「差別と恐怖の日々」バングラデシュの同性愛差別

バングラデシュ社会の同性愛に対する目は非常に厳しく、LGBTの人々は言葉の暴力や肉体的暴力に日々直面している。

バングラデシュ史上初、LGBTコミックが刊行

2015年9月6日、同性愛者の人権団体(ザ・ボーイズ・オブ・バングラデシュ)によりバングラデシュにおいて同性愛を描いたマンガが刊行されることになった。これはバングラデシュにおいて史上初のことで、同性愛者がどれだけ大変な生活をしているのかについて、意識を高める狙いで刊行されるのだという。ザ・ボーイズ・オブ・バングラデシュは「このマンガを通じて、人には愛する人を選ぶ自由があるということを伝えていきたい」と語る。このマンガでは、女性同士の恋愛が描かれている。ここではバングラデシュの同性愛者を含めたLGBTの状況に関して触れる。

バングラデシュの同性愛を描いたマンガ。出典:Boys of Bangladesh

LGBT = "Dhee"(ディー)

バングラデシュは、人口の90%がイスラーム教徒であり、同性愛やトランスジェンダーの人々にとって非常に厳しい社会である。バングラデシュではLGBT のことを指す言葉として、独自に "Dhee"(ディー, 原義は「知性」) という言葉がLGBTの人々によって作られた。"Gay" という英単語も、もともと「陽気な」という原義があるものをあてはめたように、同性愛者をポジティブなものとして捉えられる単語を使おうという流れである。ちなみに、南アジア圏ではXジェンダー(男性でも女性でもない)を"Hijra(ヒジュラ)" と呼ぶ。今回刊行されたマンガでは女性に恋をした女性が "Dhee"であり、マンガの中では読者に対して「私は自殺をして自らの人生を諦めるべきか?家族を喜ばせるために男性と結婚するべきか、国から逃亡するべきか...それともバングラデシュに留まって自分の心のおもむくままに生きるべきか」と問いかける。

同性愛差別の非常に厳しい国

バングラデシュ社会の同性愛に対する目は非常に厳しく、LGBTの人々は言葉の暴力や肉体的暴力に日々直面している。またバングラデシュでは、法律によって同性愛が禁止されている。法律には以下のように書かれている。

377条 自然に反する行為

男性、女性や動物などと自然の秩序に反した淫らな性交渉を意志を持って行ったすべての人は、終身刑となるか、10年以上の投獄となるか、罰金の対象となりうる。

バングラデシュの同性愛者たちは、法律にも認められず、家族や友人にも認められない存在なのだ。

しかし、トランスジェンダー(性別違和者)に関しては別だ。トランスジェンダー(南アジアでは「ヒジュラ」と呼ばれる)はバングラデシュ政府によって社会福祉を受ける対象として認められており、ヒジュラの人権は認められている。

「恐怖の日々はもう終わりだ」現地のトランスジェンダー "ヒジュラ" たちの闘い

出展:Wikipedia

ヒジュラが政府によって認められた1年後、バングラデシュではトランスジェンダーたちを中心に2014年の9月にプライドパレードを開催。1,000人のトランスジェンダーが集結し、バングラデシュの首都ダッカを闊歩した。パレードで持っていた横断幕には、「非難、差別、恐怖の日々はもう終わりだ」と書かれている。

プライドパレードに参加したうちの1人は、パレードの際、以下のように語った。

「私たちはどこにいっても、人々にバカにされてきた。差別をされてきた。自分が男性でも女性でもないというだけで、人に笑われてきた。でも今日は違う。私は、自分も普通の人間なんだって感じる。」

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