「明日ママ」で日本テレビが慈恵病院を訪問 内容変更の方針を伝達

ドラマ「明日、ママがいない」において、日本でただひとつ「赤ちゃんポスト」を運営している慈恵病院などが「子どもたちが傷つく」と批判している問題で、日本テレビが病院側に「内容の見直し」の方針を伝えた。

2月1日夕方、熊本市の慈恵病院を日本テレビの担当者2人が訪問。

「赤ちゃんポスト」に預けられていたという理由で「ポスト」というあだ名がついた少女らが登場し、児童養護施設長が入所する子どもたちに「おまえたちはペットショップの犬と同じだ」と発言。家に帰らない夫を引き戻すためなど身勝手な理由で施設の子どもを引き取ろうとする里親や特別養子縁組の希望者などが登場するドラマ「明日、ママがいない」。

日本でただひとつ「赤ちゃんポスト」を運営している慈恵病院などが「子どもたちが傷つく」と批判している問題で、日本テレビが病院側に「内容の見直し」の方針を伝えた。

日本テレビの担当者が今回の問題で慈恵病院に出向いて話をしたのは初めてのことだ。

慈恵病院を訪問したのは、日本テレビで「明日、ママがいない」を担当する伊藤響チーフプロデューサーとその上司の福田博之制作局次長の2人。

ドラマ「明日、ママがいない」の第1回が1月15日に放送された後、慈恵病院が児童養護施設の子どもたちや里親、特別養子縁組の子どもたちらへの「差別や偏見につながり、子どもたちを傷つける内容」だとして抗議文を送り、「放送中止」を求めたことに対し、日本テレビ側はこれまで伊藤チーフプロデューサーが病院に電話して「放送中止はしない。最後まで見てほしい」と伝えただけだった。

それから、強気の姿勢を崩さなかった日テレに非難が集中した。

慈恵病院側によると1日夕方、病院を初めて訪れた日本テレビ側は、

「今後の放送の見直しについて、現在、全国児童養護施設協議会から2月4日までに回答を求められていて、当日に返答する予定だ。今後の放送については内容を注意していきたい」

と話したという。

ただし、2月4日に日本テレビがどんな返答をし、番組のなかで具体的にどの部分をどう変更するのかのついては明言を避けた、という。

全国児童養護施設協議会が、児童養護施設で暮らす子どもの中にドラマを見て自傷行為に走った子どもが複数いるとして日本テレビに対して謝罪を求めていた問題については、

「養護施設協議会からはプライバシーの問題があるとして、どこの誰というふうに教えてもらえないので、具体的にどんな被害があったのかを把握できない。このため、日本テレビとしては被害を確認できない。よって今の時点ではおわびできない。もしも被害があったのであればおわびしたい、という言い方しかできない」

と説明されたと病院側は話している。

具体的な被害について日本テレビ側に伝えられない事情について、東京都内にある児童養護施設の施設長は、

「全国児童養護施設協議会による実態調査は、ごくわずかの施設で目立たないように実施したもの。傷ついている可能性がある子どもに向かって、あのドラマを見てショックがなかったかなどと尋ねることは、そうした質問そのものが子どものフラッシュバックを引き起こす恐れがある。そういう問題を配慮しながら調査することは実際にはかなり難しい。そんな状況で、自傷行為に走った女子児童のケースが報告されたのだから氷山の一角と考えるべきだ。確認できないからおわびしない、という態度にはやはり施設にいる子どもたちへの無理解を感じる

と疑問を呈している。

ドラマの内容については日本テレビ側は、「放送中止する予定はない」としつつも「番組の内容については注意していく」と事実上の内容の変更を行う方針について明言したという。

慈恵病院側は

番組内容を大幅に見直し、子どもを傷つけるような部分がなくなるのならば、放送中止までは求めない

としている。

ドラマ「明日、ママがいない」の問題は、内容の変更を日本テレビ側が約束したことにより、今後はどういう形で内容が変更されるのかが注目される。

病院の関係者や児童福祉の関係者、スポンサーも注目するなかで、次の水曜日のドラマでどんな「見直し」がありうるのか。

未確認だが、すでに台詞を変えた「一部撮り直し」の撮影が始まっているらしいという情報がテレビ関係者の間で噂として広がっている。

だが、主人公のあだ名が変更されたのか、など、その詳細は明らかにされていない。

慈恵病院では、「ポスト」というあだ名の取り扱いや養護施設の子どもたちをペットショップの犬のようにたとえる場面などについて、

「日本テレビが本当に傷つきやすい子どもたちの問題に配慮するのかどうか、今後の放送を注目していきたい」

と引き続き、警戒する姿勢を示している。

近いうちに病院のホームページで「フラッシュバック」について説明し、虐待を受けたことがある子どもにこのドラマを見せた場合の危険性について注意喚起する方針だ。

(2014年2月2日「Yahoo!個人」より転載)

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