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2015年10月04日 16時51分 JST | 更新 2016年09月29日 18時12分 JST

「飲んだ、治った、効いた」は要注意!〔論文の読み方シリーズ①〕

医学論文を読むのは大変です。人体のしくみや病気の知識はもちろん、研究の結果をどう解釈するかにも悩まされます。論文を読んでいる中で出会う、日々の生活にも応用できる、初歩的な統計学の考え方を紹介します。

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◆飲んで治った人が本当にいたら?

「○○を飲んだら××が治った!」という怪しい治療法の宣伝を見たことがある方は多いと思います。こうした文を見たとき、「効くのかな」と思いますか?それとも「嘘だろう」と思いますか?

どちらも思う壺じゃないかな、と僕は思います。

「嘘だろう」と思ったときに、本当に「飲んで治った」人が目の前に現れたらどうでしょうか?証拠になりそうな写真や検査データがいろいろ出てきても、白衣を着た賢そうな人が「なぜ効くか」を詳しく説明してくれても、テレビでコメンテーターが「私もこれ飲んでよくなったんですよ」と言っても、やっぱり嘘だと思いますか?

残念ながら、これでは十分な証拠とは言えません。専門用語で言うとコントロールがないのです。

◆コントロールとは?

コントロールとは、比較になるもののことです。中学校の理科でよく出てくる「対照実験」はコントロールを作るための実験です。上の例で言うと、「飲まなかったら治らなかった」人が出てこなければ、いくら「治った」が確かでも、「効いた」かどうかはわかりません。飲まなくても治るなら、飲んで治っても、効いたとは言えません。

実際にはたいてい、何もしなければ普通は治らないだろうと思える病気が話題になっていますね。そこでもう少し詳しく言うと、たとえば「○○を飲んだらがんが治った!」だったとして、「○○」を飲まない人は本当にがんが治らないのでしょうか。手術や薬で治療されていて、そのうえで「○○」を飲んだときにがんが治ったら、それは「○○」が効いたのでしょうか(がんが「治る」という言い方はそもそも正確ではないという考え方がありえますが、その点はいったん置きます)。

コントロールは注目した点(飲むか、飲まないか)以外の条件がすべて同じでなければ、正確な比較になりません。治りそうな人が飲んで治り、治りにくそうな人が飲まなくて治らなかったとしても、やはり効いたかどうかはわからないのです。

「飲んだ、治った、だから効いた」は間違いです。「飲まないと治らないのか?」を確かめるために、研究者はいろいろな工夫をします。大事なのは適切なコントロールと比較するということです。

【執筆者・MEDLEYニュース編集長】

大脇 幸志郎
1983年生まれ。東京大学医学部卒業。卒後株式会社コングレに勤務し、医学会の運営に携わる。医療者と患者の情報格差に疑問を抱き、2011年から合同会社コンテクチュアズ(2012年、株式会社ゲンロンに社名変更)に勤務し、人文思想を扱う出版・イベント運営を行う。同年9月に同社から出版された『思想地図β』震災特別号では、震災直後の医療情報発信をテーマにしたインタビュー記事の聞き手を務める。2014年には医療をテーマにした公開インタビューシリーズの聞き手として、医療事故調査制度、患者申出療養(仮称)などの時事に触れる。2015年よりメドレーに参加。


元記事は▶︎▶︎「飲んだ、治った、効いた」は要注意!〔論文の読み方シリーズ〕

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