「認知症のリスクが高い」性格の特性が明らかに。リスク軽減のため何ができる?【米研究を医師が解説】

研究者たちは、認知症の診断と性格の5大特性(協調性、解放性、外向性、誠実性、神経質傾向)を比較。リスクが高かったのは...
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Dobrila Vignjevic via Getty Images
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性格が記憶に影響を与える可能性はあるのだろうか?

アルツハイマー協会が11月に公開したジャーナル「アルツハイマーと認知症」に掲載されたメタ分析から、特定の性格特性と認知症のリスクとの間に関連性があることが明らかになった。

8つの小規模な研究から得られたこのデータは、49歳から81歳までの合計4万4531人を対象にしたもので、うち1703人が認知症を発症した。参加者は性格評価を受け、死後に脳の検査を受けた。

研究者たちは、認知症の診断と性格の5大特性(協調性、解放性、外向性、誠実性、神経質傾向)を比較。また、ポジティブな感情(喜び、熱意、自信など)をより多く持つ人たちと、ネガティブな感情(怒り、緊張、恐怖など)をより多く持つ人たちの診断も比較した。

この研究には参加していない医師2人が、研究結果を紹介・解説した。

リスクが高かったのは...

ニューヨーク大学の医療研究施設ランゴーンヘルスで神経学の臨床助教授を務めるジョエル・サリナス医師は、神経質の度合いが高くネガティブな感情を持つ人たちは「長期的に認知症を発症するリスクが高かった」という結果を紹介した。

そして、「誠実性、外向性、ポジティブな感情が低い人々は、リスク増加と関連していた」と加えた。

反対に、ポジティブな感情や外向性、誠実性を含む性格特性を持つ人々は、認知症を発症するリスクが低いことが明らかになった。外向性のある人々はより充実した社会生活を送り、他人と一緒にいることからエネルギーを得ている。誠実な人は、責任感があり、目標に向かって励むと考えられている。

サリナス医師によると、研究者たちは、性格特性と認知症と診断されるリスクとの間に関連性を見つけたが、性格と基礎疾患の証拠との間に明確な関連性は見つけられなかったという。

したがってこの研究は、性格と認知症に相関性がある可能性があるという結果ではあるが、性格特性が認知症の直接的な原因であるかどうかはまだ分かっていない。

「これらの関連性が存在しないわけではありません。それは、この研究の情報量が限られていたために研究がそれを見つけることができなかった、あるいは、認知症のリスクが高い人々が多かった理由を説明する他の何らかの要因があるということです」とサリナス医師は述べた。

また、ピッツバーグ大学アルツハイマー病研究センターのリディ・パティラ医師によれば、この研究は認知症の臨床診断を測定したが、それがアルツハイマー病なのか一般的な記憶の問題なのかは不明であるという。

もう1つの制限として、参加者の脳の変化を測定した研究の第2部は、第1部よりも参加者が少ないデータに基づいていたとサリナス医師は述べた。

認知症リスクが高い性格を持つ人は、特定のリスク要因を持っている可能性がある

パティラ医師は、神経質やネガティブな感情と関連した何らかの媒介因子が、人々を認知症のリスクにさらす可能性があると述べる。

例えば、神経質や不安を感じる人々は、そうでない人々よりも睡眠に問題を抱えやすい傾向がある。「睡眠は、炎症とアルツハイマーのリスクを低下させるために大切な脳の老廃物排出に重要なのです」とパティラ医師は話し、「そのため、将来の研究がそれを示すかもしれません」と加えた。

さらに、ハッピーな人々やポジティブな人々、外向的な人々と比較して、ネガティブな感情を持つ人々は孤立している可能性が高く、うつ病の発生率も高いとパティラ医師は述べる。

うつ病は、認知症リスクを低下させるために重要な食事や運動といったライフスタイルの習慣に影響を与える可能性がある。

また、サリナス医師は、ネガティブな感情や不安を持つ人々は、認知症を診断するために医師が使用した認知テストで良い結果を出すことができなかった可能性があると述べた。これにより、その結果に基づいて診断が増えた原因となったかもしれない。(テストなどの前に不安やネガティブな気持ちを抱いていると、落ち着いて幸せなときに比べて良い結果を出すことができないのと同様だ)

もし神経質な性格やネガティブな感情を持っていても、焦る必要はない

上記で述べたように、この研究は性格と基礎疾患の証拠との間に直接的な因果関係を見つけることはできなかった。したがって、もしネガティブな感情を多く持っていたり、神経質であったりしても心配する必要はない。

代わりに、この研究を学びの機会として受け取るべきだ。

パティラ医師は、運動や良い睡眠、栄養価の高い食事を心がけることで、自分自身をケアすることを提案する。

ただし、これには努力と規律が必要であり、すべての人にとって簡単なことではない。サリナス医師は、もし難しければ、さらなる助けを求めて医師やセラピストに連絡を取ることを勧めた。

ライフスタイルを変えることは認知症リスクを減らすことに役立つ

「リスクを軽減するためにできることは多い」とサリナス医師は話す。

「健康的なライフスタイルを維持することで、これらの病気を発症しない、または発症が遅くなる可能性が高まります」

リスクを減らすためにサリナス医師が推奨する行動は:

・定期的に運動する

「定期的に運動する人は、あらゆる種類の病気のリスクが低いのです。運動は非常に重要で、時間と努力を投資する価値があります」

・健康的な食事をする。

・十分な睡眠をとる

「睡眠障害、例えば睡眠時無呼吸症候群などがある場合は治療を受けることが重要です」

・心と血管の健康を維持する

高血圧、高コレステロール、糖尿病などの病気を管理することが重要だ

・社会的な支援システムを持つ

「必要なときに支援を得られる良好な社会的なつながりを持つことは、プラスであると考えられています」

・精神的に刺激的な活動に参加する

「新しいことを学ぶことで、新しい脳細胞の接続を作り出す可能性が高まります」

・自転車などの活動中にヘルメットを着用する

サリナス医師は、認知症リスクが遺伝だけによるものだというのは一般的な誤解であると指摘。実際には「大多数の認知症は遺伝だけによるものではない」と述べる。

これらのリスク要因を軽減し、可能な限り早い段階で脳の健康を維持する行動を取ることで(遅すぎるということはない)、保護要因を維持できるとサリナス医師は話す。

上記のアドバイスに従っても認知症を発症しない保証はないが、やらないよりはやった方が良い経過を辿るだろうととサリナス医師は述べた。

サリナス医師とパティラ医師はこの研究には参加していない。

ハフポストUS版の記事を翻訳・編集しました。