ヨガといえば、身体を柔軟に動かしながら色々な形のポーズを行う、というイメージが強いですが、実は、哲学を勉強するヨガや、瞑想だけをするヨガ、ひたすらマントラを唱えるヨガなど、身体を動かさないスタイルもたくさんあるそう。
今回は、その中から"眠りのヨガ"「ヨガニドラー」というユニークなテクニックを、ヨガインストラクターの村上華子さんに伺いました。
なんでも、ヨガニドラーが実践できるようになれば、10分間の実践で1時間分の睡眠効果があるのだとか。
さすがにそんな境地に至るには訓練が必要そうですが、そこまでとはいかなくとも心身の緊張がほぐれると、深いリラクゼーション効果から質の良い眠りへ自然に導かれそうです。
■眠りに入る前の状態を保ち、潜在意識に響かせる
"眠りのヨガ"といっても、ただ単に眠りながらヨガをするのではなく、正確には、うとうと眠りと覚醒の間のしたまどろみの中で、意識的にリラクゼーションを深めていく安らぎを培う瞑想法のひとつ。
本来、心と身体はひとつながりと考えられるので、ストレスやトラウマなどによる心に蓄積された慢性的な緊張は、肉体的・生理的な不調として、眠りの不調や血圧の上昇、欝々やイライラなどというように、身体のあちこちに現れます。
そこで、全身にくまなく意識を向けるトレーニング(ボディスキャン)や呼吸法、イメージング、サンカルパ(大願を唱える)という独自の方法で、身体から心へとアプローチしていくのが"眠りのヨガ"です。
自分自身への集中を深めながら、心の奥深くに潜んでいる、強い恐怖や蓄積された不安などを解放していくことで、緊張のスイッチを切り、心身共にすっきりとした状態にリセットしていきます。
"眠りのヨガ"が、普段の眠りそのものをよりスムーズに、質の良いものにしてくれるのです。
"眠りと覚醒の狭間"、うとうととした心地のよい眠りに入る直前は、潜在意識(無意識の領域/トラウマが蓄積する保管庫)にアクセスしやすい状態です。
ヨガニドラーは身体をリラックスさせ、潜在意識に響かせやすい状態をキープしながら、ポジティブなイメージを刷り込んでいくもの。そのため、元々私たちが持っている健康を妨げる原因を取り除くためのプロセスであり、無意識下で起きている緊張を解き放つためのセルフケアとも言えます。
■ヨガニドラーで期待できること
・ストレスを軽減する
・眠りの質を高める
・肉体の疲労を回復させる
・記憶力、想像力を高める
・自分らしい自分になれる
ヨガニドラーは目を閉じて横になりながら、指導者のガイドを聞きながら、または専用の誘導CDを流しながら行うのが一般的ですが、ここでは、それらのおおまかな流れの手順を追っていきましょう。
■ヨガニドラーの手順
1:「準備」
仰向けに寝る。ヨガの休息、シャバアーサナの姿勢。
2:「リラクゼーション」
身体を意識的に力ませた後、一気にゆるめてくつろがせる。
3:「サンカルパ」
自分の習慣を変えるポジティブな決意を決めて3回唱える。
4:「ボディスキャン」
ガイドに従いながら、身体の各部位に意識を向ける
5:「呼吸の調整」
呼吸を観察して最適なリズムに整える。
6:「イメージング」
美しい景色や、心温まるシチュエーションなど、視覚的にイメージを描く。
7:「サンカルパ」
再び、短く肯定的な大願を3回、自分の心の奥深くに投げかける。
8:「瞑想」
心地よい感覚を心身に染み込ませる。
9:「目覚める/眠りに入る」
ゆっくりと起き上がり、リフレッシュした状態を感じる/または、そのまま眠りに入る。
眠りと覚醒の狭間を保つのは至難の業なので、最初は5分横になるだけでもOK!
もし眠くなったらそのまま眠りに入ってしまいましょう。
難しそう……と思った方も大丈夫。実践編では、ホームプラクティスに最適なヨガニドラーの簡易版をご紹介しています。
ヨガニドラーを終えた時(または、目が覚めた時)"心が空っぽ"になるようなリラックスを体験することで、日々思考がフル回転していた慌ただしさに気づきます。休みなく走り続けている人こそ、時々はペースダウンする意識を持って、まどろみの中で自分を見つめる時間を大切にしましょう。
Fuminners 2016年6月10日の記事より抜粋