こんばんは、おときた駿@ブロガー都議会議員(北区選出)です。
本日行われた前川元知事本局長、赤星元政策報道室理事、野村元政策報道室部長の3名の証人尋問が終わり、百条委員会の第一ステージはいったんの区切りとなりました。
一部の報道におかれましては、
「結局、何も明らかになっていないではないか!」
との見解もありますが、そんなことは決してありません。24名の証人と、24時間を超える尋問時間。そして東京都・東京ガスから提出された数多の記録により、新たな事実が次々と明らかになっています。
証人尋問が一段落したところで、重要なポイントを以下にまとめておきたいと思います。
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まず結論から言いますと、これまでの調査を通じて、
・なぜ土地売却に難色を示していた東京ガスが、浜渦副知事による「水面下交渉」で態度を翻したのか
・なぜ土壌汚染費用について、結果的に東京都側が多大な負担を負うことになったのか
この2つの理由がわかりました。
端的に言えば、功を焦った浜渦副知事たちが不適切な交渉を行い、さらに土壌汚染対策について大幅な譲歩をしていたことが最たる要因です。
浜渦副知事(当時)は百条委員会や各種マスメディアにおいて、自分の誠意ある交渉によって東京ガスが土地売却に転じたことや、土壌汚染についてはきっちりキレイにした上で売却する内容を取りまとめたことなどを主張していますが、多くの客観的記録が示す事実は明確に異なります。
まず交渉過程においては、以前に取り上げた「土壌Xday」なる単語を用いて、政治的圧力とも言える駆け引きが存在したことを、東京ガス側が公的に提出した記録が示唆しています。
参考:水面下交渉の新事実「土壌Xday」。安全・安心の政治利用は、浜渦・石原都政から始まっていたのでは
この強気な交渉が「ムチ」だとすれば、一方では「アメ」とも言える取引も存在します。それがこの百条委員会が開催されるまで、東京都が頑なに隠蔽していた「確認書」の存在です
平成13年7月に、野村元政策報道室部長の私印(署名)によって締結されたこの確認書の内容は、驚くべきものでした。そこには土壌汚染対策について、汚染土壌が残置された状態で可とする旨が明確に記載されていたのです。
東京ガスが豊洲の土地売却を渋っていた最大の要因の一つは、土壌汚染対策です。ガス工場の創業由来の物質で汚染された土地を完璧に浄化しようと思えば、途方もない手間とコストが発生します。しかしながら、その多くを東京都が負担するというのであれば、話はまったく別です。
なんのことはない、浜渦副知事は困難な交渉をまとめた「タフネゴシエーター」でもなんでもなく、「汚染土壌が残置されたままでもよい」と大幅な譲歩を行い、交渉を取りまとめただけだったとも言えるのです。
ここで東京都が譲歩した内容が、その後に判明した高濃度の汚染物質除去に対応する際の基準になり、結果として瑕疵担保責任を東京ガス側に強く求めることができず、莫大な都税が汚染除去に投じられることになりました。
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この時、土壌汚染費用がこれほどまで(数百億円)にまで膨れ上がる見通しが浜渦副知事らに、どこまであったのかはわかりません。
しかしながら、都民に不利益をもたらしかねないこの妥協・譲歩は、浜渦副知事らにとって絶対に知られてはいけない「暗部」だったようです。
だからこそ、この「確認書」の存在は都庁内では闇に葬られ、歴代市場長にも知事本局長にも引き継ぎ・共有されることはありませんでした。
一方で、交渉相手の東京ガスはこの内容を「二者間合意」として確かに認識しており、この確認書が効力とともに実在していることを証明しています。
浜渦副知事は、自らの交渉でこのような「妥協」を図ったことを頑なに認めず、百条委員会で二つの疑わしい主張をしています。
1.
平成13年7月の合意書締結以降は、市場移転問題については一切関わっていない。自分がいれば、こんなこと(多額の土壌汚染対策費を都が負担すること)にはならなかった!
2.
そもそも汚染土壌が残置されるとする「確認書」の存在を、私は一切しらない。役人が勝手にやったことだ!
前者については、平成13年7月以降も浜渦氏が市場移転に携わっていた記録は複数存在します。一例をパネルにまとめたものがこちらです。
さらに本日は、知事本局長として当時の都庁を誰よりもよく知る前川証人が、当時の体制は「浜渦副知事が実質的な権限者である」旨も繰り返し証言しています。
そして、「自分がいればこんなことにはならなかった!」という主張はむしろまったくの逆で、浜渦副知事らがここで交わした密約が禍根となっていることは、すでに触れたとおりです。
後者の確認書の存在についても、署名をした野村証人が独断でやったことではなく、上司に報告をあげたことを認めています。
確かな公的記録の存在+百条委員会における証人の証言。この2つが揃ったことで、浜渦氏がもっともらしく主張していた発言の数々は、偽証の疑いが濃厚であると断じざる得ません。
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以上のように、これまでの百条委員会の調査・尋問を通じて、今日に至る市場移転、とりわけ土壌汚染対策をめぐる混乱の原因は、浜渦・石原都政下における意思決定にあったことが明らかになっています。
水面下でこのような交渉という名の不都合な妥協が行われ、それが共有されていないというブラックボックス状態は、まさに盛土問題にも通じる都庁のガバナンス欠如を示しています。
もちろん、プロセスが不適切だったからといって、豊洲市場の土地や存在そのものがすべてダメだというわけではありません。
しかしながらこうした事実を明らかにし、責任の所在を明確化するとともに、再発防止に努めることで初めて、都政と市場に対する信頼を取り戻していくことができるのではないでしょうか。
今後の百条委員会がどのような形で続いていくのかはまだわかりませんが、「水面下交渉」の真実が明らかになっただけでも、調査・尋問に少なからず成果はあったものと感じています。
6月に向けて取りまとめされる報告書の内容は、都民にとって有益な情報になることは間違いないでしょう。
引き続き、本日の証人たちの証言内容を精査しつつ、偽証の認定や更なる事実の追及に向けて、審議を重ねて参ります。
それでは、また明日。
(2017年4月5日「おときた駿 公式サイト」より転載)