前々回、前回とお送りした、4.8「原発に頼らないエネルギー政策あり〼」レポートの最終回です。田嶋要さんがデンマークをたびたび引き合いに出したところ、質疑の時間に、デンマーク人の知り合いがいる方から質問が出ました。この質疑応答から、ぜひ皆様も考えてみていただきたいと思います。
(Wikipediaよりクリエイティブ・コモンズに基づき使用。作者:Kåre Thor Olsen)
デンマークの首都、コペンハーゲンです。
人口は56万人と、板橋区とほぼ同じです。
もちろんまちの成り立ちは相当にちがいますし、人口密度も板橋区のほうが3倍近く多いですが、56万人という人々が幸せに住まうためにどうすべきか、私ももう少しコペンハーゲンを研究してみてもいいのかもしれませんね^^
「豊かな社会のために、もっと税金を払ってはどうか?」
4.8「原発に頼らないエネルギー政策あり〼」において、田嶋要・衆議院議員は、デンマークをたびたび引き合いに出して説明をしました。
「オイルショックの経験から、デンマークは原発を検討したが、結局作らず、風力発電で世界一をめざした。日本は中曽根康弘さんを中心に、原発推進の道を選んだ。
この時点ではしかたのない判断だったかもしれない。しかし、あのような事故が起こったのだから、もう変えていかなければならない」
このようなデンマークの話を様々したところ、質疑の時間に、ある方がこんな質問をされました。
私の父は、デンマークに何回も視察に行っていました。
私もたまたまデンマーク人の知り合いもできまして、話をいろいろお聞きしたんですけれども、1960年代から非常にがんばって国をよくしようとしている小さな国です。
特に、デンマークのお話を聞いて、私が非常に印象深く思ったことは、デンマーク人は税金をたくさん払っているということです。
そして、労働時間がとても短い。働く時間を減らして他の人に回している。みんなで共生しているということです。
税金は、ほとんど医療と教育に使っている。
日本もたくさんお金を出さないと、20年の遅れは取り戻せない。
どうでしょう、思い切って税金を上げるというのは。
我々の財布の中から出ていくお金を減らすのではなく、有権者が投票しにくいと思いますけども、この際、福祉のために我々がもっとお金を出して、豊かな社会を作るためにたくさんシェアしましょうっていうのはどうでしょう。
これは、来場者の中でも議論が分かれるんじゃないでしょうか...と、私も思わず発言しました。
重要な問題提起だと思います。
それに対する田嶋要さんの回答は、次のようなものでした。
デンマーク人は「税金を払うことは、未来への投資だ」と思っている
「この話になると、もう1時間くらいお話をさせていただきたいんですけどね(笑)
ちょっと皆様にお伺いします。もし「教育費と医療費を全額無料にするので、その分税金を上げさせてください」とご提案した場合、賛成する方、挙手していただけますか?
...ああ、半分くらいですね。だいたいどこでもそれくらいです。
デンマークは、教育費と医療費はすべて無料です。ただし、消費税は25%です。
軽減税率はもちろんありません。
軽減税率は最悪ですからね。軽減税率をやると、困っている人がさらに苦しくなる。
で、働く時間は1週間に37時間。法律で制限されています。これを5で割ると、1日に働く時間は8時間ないということがわかりますね。
マクドナルドの時給は、2,200円ですよ。日本の最低賃金は600円から900円ですね。世界の常識は2,000円ですよ。
日本は何周も遅れてしまっている。
デンマーク人は「税金を払うことは、未来への投資だ」と言うんですよね。
ぶん取られたという感覚を持っていないんです。
我々が消費税を上げると言うと、国民からは「よくないことをやられる」と受け止められてしまいます。
ヨーロッパでは、消費税は軒並み20数%。
韓国でも、消費税導入時に10%から入っている。
日本は3%から5%、8%と上げて、それでもこれだけ苦しんでいる。これは簡単には変えられないですね。
我々は、大学まで医療費を全額無料にした場合の必要財源を4兆円くらいと試算しています。
消費税を1%上げると2500億〜2700億得られます。ならば消費税は何%上げたらいいかという計算ができるわけですね。
デンマークが理想郷ではない。デンマークのやっていることが全部いいわけではありません。
だけど、驚くほどいろいろなことが日本とちがう。
デンマークの投票率は国政で平均85%。日本は50%です。
政治への信頼世界一がデンマーク。日本はほとんどドベです。
政治への女性進出の割合、日本は先進国で最低で、12%です。
日本は最低のものがたくさんあるんだけど、デンマークはトップに近いものがたくさんある。
いろいろ新しいことをやってきたデンマークには、学ぶものが多いのではないでしょうか。
たとえば日本では働き過ぎの正社員と、収入の低い非正規社員、この格差がめちゃくちゃ大きい。
男女格差が世界一高いのも日本。日本では女性の平均賃金は男性の半分くらいですね。女性の場合、非正規の方が多いためです。
日本には恥ずかしい状況がたくさんある。
そういうことを1個でも2個でも変えていくためには、デンマークを引き合いに出すとみなさん驚かれるので、こういうことが大事なカンフル剤ではないかと思うのです。
ただそこで医療・教育無料にしますと言っても、やはり半分の方は手が上がらないわけなんで、悩ましい選択なんじゃないかなぁと思っているので、ぜひみなさんも考えていただきたいと思います」
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...念のためお断りしておきますが、民進党でも、現在の経済状況で消費税を10%に上げるのは無理であるという判断をしています。
ただ、「あるべき社会」を考えた場合、何を実現すべきか、そしてそのために必要な財源はどうするか、そして国民はそれらの議論にどうやって参加するか...と、こうした議論を積み重ねていくことは非常に重要なのではないかと思います。
そして、最も重要なのは「政治への信頼度」ですね。
税金を上げても、きちんと国民の生活向上のために使ってくれる...という信頼感がなければ、増税などとても検討できません。
まず「信頼できる政治」を取り戻すのが、何より急務だと私は思います。
「人間社会は、常に欲望によって行き詰まり、希望によってその行き詰まりから脱する」
これは田嶋要さんが、お話の最後に、自分が好きな言葉だと言って紹介した言葉です。(引用元は不明です)
この言葉は、先般来日した「世界一貧しい大統領」、ホセ・ムヒカ前ウルグアイ大統領の思想とも通じるところがあります。
ムヒカ前大統領は「人間社会は『欲望』をコントロールできていない」と語り、人間は「発展」にすべてを捧げるのではなく、「幸せ」を得るために生きなければならない、と訴えました。
私たち日本国民は、この日本で、何を「幸せ」と感じて生きるのでしょうか。
一人ひとり、千差万別だと思います。
できるだけ多くの人々に政治参加していただくよう促し、みんなで議論して、よりよい社会になるよう貢献していく...。
そんな政党に民進党をしていくべく、私も微力ながら尽力しますので、ぜひ今後とも変わらぬご愛顧をお願い申し上げますm(_ _)m
(2016年4月12日「中妻じょうた公式ブログ」より転載)