被災地のエコノミークラス症候群 服薬中の医薬品のリスクに注意を(追記あり)

避難生活の中で、エコノミークラス症候群が発生することが知られており、現在様々なメディアで情報が提供されています。

この度の地震によって被災された皆さまに、謹んでお見舞いを申し上げます。

震災直後の、食料品や生活用品の確保に伴い、普段服用中の医薬品についても迅速に手配が進んでいることと思います。

避難生活の中で、エコノミークラス症候群が発生することが知られており、現在様々なメディアで情報が提供されています。

水分摂取の際には、アルコールやカフェインを含まないものが勧められます。緑茶・ウーロン茶・コーヒー・紅茶などはカフェインを含むことが多く、麦茶はカフェインを含みません。

医薬品では、利尿薬やテオフィリン製剤(テオドールなど)、SGLT2阻害薬と呼ばれる糖尿病治療薬などに注意が必要です。

医薬品の種類により、また病状によっても対応は様々です。

持病や服用中の医薬品がある方は、担当の医師・薬剤師など医療スタッフにご相談ください。

■血栓塞栓症の危険因子

脱水・肥満・ホルモン補充療法・下肢静脈瘤・長期臥床・不動状態・喫煙者・妊娠および分娩後・過去3か月以内の手術歴

といった危険因子があります。該当する方は特に注意して下さい。

■発症時の初期症状

・突然の足の痛み、腫れ

・手足の脱力・まひ

・突然の息切れ、押しつぶされるような胸の痛み

・激しい頭痛、舌のもつれ、しゃべりにくさ

・突然の視力障害(視野が狭くなる、見えにくい箇所ができる) など

特に「足の痛みや腫れ」は筋肉痛と勘違いしやすく、見過ごされがちです。思い当たる理由のない筋肉痛のような症状がある際には、医師の診察を受けて下さい。

■ホルモン補充療法・骨粗しょう症治療薬服用中の方

服用されている薬剤により血栓塞栓症のリスク因子となる場合がありますが、対応は一様ではありません。

女性ホルモン補充療法の中断は、体調不良・気分不良などマイナス面の方が大きくなるかもしれません。自己判断は禁物です。

高齢で、骨粗しょう症の予防のために服薬されている方では、しばらく休薬し、生活の改善を待って、再開を検討する必要があるかもしれません。薬剤の種類や状況により、判断は異なります。

(例 ビビアント錠20mg・エビスタ錠60mg・ラロキシフェン塩酸塩錠60mg「サワイ」)

担当の医療者と相談のうえ、指示に従ってください。

■被災地の医療スタッフの皆様へ

避難所などでの血栓塞栓症リスクマネジメントを考慮される際、高齢者の上記薬剤(SERM:選択的エストロゲン受容体モジュレーター)休薬の要否につき、ご検討をお願い致します。

利尿薬、SGLT2阻害薬、テオフィリン薬などに比べ、目が届きにくい傾向にあるようです。

■追記

(編集部注:2016年4月21日14時30分追記)

各避難所を支援する医療スタッフなどにより、感染症予防措置も進んでいるようです。

手洗いや手指の消毒といった予防対策にご協力頂くとともに、「咳エチケット」についてご確認をお願い致します。

カゼやインフルエンザの感染経路として、忘れがちなのが接触感染です。

これは、咳やくしゃみの飛沫が付着した環境表面に触れた手で、顔(目・鼻・口)を触ることにより感染が成立するものです。

食事前には確実に手指を清潔にすること、不用意に顔周りを触らないようにすることが大切です。

高齢者、持病のある方では、誤嚥性肺炎予防のための口腔ケアについて検討してください。歯科医・歯科衛生士・介護専門職の担当分野です。

各医療関連学会がこの度の震災に関連して、声明を発表しています。

高齢の方のケアにあたられるご家族や周りの方、持病をお持ちの方はご確認ください。こうした時期には、情報は錯綜しがちですが、行政や医療団体といった信頼性の高い情報を入手することが重要です。

加えて、理学療法士、栄養士など多職種が、各専門領域での支援にあたっています。今後の健康維持と疾患の予防を考える上で、中心的な役割を担う分野です。

日本は地震の多い国です。私自身、阪神淡路大震災では被災しました。

災害時の「連帯感」は、健康を守るうえで大きな要素だといわれています。

心はいつも、皆さんと共にあります。

(2016年4月19日「医療と薬の日記」より転載)

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