(2013年アメリカ/Parkland)
米国第35代大統領ジョン・F・ケネディ大統領が暗殺されたのは1963年11月21日のことで、その50年後に製作された映画。(ちなみに筆者はその63年生まれである)その昨年、ケネディ大統領の長女キャロライン・ケネディが新駐日米国大使に就任した。筆者は米国駐在もあり米国野球も好きであるが、ボストン・レッドソックスがフェンウェイ・パーク球場の試合のとき8回裏の攻撃前に流れる「スイート・キャロライン」は、子供の時のキャロライン・ケネディの曲である。また、フィッツジェラルドの小説をベースとした『華麗なるギャツビー』は2回映画化されているが、主人公はケネディ大統領の父上ともいわれている。
テキサス州ダラスを訪れていたジョン・F・ケネディ大統領がパレード中に狙撃される。ジャクリーン夫人に抱えられて病院に運び込まれ、医師やナース、警護をしていたシークレットサービス、偶然、事件を撮影していた男、容疑者をマークしていたはずのFBI、瞬時に大統領となり国を託されたリンドン・ジョンソン副大統領、容疑者とされたオズワルドとその家族など、暗殺事件は多くの人間の運命を大きく変えが。そのケネディ大統領とその後、打たれたオズワルドが運びこまれたのがパークランド病院なのである。この事件の真実に迫った緊迫の4日間を描いてはいるものの、抑揚のない淡々とした感じが逆に味を出している。
名優トム・ハンクスが製作総指揮で、出演はザック・エフロン、ビリー・ボブ・ソーントン、ポール・ジアマッティら実力派がそろっている。ちなみに、出演しているコリン・ハンクスはトム・ハンクスの息子で、何となく若いころのトムに似ている。
そのころの米国の最大の問題は60年から75年まで続いた「ベトナム戦争」であった。戦費のため、国債を大量に発行し、財政が急激に悪化していった。ケネディはそのベトナム戦争を縮小しようとしたともいわれ、暗殺との関連をいう向きもある。ケネディ暗殺後、逆に戦線は拡大し、国債の発行もさらに大量になり、財政が悪化していった。当然、米国経済全体の状況も悪化していった。
米国は1945年から続いていたブレトンウッズ体制のもと、金とドルの兌換、そして固定相場制を引いていた。しかし、米国経済の悪化により維持不可能となり、金との兌換の停止、そして変動相場制への変更という「ニクソン・ショック」が71年に起こった。ドルは当然のように下落を続けていった。ちなみに、『007/ゴールドフィンガー』(1964年)に登場するフォートノックスの金の貯蔵庫には、米国の外貨準備としての金が保管されていたのである。当時、米国に世界の金の2/3が集中していたのである。
日本も、現在、世界一の財政悪化の国であり、経常赤字にもなりつつある。この頃の米国の様に、急激に市場の信頼を失い日本円が暴落する可能性も否定できない。昨年5月に出版した、藤巻健史氏との共著『円安vs.円高 どちらの道を選択すべきか』(東洋経済新報社)にも書いたが、円安政策はすでに遅いのである。円安に向かったが、値段が下がり売り上げを伸ばせる商品の製造工場はすでに海外に移転しており、燃料などの固定的輸入が多く、貿易赤字は当分消えないのである。日本が得意といわれた電化製品でも、携帯電話やパソコンも大幅な輸入超過となっており、貿易赤字の主因の一つとなっている。円安誘導は工場を国内にあるときでないと、効き目がない。
そろそろ、我々が大学の講義で使った国際経済や国際金融の教科書は使えなくなってきている可能性も高いのである。
「宿輪ゼミ」
経済学博士・エコノミスト・慶應義塾大学経済学部非常勤講師・映画評論家の宿輪先生が2006年4月から行っているボランティア公開講義。その始まりは東京大学大学院の学生さんがもっと講義を聞きたいとして始めたもの。どなたでも参加でき、分かり易い講義は好評。「日本経済新聞」や「アエラ」の記事にも。この2014年4月2日の第155回のゼミで"9年目"に突入しました。
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