少し前に、アベノミクスは我慢比べになってくるだろうと書きましたが、はや我慢比べの局面にはいってきたのではないでしょうか。成長戦略の第3弾に市場が失望したのか、はたまた材料がでつくしたと見たのか、他に原因があるのかはわかりませんが、株価が大きく下がってしまいました。もしかすると、もっと海外の投資家にもわかりやすいメッセージとして、法人税減税を盛り込んでいたら株価もあがっていたのかもしれませんが、理論的にも「予想できないのが相場」です。
アベノミクスが掲げている成長戦略に「異次元」だというサプライズはないにしても、これまでの内閣からすればかなり本気で真面目にやっていると感じるのですが、どこまでやれるのかに市場は不信感を持っているのかもしれません。ほんとうにお手並み拝見という感じがします。
成長戦略は長期戦になってきます。これまでもどの内閣も成長戦略を掲げてきたのですが、政権が短命なことがその実行を阻んできたように感じます。長期戦に耐える前に内閣が倒れてしまいました。問題は安倍内閣がその長期戦に耐える内閣になれるかどうかです。きっと最大の成長戦略は、政権の安定ではないでしょうか。政策が一貫していなければ、危なっかしくて投資もできません。
しかし、安倍内閣の高い支持率が、もし株高が原因だとすれば、円高・株安の流れは支持率にも影響してくるのでしょう。支持率が低下してきた中で、思い切った成長戦略を遂行できるのか、官僚や既得権益をもった人たちの抵抗をはねのけて、実行していくリーダーシップを維持できるのかです。
よく衆参のねじれと言われていますが、それよりも大きいのが自民党内のねじれです。安倍内閣がこのまま自民党をコントロールできるかどうかです。成長戦略は、さまざまな利権をもった人たちにとってはほんとうに都合が悪い話です。せっかく二本目の矢の財政政策で気前よくバラマキをやったのですが、継続性がないのでそれで集票できるのは一時だけのことです。
農業が不利になるTPPを逆転の発想で、農業の6次産業化、とか、株式会社参入によって競争力を高めようといえば、それは「農協飛ばし」を言っているに等しいので、当然反発が起こってきます。それが自民党の地方議員を揺さぶるのです。しょせん自民党は思想の違った人たちが集まっている選挙互助会組織なので、地方議員はぐらついてきます。はやJAが揺さぶりをかけてきています。
これだけではないでしょう。成長戦略を握っているのは女性の労働力だとしていますが、横浜方式のように保育所への株式会社参入を促して、待機児童ゼロにしようとすれば、既得権を侵害することになり、こちらも大阪市のように社民党や共産党と自民党議員の共闘も起こってきそうです。敵は外ではなく、自らの内部に潜んでいるというのが一般的な話です。
金融市場では株高につながる円安歓迎でしょうが、もっとも雇用を抱えている中小企業、つまり有権者がもっとも多い中小企業が、原材料やエネルギー費の高騰を価格転嫁できず、それでダメージを受け始めていることを考えると、これもやがては政権基盤を不安定にする要因になってきます。こちらも辛抱どころでしょうね。