勇気づけられる人がいてくれたら良いなと、心の底から思っています。

人生良い時もあれば、上手くいかない時もあります。それでも、諦めずに進み続ければ、新たな光の指す方へと、導かれていくと思います。僕も正直、この先どうなるのか、自分でもわかりません。

でも、一度きりの人生後悔したくないんです。世界がもっと明るくなり、どんな人でも、生きやすい場所になってくれることを、願っています。

そして、最後にもう一つ、大きな発表があります。実は今、ハリウッドで、僕の人生についてのドキュメンタリーが、制作されているところです。

プロデューサーは、”グリーンブック”や”メリーに首ったけ”で知られる、ピーター・ファレリーと”タイガーキング”で知られる、フィッシャー・スティーブンスです。

2人とも、アカデミー賞などを受賞している、偉大な方々です。彼らを始めとした、ハリウッドで活躍してる方達が、僕の人生経験や、これからやりたいと思っていることに、共感してくれました。

この機会に、感謝すると共に、自分ができることを精一杯、取り組みたいと思います。

本日はお時間をいただきありがとうございました。最後に、ずっとそばで応援してくれていた、家族、友達、スタッフのみんなも本当にありがとう。そして、今日駆けつけてくれた、メンバーもありがとう。

みなさんには本当に感謝しています。それでは僕からの話はこれで以上になります。またみなさんに会えることを願っています。

<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>

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