みんなの「当たり前」を実現できるように。子どもの「体験格差」を解消へ、プラットフォーム構想が始動

「子どもの体験格差」解消に向けた取り組みに関する記者会見を、認定NPO法人「フローレンス」が開きました。
「こどもの体験格差解消プラットフォーム」に関する記者会見
「こどもの体験格差解消プラットフォーム」に関する記者会見
Keita Aimoto

家庭の経済状況などによって生まれる「子どもの体験格差」を解消しようと、認定NPO法人「フローレンス」が「こどもの体験格差解消プラットフォーム」の実現に向けて動き出した。

世帯年収300万円未満の家庭では、3人に1人が映画鑑賞やキャンプなど「学校外の体験」をしていないとされ、このような体験格差は自己肯定感の低下につながると指摘されている。

10月31日に開かれた記者会見では、子どものウェルビーイングの実現・向上にもつながるプラットフォームの事業構想が明らかになった。

「どうせ自分には…」自己肯定感の低下に

厚生労働省の「国民生活基礎調査」(2023年7月公表)によると、一定水準と比較して困窮した状況にある「18歳未満の相対的貧困率」は2021年、11.5%だった。

3年前(14%)と比べて2.5ポイント改善したが、それでも約9人に1人の子どもが困窮した状態に置かれているということになる。

特に、文化鑑賞やスポーツ、習い事など「体験」の機会は、家庭の経済状況などによって大きな差が生まれている。

公益社団法人「チャンス・フォー・チルドレン」の「子供の『体験格差』実態調査」(最終報告書、2023年)では、世帯年収300万円未満の家庭の子どもの約3人に1人(29.9%)が「1年を通じて学校外の体験を何もしていない」ことが明らかとなった。

世帯年収600万円以上の家庭(11.3%)と比べると、2.6倍となる。

こうした体験格差は、「どうせ自分にはできない」といった自己肯定感の低下につながるほか、学力の格差や就学の差、所得の差を生み出し、貧困の連鎖や格差の拡大につながる可能性が指摘されているという。

「こどもの体験格差解消プラットフォーム」について説明するフローレンスの駒崎弘樹会長
「こどもの体験格差解消プラットフォーム」について説明するフローレンスの駒崎弘樹会長
Keita Aimoto

恒常的に体験する機会を届ける

子どもたちに大きな影響を与える体験格差を解決しようと、フローレンスは2023年夏、「#夏休み格差をなくそう 」プロジェクトを実施。

飛行機の見学やスポーツ選手による運動教室、プログラミングなどの体験を全国2800世帯以上の子どもに届けた。

一方、このキャンペーンを通して、子どもたちは夏休みに限らず様々な体験をする機会を必要としていることがわかったという。

こうして生まれたのが、恒常的に様々な体験を提供する「こどもの体験格差プラットフォーム」構想だ。

プラットフォーム上に民間企業の「体験寄付」を集積し、応募者とのマッチングを行う。

映画やスポーツ、キャンプ、文化など幅広い体験寄付を想定しており、フローレンスはこのプラットフォームを介して知り合った家庭への相談支援も行っていく。

「こどもの体験格差解消プラットフォーム」の図
「こどもの体験格差解消プラットフォーム」の図
Keita Aimoto

渋谷区ふるさと納税で寄付を募る

なお、この構想は公益財団法人「経済同友会」(東京)の協力を受け、サントリーホールディングス(大阪)が協働事業として取り組む。

経済同友会が、社会課題解決に取り組みたい企業に体験寄付への協力を呼びかける。

利用者は、金銭的な余裕がない「体験貧困家庭」、一人で育児と仕事を両立している「ひとり親家庭」、障害やケアが必要で外出ができない「医療的ケア児・きょうだい児」を想定。

プラットフォームに関する資金は「渋谷区ふるさと納税」で11月1日から12月31日まで募り、2024年夏の始動を目指している。

「こどもの体験格差解消プラットフォーム」に関する記者会見
「こどもの体験格差解消プラットフォーム」に関する記者会見
Keita Aimoto

社会課題としてしっかりアピール

子どものウェルビーイングの実現・向上に寄与することも期待される体験格差解消プラットフォーム。

フローレンスの駒崎弘樹会長は10月31日に開かれた記者会見で、子育て中の家庭に食品・生活用品を届ける「こども宅食」の現場で見た出来事を語った。

「食品を届けた際、段ボールの中におやつを入れていたのですが、宅配先の母親が『これで家に子どもの友達を呼べます』と話してくれました」

「多くの家庭では家に子どもの友達が来るというのは当たり前かもしれませんが、その当たり前の『体験』を実現できた。それは子どもの尊厳や自己肯定感にも影響すると思います」

ほかにも、経済的に困窮した家庭には、「海を見たことがない」や「夏休みの絵日記に書くことがない」という子どもたちがいる。

駒崎会長は、そのような体験格差をなくすプラットフォームの実現に向けて、このように決意を述べた。

「衣食住、体験、思い出は、子どもの一生を支えていく。『体験格差』は世の中であまり認知されていないが、社会課題としてしっかりとアピールし、解決に向かって歩んでいきたい」

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