「持続可能な開発目標」がついに採択へ
今年9月25日-27日、ニューヨークの国連総会の特別サミットで、今後15年間で世界が目指すべき共通目標、「持続可能な開発目標」(SDGs)を含む「私たちの世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」が採択される。
SDGsの17目標と169のターゲットは、社会、経済、環境の課題を統合し、「変革」を目指す野心的な目標群で、これまで約3年間の年月をかけ、終盤には何日も徹夜続きの難しい交渉を経て、国連の全加盟国193か国により合意された。トップダウンで決められた2015年を期限とする国連ミレニアム開発目標(MDGs)とは違い、SDGsは各国政府や国際機関のみならず、世界中の市民社会や研究者、企業など多様なステークホルダーが策定プロセスに参加し、意見を投じてきた。その背景には、このままでは社会、経済、環境が立ち行かず、共に破綻する運命共同体としての意識と危機感がある。筆者の所属するセーブ・ザ・チルドレンも、すべての子どもの権利の実現の視点から、積極的な提言活動を行ってきた。
「誰一人取り残さない」ために
SDGsの最も重要な特徴の一つに、「絶対的貧困や飢餓を終わらせる」、「あらゆる形態の女性・女児への差別を終わらせる」、「あらゆる形態の子どもに対する暴力を終わらせる」といったいわゆる「ゼロ目標」(ゼロを目指す目標)を掲げていることがある。今やSDGsのかけ声となった"Leave no one behind"(誰一人取り残さない)を実現するためには、MDGsのように人口の一定割合のみの達成を目指すのではなく、貧困や格差の構造的な要因に切り込み、これまでリーチが難しいとして焦点が置かれなかった最も貧しい人々、社会の隅に追いやられてきた人々を何よりも優先させる必要がある。そのためには、データ収集や分析力を向上し、あらゆる社会・経済層別のデータを取ることでどこに差が生じているのかをあぶり出し、そのギャップを埋める政策や資金配分の取り組みが不可欠である。例えば、多くのアフリカの国々では国全体の乳幼児死亡率は改善していても、貧困層の子どもの死亡率は、富裕層の子どもの死亡率と比べて平均して約2倍高い。過去15年間で貧困は大幅に削減されたと言われるが、未だに10億人の人々が極度の貧困にあえぎ、その約半数が子どもである。もぎとりやすい果実だけに着目していては、取り残される母親や子どもたちは決してなくならない。
copyright Sandy Maroun/Save the Children
求められる日本の行動
SDGsのもう一つ重要な特徴として、開発途上国のみならず、先進国も責任を負う「普遍的」目標という点がある。ジェンダー平等(目標5)、国内格差の是正(目標10)、災害に強いまちづくり(目標11)、持続可能な生産と消費(目標12)など、SDGsが掲げる17目標には、日本が抱える課題とも関連する目標が数多くある。国内の子どもの状況に目を向ければ、相対的貧困率16.3%と、子どもの約6人に1人は貧困状態にあり、虐待による子どもの死亡は年間50件を超えるなど深刻である。決して対岸の火事ではなく、自らの問題としての関わりが求められる。
安倍首相には、9月の国連総会で、国内外で目標を実現していくための政治的意思と積極的で具体的な施策、そして国内の実施体制づくりの表明を望む。「誰一人取り残さない」については、日本政府もこれまで国際交渉の場で何度も支持を表明してきた。掛け声だけで終わらせてはいけない。そして私たち市民社会も、政府や企業、研究者との連携を強め、目標達成に向けて何が出来るかを共に考え、動くことが重要だ。2030年を見据え、ただちに行動を起こそう。
公益社団法人 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
アドボカシー・マネージャー 堀江由美子