Credit: Kang Zhang MD, PhD; Yizhi Liu, MD, PhD
世界でも最も多い失明原因である白内障に対し、現在行われている唯一の治療法は、濁った水晶体を外科的に除去し、人工眼内レンズを移植することである。この技術にはいくつかの制限があるため、再生医学的手法の可能性に大きな関心が寄せられている。
今回、2編の論文が、角膜を含めた眼科治療の新たな可能性を示唆する成果を報告している。
K Zhangたちは、哺乳類の水晶体の上皮幹/前駆細胞を単離し、その再生にはPax6とBmi1が必要であることを示している。Zhangたちはまた、これらの細胞を維持した状態で白内障に罹患した組織を除去する手法を開発し、白内障のウサギ、マカク属サル、およびヒト幼児で水晶体を再生させた。
一方、西田幸二(大阪大学)たちは、ヒト誘導多能性幹(iPS)細胞からin vitroでSEAM(self-formed ectodermal autonomous multi-zone)を形成させるプロトコルを報告している。従来の実験では、主に1つの細胞タイプを得ることに焦点を合わせていたが、SEAMは、眼表面外胚葉、水晶体、神経-網膜、網膜色素上皮に相当する異なる細胞系譜を含んでいる。
西田たちは、SEAM由来の細胞を増殖させて角膜上皮を形成し、それを動物の失明モデルに移植すると、視覚機能が回復することを示した。
Nature531, 7594
2016年3月17日
原著論文:
doi:10.1038/nature17000
doi:10.1038/nature17181
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