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2018年10月23日 17時36分 JST | 更新 2018年10月23日 17時57分 JST

「日本語が上手だね」と驚かれて、日本人として見られていないことを痛感した。

フランスにいる時はフランス人だと証明する必要はなかった。「完璧」なんてない、居心地の良さ。

アメリさん
アメリさん

「私は"完璧な日本人"にはなれない。だから、日本人として日本に住んでいても、常に"外側"にいる感覚です」

日本人であり、フランス人でもある天璃(アメリ)さんは、そう言って、唇を軽く噛みしめました。"完璧な日本人"という型にはまらない人は、どのような心境でいるのか。日本とフランスの文化や多様性には、どのような違いがあるのか。伝統を大切にしながらも、"違い"を受け入れていく重要性について、天璃さんと一緒に考えていきたいと思います。

HuffPost Japan
アメリさん(左)と筆者

 

 ——本日はよろしくお願いします。早速ですが、まずは経歴から教えてもらえますか?

「よろしくお願いします。私は東京で、日本人とフランス人の両親の間に生まれました。日本の保育園から、飯田橋にあるフランス人学校に進学し、この学校で2年間、フランスのカリキュラムに沿った授業を受けていました。フランス語で行われる授業です。その後、家族でパリの西部にあるサン=ジェルマン=アン=レーという街に引っ越し、高校卒業まで現地の学校に通いました。卒業後、早稲田大学に入学するために日本に帰国しました」

 ——フランスでは、日本語の補習校などに通っていたのですか?いきなり日本語で学術的な勉強をするのは大変だったと思いますが。

「両親は、私がそれぞれの言語と文化を理解できるようにと、幼い頃からサポートをしてくれていました。母親とはフランス語、父親とは日本語で会話をします。フランスで通っていたのも特殊な学校で、通常のフランス語の授業に加えて、日本語の授業もあるところでした。ですので、授業時間は週に35時間と通常よりも多く、大変だった記憶があります。『いとこや友人は一つの言語でいいのに、なんで私だけ』と。でも、そのおかげで今はどちらの言語も問題なく話せますし、私の2カ国のアイデンティティの一部でもあります」

 ——では、「何人ですか?」と聞かれたら、どう答えるのですか?

「必ず聞かれる質問ですね(笑)。『私は日本人で、フランス人です』と答えます。どちらかでもなければ、"ハーフ"でもないんです。物心ついた時から、家庭内の言語が二つ、パスポートも二つ、暮らした国も二カ国。どちらも否定できない、私の一部なんです」

 ——それぞれの国を知って、どんな違いに気がつきましたか?

「日本に一時帰国するたびに、『自分は完璧な日本人じゃないんだな』と悔しい気持ちを抱いていました。自分では日本人であるというアイデンティティが強かったのですが、周りからはあくまでも"日本人"ではなく"ハーフ"、つまり、中途半端に"半分"だけ日本人として扱われます。『日本語が上手だね』とか、『漢字も書けるんだね』と驚かれると、『ああ、日本人じゃないことが前提になっているんだなぁ』と悔しくなってしまって。なので『完璧なフランス人でありながら、完璧な日本人を目指さないと』と焦っていた時期もあります」

 ——"完璧な日本人"ですか。

 

「今の日本では"完璧な日本人"しか内側まで受け入れてもらえません。残念ながら。大和民族や黄色人種の容姿、間違いのない完璧な日本語、伝統的な習慣、型から外れない言動、国籍——それらが全てマジョリティに属さないと、"完璧な日本人"とはみなされないのでしょう。この社会はその"完璧な日本人たち"のもので、それ以外の人たちにすごく排他的だと思います。本当は様々な"日本人"というアイデンティティを持っている人や、日本社会につながりのある外国人も住んでいるのに。フランスにもルーツを持つ私は"完璧"になれないこと、無理して合わせる必要がないことにも気がつき、今は自分らしく生きています。自分らしく生きてると、やっぱり日本社会の"外側"にいるかのように扱われることも少なくありませんが」

 ——では、フランスでも"完璧なフランス人"を意識していたのですか?

「いえ、フランスにいる時は、フランス人であることを証明する必要はなかったんです。自分のことをフランス人だと思えば、フランス人。移民もいますし、いろんなルーツを持った人がいて当たり前なので、"完璧"なんてないんです。それは、居心地良かったですね」

HuffPost Japan
アメリさん

 

——フランスに居心地の良さを感じながらも、日本の大学に進学したのはなぜですか?

「『こんな日本人もいるんだよ!』と日本の人に私自身の存在を知ってもらいたいからです。閉鎖的な社会から逃げるのではなく、それを変えたいと思ったからです。私の周りには、日本とフランス両方にルーツを持つ人がたくさんいますが、日本に住むことには否定的な人が多かったんです。『閉鎖的すぎる』と。『だから、変えに行こうよ!』と私は伝えたんですけどね(笑)」

 ——「変えたい」と強く思うほど、日本に対するこだわりが強かったんですね。

「昔から"日本人"であるというアイデンティティが強く、日本が好きだという気持ちもありました。日本の魅力も知っているからです。海外にはないような丁寧な優しさ、人のおもてなし、清潔さ。伝統や食文化を大切にしているところも。そんな昔から守られてきたものがあるからこそ、保守的になり、"違い"を受け入れることへの壁が高くなってしまったのかもしれませんが...」

 ——守られてきた伝統や文化は、日本の魅力であると同時に、"違い"を受け入れることの妨げにもなってしまっているということですよね。"違い"を受け入れには、どうしたらいいのでしょうか?

「ステレオタイプで判断せず、個人個人と向き合うことが大事だと思います。"ハーフ"や"帰国子女"と一言で片付けられてしまいますが、その中にも本当にいろんな人がいるんです。向き合わないと、ステレオタイプが崩れないじゃないですか。向き合って相手を理解できたら、その人らしさをリスペクトすることが、コミュニケーションとして重要なことだと思っています」

 ——みんな違う。だから、一人一人に向き合うことが大切ですね。

 

「同時に、移民の受け入れの話、複雑なアイデンティティの話、二重国籍の話、異文化の話をする機会を増やすことも大切だと思います。日本でも外国にルーツを持つ人は毎年増えています。これは避けられない変化で、社会も対応するために変わる必要があります。メディアでもこのような議論が進めば、個人間でも話に出やすくなりますよね。"ハーフタレント"と自称する人たちをメディアで見かけますが、自虐やお笑いだけでなく、人種や文化などの社会問題についても語れる存在が増えるといいですよね。どのような課題があるのか、どのように改善できるのか、みんなで考えていきいと思います」

 

 ——"違い"を受け入れることで、より良いコミュニケーションが増えるといいですね。天璃さん、本日はありがとうございました。

HuffPost Japan
Shiori Clark

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