日本の気候にも影響を与えるエルニーニョ現象に、5-10年の間隔で変動している大気-海洋間のエネルギー交換の振幅も関わっていることが、海洋研究開発機構と京都大学の研究で分かった。この結果をエルニーニョ予測モデルに組み込んだところ、これまで難しいとされてきた「春先にその年のエルニーニョ現象を予測する精度」を大幅に向上することができた、と研究チームは言っている。
エルニーニョは、赤道中央から東部のペルー沖にかけた熱帯太平洋域の海面水温が上昇する現象。地球規模の気候変動をもたらし、西日本が冷夏、東日本が暖冬傾向になるなど日本の気候にも影響することが知られている。海洋研究開発機構をはじめとする各国の気象機関などが、数値モデルや海洋、大気観測データを用いた予測手法の研究に力を入れている。しかし、予測の精度はまだ不十分で、冬に発達することが多いエルニーニョ現象をその年の春先に予測することが特に難しかった。
研究チームは、1960年から2006年までの海洋と大気の観測データなどから海上風が海面を通じて海水を動かす仕事量の変化を調べたところ、この大気-海洋間のエネルギー交換が強い年と弱い年が5-10年の間隔で交互に現れることが分かった。こうしたエネルギー交換の振幅を取り入れた予測法を開発し、過去のエルニーニョ現象を対象にスーパーコンピューター「地球シミュレータ」で実証実験をしたところ、予測精度が大幅に向上することが確認できた。春先からの予測が特に難しかった2014年の現象でも、予測精度が上がったことが確かめられたという。
エルニーニョ現象の予測精度向上は、漁業、農業、防災などの分野で役立つと期待されている。海洋研究開発機構によると、今回の成果はエルニーニョ予測研究の重要な不確定要素を一つ明らかにしたことになる。今後、観測データと数値シミュレーション結果を融合させる新たな手法を取り入れることなどにより、エルニーニョ予測精度のさらなる向上を目指すという。
関連リンク
・海洋研究開発機構・京都大学プレスリリース「エルニーニョ予測の新展開∼春先からの予測精度向上に新たな可能性∼」
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