事務局長時代のコラム「どまんなか直球勝負!」から、このたびから新装開店となった。10月に行った連合会長就任のあいさつでも触れたように、この2年間は一筋縄ではいかない2年間と覚悟している。クセ球、変化球も飛んでくるだろうが、しっかりボールを見据えつつ、フルスイングを心がけていきたい。
「自分たちのもの」という思いが動かす、社会の仕組み
ご覧になった方もいらっしゃると思うが、10月21日、BSフジの報道・討論番組「プライムニュース」に出演させていただいた。これからもあらゆる機会を捉えて、連合が何を考え、どう行動しているかを広く世の中に訴え、連合運動に対する理解や共感を得る努力を重ねたいと考えている。
番組では、連合運動の課題などについて議論し、最後には出演者が今後の展望など一言をパネルに書き込む。私は一言、「自分たちのもの」と書かせていただいた。
私たち日本人は、「お任せ民主主義」などという物言いに象徴されるがごとく、政治をはじめとした社会の仕組みを自分たちのものとして実感する習いに欠けるところがあるように感じる。労働組合の活動についてもしかり。本部や役員任せではなく、一人ひとりの主体的な思いがあって初めてタテ・ヨコの運動に力が備わる。そのための丁寧なキャッチボールを大切にしたい。そんな思いも込めたつもりである。
伝えていくべき、連合の「根っこのところ」
2016春季生活闘争は、闘争方針の基本構想について、目下、中央委員会に向けた組織討議が本格化している。
メディアからも一定の注目をいただいているところだが、その中身を見ると、賃上げ要求の考え方の「数値」ばかりが取り上げられている。もちろんそれを抜きにした旗振りは私たち自身も難しい。しかし、さまざまな受け手が数値からどのようなメッセージを感じ取るかは、はっきり言って千差万別である。時には誤解をもって受け止められかねない。
それだけに私たち連合は、「根っこのところ」のメッセージを強く発信していかねばならない。
「根っこ」でまず重要なことは「持続性」だ。20年近く続いたデフレからの脱却は1年や2年で実現するものではない。足元の物価上昇が不明確であっても、賃上げは今後中長期に続いていくという確信を持てるか否かが問われている。同時に、私たちは超少子高齢化・人口減少という構造問題への対応も迫られている。今次闘争をこの課題への取り組み元年と位置づけ、社会経済の安定と持続的・自律的な成長のため、わが国唯一の財産ともいえる人財の確保・育成のための「人への投資」を強く求める必要がある。
もう一つの「根っこ」は、「底上げ、底支え」「格差是正」であり、マクロの視点に立って「どこに光を当てるのか」ということだ。地場の中小企業、非正規と呼ばれる形態で働く人々、そして労使関係が確立していないところへの広がりこそが問われている。そこへの波及なくして真のデフレ脱却・好循環は実現しえない。
そして「地域への広がり」をいかにつくり出せるか。最低賃金のよりいっそうの引き上げ、取引環境の適正化が欠かせない。2015春季生活闘争で各地方連合会に取り組んでいただいた「地域フォーラム」の取り組みの輪をさらに広げ、全都道府県での実施につなげ、地域経済の活性化には賃金の上昇と生産性の向上が不可欠であることを組織の内外に広く訴えていきたい。
ぜひ、それぞれの持ち場、立場でしっかり認識合わせをお願いしたい。その上で、連合ならではの取り組みに全力を発揮していこう。
ミャンマーで政権交代へ、一票が社会を変える
ミャンマーから歓迎すべきニュースが入ってきた。11月8日に行われた民政移管後初めての総選挙で、アウンサンスーチー氏が率いる野党NLD(国民民主連盟)が歴史的な勝利を果たした。この稿を書いている時点では結果が確定していないが、政権交代が確実視されている。連合は国際労働運動とともにミャンマーの民主化や民主的な労働運動の基盤づくりを支援してきた。
今回の結果は、まさに「みずからの一票で社会を変える」ことの体現であり、長年にわたる苦難の中で民主主義を求め続けた国民の真摯な願いが結実したものだ。軍との折り合い、公正な労働基準の確立や労働運動の定着など課題はあるが、ぜひとも前に進めてほしい。私たちも一票が持つ力をあらためて感じたい。
(11月13日記)
※こちらの記事は日本労働組合総連合会が企画・編集する「月刊連合 2015年12月号」に掲載された記事をWeb用に編集したものです。
Also on HuffPost: