人間同士が見つめ合い、互いに注意を向け合うと、脳の活動パターンが同じように変化する¬ことを、自然科学研究機構生理学研究所の定藤規弘(さだふじ のりひろ)教授と名古屋大学の田邊宏樹(たなべ ひろき)教授らの研究グループが明らかにした。人間が相互理解する上で互いに視覚的な注意を払うことが大切であることを示す興味深い研究成果だ。
これまでも、人間が見つめるなどして注意を払い合うことが、コミュニケーションをとりながら相互理解していく上での基礎と考えられていたが、脳の中でどのような変化が起きているのか、は分かっていなかった。生理学研究所と名古屋大学の共同研究グループは、初対面の2人に見つめ合ってもらい、脳活動の変化を機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)を使って計測した。計測実験は2日間実施した。
その結果、初日の実験では、2人の大脳皮質の一部が同じように変化(同期)した一方、目の瞬きのタイミングについては2人とも変化しなかった。2日目の実験では、大脳皮質のさらに広い部分に同期が起きていた上、瞬きのタイミングも合うようになっていた。これらのことから研究グループは、見つめ合うという互いに視覚的注意を払う状態(注意共有)が、瞬きという無意識の行為を通じて2人の脳活動のパターンを同じように変化させる働きがあること、が明らかになった、としている。
生理学研究所の定藤教授は「見つめ合う、という注意共有は、脳活動のパターンを同一にすることで、その後のコミュニケーションを円滑に開始する働きがあるのかもしれない。今後注意共有のメカニズムをさらに明らかにしていくことにより、教育現場での効果的な学習方法や、コミュニケーションを不得手とする疾患の新たな行動療法の開発などが期待できる」と話している。
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