「地震ごっこ」をする子どもたちに驚かないで。災害時に私たちの心に起こること。【能登半島地震】

小澤さんによると、震災時に子どもは「地震ごっこ」など、起こったことを再現するような遊びをすることがある。子どもの心のケアに必要なこととは?

元日に発生した能登半島地震や1月2日の航空機事故など、2024年は初めから大変な災害や事故に見舞われています。また、世界では大規模な紛争も続いています。

被災地や事故の関係者はもちろん、ニュースでその様を目撃した大勢の人々も気持ちの晴れない日々を過ごしているかもしれません。

子どもの心に関わる専門家たち、緊張の日々を強いられる大人と子どもの心と身体に起こるかもしれない変化や、対処法、子どもとの関わり方をまとめて発信している。

児童精神科医の小澤いぶきさんによると、震災時に子どもは「地震ごっこ」など、起こったことを再現するような遊びをすることがある。大人はギョッとしてしまうかもしれないが、それも自然な反応の一環であり、基本的には止めずに見守ってほしいという。

一方で、痛みの大きいパターンや終わり方を繰り返している場合など注意してみたほうがいい遊び方もある。小澤さんに聞いた。

雨が降る中、輪島朝市の焼け跡には花が供えられていた。手前は安否不明者の捜索に向かう自衛隊員=1月10日午前、石川県輪島市
雨が降る中、輪島朝市の焼け跡には花が供えられていた。手前は安否不明者の捜索に向かう自衛隊員=1月10日午前、石川県輪島市
時事通信社

ーー悲惨なことが次々に発生しています。どんな影響があるでしょうか?

元日から続く地震や、空港での事故など、今年は多くの人・集団が普段とは違う災害や危機を体験したり、みたりするという状況が起こっています。このような時、個人にも、集団にも、危機に対しての反応が起こっていたり、痛みが生まれていたりすることがあります。

集団全体にいつもと違うことが起こっている時、お子さんによっては、時に、何か聞きたかったり、気持ちの揺れがあっても、周囲の状況をみているからこそ、それを周囲に表現することが難しくなることもあります。

ーー直接、不安な気持ちを表現する以外に、子どもから発せられるサインはどのようなものがあるでしょうか?

大人も子どもも、気持ちが落ち着かない、イライラする、集中できない、眠れない・すごく眠くなる、疲れやすい、楽しめない、自分を責めるなどは、いつもと違うことが起こったり、危機だと感じたりしたときに自然に生じる大切なこころのサインでもあります。

子どもの場合は、言葉で表現しなくても、さまざまなことを感じていることも少なくありません。自分の感じたことを、例えば、「地震ごっこ」などのごっこ遊びをするなど、さまざまな方法を通してその子なりの方法で表現したり、工夫してなんとかしようとしたりしていることがあります。

また、一度話したことを撤回したり、二転三転したりということもあります。それらはとても自然なことです。

できるだけやり慣れた日課を続けること、また、子どもにとって遊びはとても大切な時間です。その場でできる遊び(しりとりやごっこ遊びなどその子がやりたいもの)も含めて、遊びの時間を少しでもとれるといいかもしれません。

地震ごっこなどの遊びを通して、子ども自身は起こったことに対処していることが多く、無理に止めずに見守ってみてください。

ただ、例えば、とても悲しい終わり方のごっこ遊びを何度も繰り返したり、同じパターンを繰り返して本人も苦しかったり、しんどそうなときには、例えば、「なんとかなったね、助かった」など、子どもと一緒に肯定的な物語の終わり方や道を一緒に考えてみていただけるといいかもしれません。

また、子どもと一緒に、そのごっこ遊び以外に本人が少しリラックスできたりほっとできる他のことをやってみたりするのも一つの方法です。

ーー被災地やその周辺では、するべきことがたくさんあって、子どもに時間をかけるのが難しい現状もありますね。

本当にそうですね。まずは、ご自身の生活のことや安全を第一にと思います。

子どもの気持ちを聞いて一緒に方法を考えたり、対処することは、子どもにとってとても大切で、安全につながる一つの可能性でもあります。

しかし、生活再建や安全確保など、大人も生きていくために必死な状況では、それが難しいこともあるかもしれません。

そのため、子ども自身が、自分のタイミングで、自分の好きな形で手に取れるコミュニケーションの媒体として、また子どもと共にその人のことを考える一つのコミュニケーションの媒体として、活用できるものがあればと思い、子どもと共有できるものを作成できたらと思いました。

今は文字だけですが、今後はイラストなど言語以外の表現や、キャラクターを活用するなど引き続きアップデートしていきたいと考えています。

認定NPO法人PIECESがまとめた対処法はこちら

小澤いぶきさんプロフィール

児童精神科医 / 精神科専門医 / 認定NPO法人PIECES 代表理事 / 京都大学医学研究科 研究協力員 / こども家庭庁アドバイザー

精神科医を経て、児童精神科医として複数の病院で勤務。トラウマ臨床、虐待臨床、発達障害臨床を専門として臨床に携わり、多数の自治体のアドバイザーを務める。さいたま市の子育てインクルーシブモデル立ち上げ・プログラム開発に参画2017年3月、世界各国のリーダーが集まるザルツブルグカンファレンスに招待を受け、子どものウェルビーイング達成に向けたザルツブルグステイトメント作成に参画。PIECESの活動を通じて、人の想像力により、一人ひとりの尊厳が尊重される寛容な世界を目指している。

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