全身性細菌感染症の大半は、ヒト微生物相に由来する内在性病原菌によって引き起こされる。中でも日和見病原菌である黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)は、外鼻孔の開口部によく見られ、多剤耐性株が蔓延しているため、臨床的に最も重要な病原菌の1つである。病原菌の定着を許容あるいは防止する機構はいまだによく分かっていない。
今回、黄色ブドウ球菌と鼻腔内ニッチを共有し、ヒトでの黄色ブドウ球菌の保菌率低下と関連付けられている共生細菌S. lugdunensisが、動物モデルで黄色ブドウ球菌の定着を防止する新規の環状ペプチド抗生物質「lugdunin」を産生することが示された。
lugduninは、主要な病原菌に対して殺菌効果を示し、黄色ブドウ球菌での耐性出現の傾向がないことから、lugduninあるいはlugduninを産生する共生細菌はブドウ球菌感染を防止するのに役立つ可能性がある。
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Nature535, 7613
2016年7月28日
原著論文:
doi:10.1038/nature18634
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