ガザ攻撃に声を上げた映画監督への批判は「イスラエルの軍事行動から注意をそらす危険なもの」。著名俳優らが支持表明

ユダヤ系のジョナサン・グレイザー監督が、アカデミー賞の受賞スピーチでガザに言及。その後業界内で批判が起きていましたが、「言論の自由を抑圧する」などと反論する文書が発表されました。
ジョナサン・グレイザー氏(左)とホアキン・フェニックス氏(右)
ジョナサン・グレイザー氏(左)とホアキン・フェニックス氏(右)
Getty Images

3月に行われたアカデミー賞の受賞スピーチで、パレスチナ・ガザ地区への攻撃に声をあげた映画監督のジョナサン・グレイザー氏を支持する公開文書が、4月5日に発表された。エンタメ業界紙のVarietyなどが報じている

「ジョーカー」などで知られる俳優のホアキン・フェニックス氏や、「キャロル」監督のトッド・ヘインズ氏など、ユダヤ系の俳優や映画制作者などのクリエイター151人が署名した。

グレイザー氏のスピーチをめぐっては、業界内で批判も広がったが、そうした動きは、イスラエルによるガザ地区攻撃から「注意をそらす危険なもの」だと指摘した。

「占領を正当化を拒む」スピーチの内容とこれまでの経緯は?

アカデミー賞で国際長編映画賞を受賞した『関心領域』は、第2次世界大戦中、ナチス・ドイツがユダヤ人を虐殺したアウシュビッツ強制収容所の隣に住む、収容所の所長とその家族の暮らしを描いた作品だ。

本作の監督で、自身もユダヤ系であるグレイザー氏は受賞スピーチで、同作について「人間性の喪失が最悪の事態を招くということを伝えている」と述べた上で、こう続けた。

「私たちは、ユダヤ人とホロコーストを乗っ取って、罪のない多くの人々を巻き込んだ紛争の原因となった占領を正当化しようとするのを拒む人間として、ここに立っています」

「10月7日のイスラエルの人々、現在攻撃されているガザの人たち――すべてが人間性の喪失による犠牲者です。私たちはどのように抵抗すればいいのでしょうか」

ハリウッドでは10月以降、ガザでの即時停戦を求める俳優らが解雇されるなどの動きがあった。アカデミー賞の壇上で、ガザについてスピーチした著名人はほとんどいない中、グレイザー監督の訴えは国内外で注目を集めた。

しかしアカデミー賞の授賞式からおよそ1週間後、グレイザー監督のスピーチを、「世界中で反ユダヤ主義が助長される」などとして批判する公開文書が、Verietyで報じられた。この文書には、ハリウッドのユダヤ系クリエイター1000人以上が署名したとされている。

「言論の自由を抑圧する風潮を助長」

今回のグレイザー監督のスピーチを支持する公開文書では、「私たちは同業者が彼の発言を誤解し、非難しているのに憂慮している」とした上で、こう抗議した。

「同業者のグレイザーへの攻撃は、すでに3万2000人以上のパレスチナ人を殺害し、何十万人もの人々を飢餓の瀬戸際に追いやるという、イスラエルの激化する軍事行動から注意をそらす危険なものです」

また、声をあげた人への攻撃は「この業界に沈黙を強い、本来この業界が大切にすべき言論の自由や異議を唱えることを抑圧する風潮を助長する」と指摘。グレイザー監督のほか、作家のトニー・クシュナー氏や映画監督のスティーブン・スピルバーグ氏などがパレスチナの民間人の殺害を批判していることにも言及し、「私たちは誰しも、反ユダヤ主義を煽るなどと不当に批判されることなく、同じように抗議ができるはずだ」と訴えた。

声明では、「私たちは、すべての人質の安全な帰還と、ガザへの支援物資の即時の提供、そして、イスラエルによるガザへの継続的な爆撃と包囲の停止を求めるすべての人々を支持します」ともつづられた。

NGO団体への攻撃。食料不足がさらに深刻化する恐れ

ガザ地区の保健当局によると、2023年10月7日以来、2024年3月までに3万人を超えるパレスチナ人が殺害された。

4月1日には、ガザ地区で食料支援にあたっていたNGO団体「ワールド・セントラル・キッチン」のスタッフ7人が、イスラエル軍の攻撃で死亡。人道支援関係者らの安全が危惧され、活動中断によりガザの食料不足がさらに深刻化する恐れが指摘されている。
※この記事はハフポストUS版を翻訳・編集しています。

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