なぜ企業にサービスデザインが必要なのか?

サービスデザインとは手法であり、目的ではない。

サービスデザインで事業と組織を顧客志向に変革していく

2016年10月27日と28日に行われる第9回サービスデザイン・グローバル・カンファレンス 2016(SDGC2016)に参加するために、現在オランダのアムステルダムを訪れている。カンファレンスに先駆けて行われた、サービスデザインの先駆者的存在であるLiveworkによるワークショップに参加したので、その様子をお伝えする。

私が参加したのはビジネス向けにサービスデザインの基本を学ぶ講座。参加者は30人程度で、私のいたテーブルだけでもオーストラリア、ロシア、ベネズエラ、カナダ、ノルウェーと、それぞれ異なる国から参加していた。デザイン会社所属もしくは企業内のUXデザイナー、サービスデザイナー、プロダクトデザイナーがメインで、インナーブランディング&組織開発系のコンサルタントは私一人だ。

「なぜこの講座に参加したのか、なぜサービスデザインを学ぶのか」という講師の問いに対する参加者の答えは以下の3つに分類できた。

1)組織をイノベーション志向、デザイン指向に変革していくため

2)ビジネスモデルの変化(BtoBからBtoCへと変化など)に対応するため

3)デジタルシフトに対応するため

ちなみに私の答えは、インナーブランディングや組織変革とサービスデザインを結び付け、顧客志向の組織へと変革していくサービスを立ち上げたい、というもの。講師からは、SDGCでもここ数年、サービスデザインと組織構造や人事といった部門との接点や協働の必要性がホットな話題だというコメントをいただいた。

いずれにしても、サービスデザインとは手法であり、目的ではない。本来の目的は、顧客中心経営の実現であり、カスタマーエクスペリエンスの永続的な向上にある。つまり最終ゴールは、インナーブランディングや組織変革と同じなのである。しかし、現実にサービスデザインが組織内で遭遇する壁は高く大きく、組織風土との闘い、組織構造・事業構造との闘いが行く手を阻んでいるようだ。

サービスデザインが注目を浴びる背景は?

講師からも参加者からも危機感を持って語られたことは、「将来はモノを売るという行為がなくなる」という発想が企業側にあるということだ。では将来そうなった時に、自分たちは顧客にとって、社会にとってどんな存在であるべきなのか。これを真剣に考えていく必要性があるというのだ。特に製造業がこのあたりを真剣に考え始めており、その解決策の一つとしてサービスデザインが注目されているとのことだった。

また、サービスデザインの本質は、「顧客満足」「業務効率」「売上向上」のトライアングルを実現するもの。すなわち本質的な価値を見抜き、価値提供のプロセスを再設計、再構築していくためのプロセスである。外部環境や顧客・マーケットが激しく変化するなか、多くの企業はその変化に対応し事業を再構築していくことが求められている。今、何をすべきなのかを考えるための方法論としても、サービスデザインは重要性を増しているようだ。

サービスデザインと組織変革のプロセスを統合して進めること。これが、「人と組織を元気にする」ことをミッションに掲げるソフィアにとって、今、まさに進めていくべき重要なことだと認識できた1日だった。

カンファレンスのレポートはまた後日お届けします。

Text by hirota

2016年10月28日 Sofia コラムより転載

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