「育児は女性だけの仕事ですか?」スウェーデンの育休パパたちの写真が問う

スウェーデンの育休パパたち、どんな子育てをしてる?

「育児は女性だけの仕事ですか?」

スウェーデンの写真家、ヨハン・ベーヴマン氏は、写真集「Swedish Dads(スウェーデンのパパたち)」のあとがきでこのように問いかけている。

「Swedish Dads」を撮影した写真家のヨハン・ベーヴマン氏、ストックホルムで
「Swedish Dads」を撮影した写真家のヨハン・ベーヴマン氏、ストックホルムで
Yuriko Izutani/HuffPost Japan

写真集は、6カ月以上育児休業を取得した父親たちに焦点を当てたもの。11月2日に発表された世界経済フォーラム(WEF)のジェンダーギャップ指数で、世界5位となったスウェーデン(日本は114位)は、充実した育児休業制度で知られる。

育休を取得した男性の割合も90%に上るといい、わずか3%の日本との差は大きいが、それでも写真家は「まだまだ道半ば」と考えてこの写真集を制作したのだという。ハフポスト日本版の取材に答えた。

ーー撮影を始めた動機は何でしょうか?

私には2人の息子がいます。1人目の子が生まれた時に初めて「よい父親、両親になるとは」ということについて考えるようになりました。そして、育児休業を取得することにしました。

ヨハン・バーヴマン

フレードリック(34歳)エンジニア

最初の4カ月は、息子のオッシアンのために配偶者と同時に育児休業を取得、その後、半々に分担して交互に取得している。

「私たちは子育ての当初から育児休業の取得と仕事を交代で行ったので、育児休業がつまらなくなったり退屈になったりすることは決してありませんでした。私たちは2人とも成長の早い段階全般で子供と一緒にいることが重要だと考え、そのため最初の4カ月は育児を一緒に行い、その後は交互に家にいることを選びました」

しかし正直に言って、子どもが生まれて最初はすごく衝撃を受けたんです。広告に出てくるような「スーパー」な父親には到底なれそうもなかった。夜泣きで毎晩眠れないのはしんどいし、家もぐちゃぐちゃに散らかって...。何よりも「失敗してはいけない」と恐れる気持ちで、毎日ハラハラしていました。

ヨハン・バ−ヴマン

ヨーラン(27歳)学生

「娘のリーヴは、抱っこひもの中にいると安心して、1日に2時間、夕方が多いですが、抱っこひもの中で眠りたがります。リーヴが眠っている間は、私にとってとても重要なリラックスできる時間になります。幼い子供の親として、そういう時間はあまりないですね。育児休業を均等に分担する事は、たとえ減収になったとしても重要だと思います。私たちの場合、私の収入は減りましたが、その代わりに、将来大切になる子どもとのつながりを築くための時間が増えました。」

ーー子育ての辛さを味わったのですね。

でも、生まれたばかりの子どもと一緒に過ごす時間は本当にかけがえのないものでした。それも伝えたいと思ったことの1つです。それで、父親たちの撮影を始めようと思ったんです。すべての写真には、幸せと辛さ、笑顔と苛立ちの両方が同居しています。それこそがリアルな子育てだと感じました。

ーー6カ月以上取得した父親を集めるのは簡単でしたか?

いえ、とても難しかったです。「パパ友」のつてをたどったり、オープン保育園(日本の児童館のような子供を遊ばせられる施設)に張り紙を貼ったりしましたね。母親と同等の期間、育児休業を取得している父親はスウェーデンでもまだ14%しかいないんです。スウェーデンには充実した制度がありますが、人々の意識はまだまだ道半ばだと思います。

ーー男女が平等に子育てをすることにはどんな意味がありますか?

子育てなどの無償労働の多くを女性が担っているという事実があります。それに伴って、企業での賃金の格差もまだある。子育ての平等な分担を通じて、社会のそうした不均衡を是正していくことに、とても大きな社会的意味があると思います。

私個人としては、大人になる過程で、息子たちはきっと色んな疑問を胸に抱くと思うんです。その時に、しっかり向き合って答えられる父親でありたい。子どもの成長のためには、「子育てなどのケアは男がやることじゃない」というような、「男らしさ」像から自分が離れることがとても重要だと思っています。

ヨハン・バーヴマン

ムラト(34歳)アートプログラム制作者

「ジェンダー心理学のコースを先攻していた時に、私たちの社会における機会均等の重要性を理解しました。私は父親として割り当てられた役割を務めるのはやめました。子どもにとって妻と同じぐらい重要な存在でありたかったのです。子どもと一緒にいるのに、これ以上、適切な時期は来るのでしょうか?私は親ととして不十分だと感じる事が多くありますが、私はその不安を克服しようとしています。自分の限界を認識し、今をもっと楽しむことを学ぶということです。」

ーースウェーデンも「まだ道半ば」と言いますが、日本では男性の育児休業の取得率は、わずか3%なのですが。

出版後、世界中から写真展の開催の要望がありました。あちこちで、いかに父親の育児休業が家庭や子ども、社会にとってプラスになるかについてを話してきました。

ただ、「どうしたらスウェーデンのようになれる?」と沢山聞かれましたが、その国の文化や考え方に合わせて、変えていかなければいけないでしょうね。

先月もこの写真展がオーストラリアで開催される機会があり、私も10日間出張に出かけました。その間、子どもの面倒は妻が見てくれていました。

私の妻はジャーナリストで、つい先日著作を出版することができました。その間は私が子どもを主にみていましたね。

どちらかが1人で子どもを見る(いわゆる「ワンオペ育児」)ことがすごく大変なのは変わりません。しかし、その経験をそれぞれがしていれば、両親が交代で子どもの世話を任せて、大きな仕事に取り組むこともしやすくなります。子育ての息抜きで、友達と遊ぶこともできる。そうすれば、家族がチームとして成り立つということは強調しておきたいです。

◇     ◇

スウェーデンでは、子どもが8歳になるまで、父親と母親の合計で480日間の育児休業を取得することができ、そのうち390日間は休業前の給与の80%が社会保険制度から保証されている。スウェーデン文化交流協会によると、主に大企業などで残り20%を補てんする例もあるという。

政府は、父親の育児休業の取得率を高めるために、そのうち90日間を、父親が取得しなければ消滅する期間として定めている。この効果もあって取得率は年々増加しており、現在は約90%の父親が育児休業を取得している。

しかし、90%という数字には、わずか数日だけ取得した男性の数も含まれている。

国全体での育児休業の取得日数合計のうち、父親に配分されたのは25%。母親と同期間の育児休業を取得した父親は14%となっており、ベーヴマン氏は「まだまだ意識の変化が必要」と考えている。

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スウェーデンのパパたち」の巡回写真展が、2017〜2018年にかけて日本各地で開催されており、12月にはヨハン・ベーヴマン氏の来日イベントも予定されている。スウェーデン大使館では2018年7月までに展示できる会場も募集している。

(取材協力・スウェーデン大使館)

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