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2018年06月17日 21時35分 JST | 更新 2018年06月17日 21時35分 JST

「同性愛者への法による差別を止めるべき」相続に関する民法改正で同性カップルは排除

約40年ぶりとなる相続に関する民法の改正案が今国会に提出され、6月15日に衆議院法務委員会を通過した。

約40年ぶりとなる相続に関する民法の改正案が今国会に提出され、6月15日に衆議院法務委員会を通過した。

その中でも、今回新設された「特別寄与」という制度に関して、同性カップルをめぐる扱いについて議論が起きた。

特別寄与とは

これまで、被相続人である「亡くなった人」の財産を相続することができるのは、子や配偶者、兄弟姉妹等だった。しかし、そうした人たち以外でも、亡くなった人を介護等でサポートしていた場合、財産の一部を請求できるようになるのが、今回の「特別寄与」の仕組みだ。

今回議論となっているのは、その対象となる人の範囲。

今年3月の時点では、請求できる人を「親族に限定する」案と、「親族以外にも認める」という2つの案が提出された。

もし「親族以外」にも請求が認められた場合、例えば異性の事実婚カップルや同性カップルも対象となり得る。

家族の形が多様化している昨今、パブリックコメントでも親族以外に広げるべきという声が多かった。しかし、6月15日に法務委員会で採択されたのは「親族に限定」の案だった。

附帯決議では、性的マイノリティ等の人が遺言について事前に相談できる仕組みを作ることや、遺言の積極的活用、遺言制度の周知に努めることなどが明記されが、今回の特別寄与に同性カップルは含まれないこととなり、今後の法案の見直しも規定されなかった。

急速な高齢化社会と家族の多様化

先日、衆議院法務委員会で、明治大学の鈴木賢教授が参考人としてこの件について発言した。

同性カップルは、たとえどれだけ長く連れ添い共に財産を築いても、相続において評価される仕組みがないこと、今回の「特別寄与」は現代の家族の多様化に対して実質的な公平性を図るものであるはずだと指摘。親族以外も含むべきだと話した。

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今回の法改正の背景には、急速な高齢化社会の進展、家族の在り方に関する国民の意識の変化などがある。

「具体的には非婚カップル、同性カップル、性愛を前提としない新しい形の親密圏、国際カップルの増加などがあります」。

現行の相続制度では、こうした多様な家族の形に十分対応しきれていない。そこで、今回の特別寄与制度の新設によって、相続人でなくとも、介護等で貢献した場合に財産の一部を請求できる、関係者間の実質的公平を図ることができるはずだった。

しかし、請求できる相続人以外は「親族のみ」に限られるという案が採用されてしまった。

同性カップルは、どれだけ長く連れ添っても相続において評価されない

「これでは約40年ぶりに21世紀に行われる相続法改正としては、新たな時代に即応した改正とは言えなくなると思います。

同性カップルは、すでに日本社会に多く存在しますが、同性愛者は偏見、無理解にさらされ、相続はもちろん、婚姻、社会保障、税制などの法制度においていかなる法的保護も与えられていません。

私自身、同性パートナーとの共同生活はすでに19年目に入りました。

日本の法律では同性カップルがたとえ何年連れ添い、協力して財産を築いても、相続において評価される仕組みが一切ありません」。

世界では、すでに25カ国で同性間の婚姻を認めており、日本でも渋谷区・世田谷区を皮切りに同性パートナーシップ制度がさまざまな自治体で施行され、同性カップルを家族として扱う動きが広がっている。

「このように日本でも、同性カップルをも家族として扱う社会通念が広がり始めています。

今回の相続法改正では、この流れにそって、同性パートナーにも特別寄与料の請求を認めるべきだと考えます」。

特別寄与料の請求から親族要件を外すべき

特別寄与がなくとも、遺言等によって財産を分け与えることも可能だという意見があるが、「特別寄与」制度の趣旨は「明確な契約や遺言がないまま被相続人が死亡してしまった場合に、(関係者間の)実質的公平を図る点」にある。

「現状では婚姻という選択肢が与えられていない同性カップルに対して、この程度の法的保障を与えても何ら弊害はないと考えます」。

これを踏まえて、鈴木教授は「『特別の寄与をした被相続人の親族』という文言を、『特別の寄与をした者』に変更し、特別寄与料の請求から親族要件をはずすべきだと考えます」と話した。

法による差別を止める方向への転換

また、鈴木教授は、親族要件を外すことで「日本でも同性カップルに対する法的保護の第一歩を記すべき」だと指摘する。

「同性カップルを婚姻から排除することは、国が法律によって同性愛者を差別することに荷担することに他なりません。

せめて相続法における特別寄与料請求からは排除しないという姿勢を示すことで、同性愛者に対する法による差別を止める方向へ転換すべきだということを強く求めたいと思います。

街で手をつないで歩くことすら勇気がいる同性カップル。何はばかることなく生活できる、そんな世の中を若者たちに与えて欲しい。

法律の小さな文言が日本を変える力になります。当委員会の委員におかれましては、どうかご賢察を賜りますようたちにはお願い申し上げます」。

最後に:同性婚をめぐる憲法の解釈について

そもそも同性間で婚姻が認められない理由ついて、憲法24条1項が『婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し』と規定しているからとする声がある。しかし、鈴木教授は「24条には同性間の婚姻についての明文での言及はなく、文理上、このように読むことはできません」と指摘。

「問題は、『両性の合意のみに基づいて』の『のみ』が、どの文言をうけたものかですが、憲法制定時の経緯を見てみると、世界の婚姻法においては当時、同性間の婚姻を認める例はなかったことから、「合意のみ」で成立し、親や家の合意は不要だという意味だとするのが正しい解釈です。

1946年の憲法制定時に、2001年のオランダにはじまる同性婚の法制化が実現することをあらかじめ予測し、あえて同性間の婚姻を禁じていたとする解釈が成り立つ余地はありません」。

 

残念ながら特別寄与に同性パートナーが含まれることはなかったが、一方で同性カップルの法的保障についてこうして議論されるようになったことは多少なりとも社会の変化を感じる。

相続に関する民法改正は来週にも衆議院本会議で採決される見込みだ。