年初来、株が急落し、円も安くなって、アベノミクスの「化けの皮」が剥がれてきた。このままいくと、株高と円安というお化粧で「あばたもえくぼ」に見えていた安倍政権の経済政策も、やはり「あばたはあばた」だったという、当たり前の評価になっていくことだろう。
その理由は簡単だ。以前から私が指摘してきたように、アベノミクス「三本の矢」のうち、確かに「第一の矢」(大胆な金融緩和)は飛んだが、「第二の矢」(機動的な財政運営)は「あらぬ方向」に飛び、「第三の矢」(規制改革等の成長戦略)は飛んでいないからだ。
そう、確かに「カネ」は動いたが、「モノやサービス」(実体経済)が動いていない。「金融緩和」は「カンフル剤」(円安・株高)としては効いたが、二本も三本も打てない。いや、打ったとしてもその効果は減殺されていく。だから、「カンフル剤」で体がシャキッとしている間に「体質改善」「手術」をすべきだったのに、残念ながら、それが安倍政権の3年間でできなかったということに尽きる。
「第二の矢」(財政出動)は、本来、非効率分野への資金投入ではなく、将来の「成長分野」への重点投入、さらには、「家計」「消費者」への分配にシフトしていくべきだった。せっかく「成長の果実」があったのだから、いくらでもやろうと思えばできた。安倍首相自身の言葉を引けば、「3年間のアベノミクスは、大きな果実を生み出しました。名目GDPは28兆円増えました。来年度予算の税収は15兆円増えています」(施政方針演説)。
しかし、安倍政権になって、公共事業がそれまでの5兆円規模から倍の10兆円規模になっていることに象徴されるように、利権、既得権益にまみれた自民党政治の宿唖から、安倍政権も逃れることができなかったのだ。
「第三の矢」も、農協改革等看板の掛け替え程度の改革は行っているが、それが、農業への新規参入(株式会社の農地保有)の促進という、実体経済に影響するほどの改革になっていないことが問題なのだ。いくらちょこまかと改革を「やった」「やった」と叫んでみたところで、景気に効かない、隔靴掻痒のような改革をしていても意味がないだろう。
アベノミクスの提言者、安倍政権のブレインですら、アベノミクスに逆行する「8%消費増税」は行うべきではなかったという反省を、今、口にしている。ましてや、この経済状況で、また、国会議員の定数削減等の「身を切る改革」や、消費増税の社会保障財源への充当もまともに行われていない中で、17年4月からの「10%消費増税」などありえないというのが私の立場だ。
財政再建は「経済成長」「増税」「歳出削減」のベストミクスで達成される。これすらわかっていない人が多い。1000兆円になんなんとする借金を増税だけで返せるわけがないし(消費増税400%分)、歳出削減は徹底的に行うにしても一般会計予算が90兆円台だから限界がある。この大借金を持続的に何年かかっても返していくためには、経済成長による税収増しかない。そう、「金の卵を産むがちょう」=経済成長を「増税」で殺してはいけないのだ。
早急に維新の党の見解をまとめ、統一会派を組んでいる民主党と協議し、この方向で意思統一を図りたいと思う。仮に、このような重要施策で民主と歩調が合わないようであれば、残念ながら、統一会派の解消どころか、参院選前の新党もあきらめざるを得ない。
(2016年1月25日 「衆議院議員 江田けんじ」より転載)