「ストパー強制」「ブレイズを取らないと成績下げる」外国ルーツの子どもたちの「髪型」と学校指導の調査、東京弁護士会が結果報告

東京弁護士会の調査では、「黒髪・直毛」ではない外国ルーツの子どもたちが、学校で特定の髪型を強制されるなどのケースがあることが明らかになった
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Maskot via Getty Images

「ストレートパーマをかけ、みんなと同じにできるならそうしろと言われた」

「ブレイズで行ったら、この髪型は学校に必要ないよね?と担任に言われた」

東京弁護士会は1月19日、外国にルーツを持つ子どもたちの「髪の毛」にまつわる学校での体験に関するアンケート結果を、オンライン上のシンポジウムで公表した。外国にルーツのある子どもたちが、学校で特定の髪型を強制・禁止されたり、髪を保護するケアが認められなかったりする事例が報告された。

同会は2023年5〜6月、外国にルーツを持つ子どもたちが、日本で一般的とされる「黒髪・直毛」でないために学校で様々な困難に直面していることから、実態を把握するために調査を実施。子ども本人や保護者から体験を募り、129件の回答を得た。

回答したのは、外国にルーツを持ち、日本国内の小学校〜高校に通学した経験のある本人が61人、保護者が68人だった。本人の所属別では小学生〜高校生は6割、高校卒業以上は4割だった(保護者の場合、子どもの所属を回答)。

「ストレートパーマや染色をしている」と答えた34人に理由を複数回答で尋ねたところ、「周りから目立ちたくないから」(23人)、「毎朝の手入れが楽だから」(22人)の順で多かった。一方、自由記述では「地毛証明書の提出を避けるため」「髪型を理由に悪質な嫌がらせを受けていたから」といった回答があった。

「髪の毛に関して学校でどんなルールがあるか」(複数回答)という質問に対し、染色や特定の髪型の禁止または強制に関する回答が多数寄せられた。

「カラー禁止(黒以外)」が最も多く52.7%。次いで「カールパーマの禁止」が47%、「ツーブロック禁止」「カラー禁止(黒)」がいずれも32.2%だった。

このほか、ストレートパーマの禁止または強制、結び方(一つ結び・二つ結び・三つ編み)の強制、カラー強制(黒)という回答もあった。

調査結果を報告した有園洋一弁護士は、「ストレートパーマを強いるなど髪型を強制する学校側の対応は、『黒髪・直毛が前提だ』という考え方ありきとみられ、同化の強要に当たる」と指摘した。

さらに、「中学生らしい髪型」「本学校の生徒としてふさわしい髪型」などはっきりしない表現が使われたルールがあるとの回答が寄せられたことについて、有園弁護士は「学校側の裁量でいくらでも(可否を)決められてしまい、ふわっとした曖昧な概念が今も残っていることは問題だ」と述べた。

一方、「髪の毛に関するルールは特にない」という回答もあった。

「強制をなくして」「自由な髪型を認めてほしい」

髪型に関して学校からされて嫌だった対応を自由記述で尋ねたところ、次のような回答が寄せられた。

「ストレートパーマをかけ、みんなと同じにできるならそうしろと言われた」

「ブレイズをいますぐ取らない限り、授業態度や生活態度が悪いという理由で成績を下げると脅された」

「ブレイズで行ったら、この髪型は学校に必要なの?必要ないよね?と小1の時担任に言われた」

学校に求めたい対応として、「髪型の強制をなくす」「髪質や髪色に関する校則は無くしてほしい」といった自由な髪型を認めることや、整髪料の使用許可、「(髪を保護する)プロテクティブスタイルの髪型を認めてほしい」などの声が寄せられた。地毛証明書の廃止を求める訴えも複数あった。

このほか、「多様性をまずは大人が認めるという姿勢を見せてほしい」「個性を尊重してほしい」「子どもの自尊心を妨げるような校則や指導をなくす」「子どもの外見に対する言及は注意してほしい」といった声もあった。

「プロテクティブスタイルで精神的・物理的に楽になる」

シンポジウムでは、アフリカ系専門のヘアスタイリストで、美容室を経営する名嶋恵美子さんが、アフリカ系にルーツがある人の髪質の特徴を紹介した。

名嶋さんは、ストレートヘアに比べ、アフリカ系のミックスルーツの人の髪はカールがかかって絡まりやすく、櫛でとかしにくいことや、乾燥しやすいなどの特徴があると説明した。髪の毛を一つや二つにまとめる場合、強く引っ張るため牽引性脱毛症になることも多いという。

こうした特徴があることから、アフリカ系の人が髪をまとめる場合はコーンロウやブレイズ、ツイスト、ロックスといった髪を保護できる「プロテクティブスタイル」と呼ばれる髪型にすることが一般的だとした。

このヘアスタイルのメリットとして、髪のボリュームを抑えられる▽髪をまとめやすい▽頭皮ケアがしやすい━などがあるという。また、スタイリング剤を使用するだけで髪のボリュームが半減することもあると紹介した。

名嶋さんは「子どもたちが自分の髪質に合ったプロテクティブスタイルにすることで、髪に対する悩みやケアに時間を割かなくて良くなり、その分他のことに時間を割り当てられるようになります。髪を編んでまとめることで、物理的にも精神的にも楽になる」と述べた。

子どもの希望を認めるケースも

外国にルーツを持つ子どもたちが望む髪型での通学を、学校側が認めているケースもある。調査では、髪型に関してルールや指導がない事例以外にも、何らかのルールがある場合でも、入学前に学校側に相談したことで児童生徒の希望が叶ったという事例も寄せられた。

「小学校入学前に、コーンロウにしないと帽子がかぶれないので、コーンロウにしても良いか聞いたところ、特に問題ないとの返答をもらった」

「中学入学前に、子どもの髪質や髪型について、日常的にコーンロウをしていることを伝えた。学校側からは、すぐに理解を示す言葉があった」

調査を担当した林純子弁護士は、外国にルーツがある人にとって髪の毛や髪型には生まれ持った身体的特徴としての側面と、文化的継承としての側面があり、「いずれもアイデンティティに直結するものだ」と強調。

「『髪がカールしているからストレートにしなさい』といった指導は、子どもにとってルーツを否定されることにつながる。本人の髪質に合った、希望する髪型での通学が認められるべきだ」と呼びかけた。

<取材・執筆=國﨑万智(@machiruda0702)>

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