ゲイの彼氏が自殺した。

不安にかられた僕はYさんのブログをいくつか確認しました。『やっと彼が迎えに来てくれた』『オーロラが見える場所に行ってきます』そう書かれていました。
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飲み屋を卒業する日

お正月の営業もつつがなく終了し、1月6日。僕は最後の営業に向かおうとしていました。いつになく上機嫌なYさん。

『とてもとても気分がいいんだ』

そうYさんは言っていました。

『営業頑張ってね!』

そうニコニコ笑いながら言い、僕を強くYさんは抱きしめました。そのあと、Yさんは優しくキスをしてくれて、僕は『いってきます』といつも通り家を出ました。

そう、いつも通りだと思っていました。

正月明けだからか

人はほとんどきませんでした。お正月にお仕事でようやく休みが取れた方々がちらっと現れる程度。

ああ、暇だな。

そう思っていたところ、常連であり当時友達だった人が知人を連れてやってきました。

「今日でお店、上がるんだよね?」

友達はそう僕に言いました。

『最後なんだし、パーッとやりましょうよ!』

そう言い、シャンパンを入れてくれました。そのあとは焼酎に切り替え、あーでもないこーでもない、と馬鹿話をしていました。

『あ、ねぇねぇ。例の彼は元気かい?』

そう聞いてきたため、

『とっても元気!今日も元気いっぱいでさ。見送りがいつもより明るかったなぁ。』

そう言いながら、ふと携帯を開くとYさんからメールが来ていました。

『まさしはずっと幸せになってね』

そう、書かれていたのでした。

『オーロラが見える場所に行ってきます。』

不安にかられた僕はYさんのブログをいくつか確認しました。

『やっと彼が迎えに来てくれた。』

『オーロラが見える場所に行ってきます。』

そう書かれていました。

僕がそれを友達に伝えると、早く帰った方がいいと言われましたが、夜中ということもあり、まだ電車は動いていませんでした。

僕は友達に謝り、店を早めに閉めさせて頂き、タクシーで当時住んでいた千葉の自宅に向かいました。

家の前にYの父と警察

家に着くとパトカーが止まっていました。

こんな朝方なのに...と僕は嫌な気がして、急いで階段を駆け上りました。

家の玄関の前にはYさんのお父さんと警察官がいました。

Yさんのお父さんは僕をにらみ、

『お前が殺したんだ!!!!!!!!!』と僕の胸倉をつかみ言い放ちました。

『お父さん、落ち着いてください。彼は今帰ってきた。彼が殺したということはありえません。』

そういうと、力なくYさんのお父さんは僕から手を離しました。

『恐れ入りますが、ドアを開けて頂いてもよろしいでしょうか?自殺をほのめかしていたようで...』

『わかりました。』

そう答えると僕は鍵を開け、ドアを開きました。

家の中に入ると

ドアを開けると、布団が見えました。

が、そこにYさんの気配はありません。

念のため、そう思いトイレとお風呂をみるもYさんはいません。

僕は居間に向かいました。

なんだ、いないじゃないか。

そう思った瞬間僕はロフトから視線を感じました。

なんだ、そっちにいたのか・・・

そう思った僕は振り向き、上を見ると、Yさんが首を吊って亡くなっていました。

そのYさんと僕は目が合った気がし、腰から下の力は抜け、その場にへたりこんでしまいました。

警察官に優しく誘導され、玄関と繋がる廊下に移動され、Yさんはゆっくりと下に降ろされました。

布団に優しく寝かされたYさんに抱き着き、Yさんのお父さんは抱きしめ、ずっとずっと、しきりに泣いていました。

僕は唖然呆然とするばかりで、今起こっているこの事象が現実なのか、それとも夢なのか、区別もつかなくなっていました。

寝かされたYさんの頬にそっと触れると冷たくなっており、Yさんが亡くなったことが本当に分かり、これは現実なんだと思い知らされました。

親には電話をし、警察官から事情が説明されており、1時間もしないうちに、両親が到着し、僕は両親とともにパトカーで事情を聴かれました。

Yさんとは元恋人であること、自分は同性愛者であること、HIVにYさんから感染したこと。

すべてを話しました。

母親はヒステリックに叫んでいました。

『自分の言う通りにしないから、そうなったんだ!』と。

『お母さん、やめてください。今一番辛いのは彼です。』

そう警察官は母親を静止し、僕に優しく『辛かったよね。』と言ってくれました。

僕はその日、安心したのか、初めて涙を流しました。

つづく

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