福島県楢葉町、町内の学校の「時計の針」は止まったまま 震災から4年半

東京電力福島第一原発の事故で、福島県楢葉町のほぼ全域に出されていた避難指示が5日に解除されましたが、子どもたちの学び舎が再開するのは2年後の予定です。

東京電力福島第一原発の事故で、福島県楢葉町のほぼ全域に出されていた避難指示が5日に解除されましたが、子どもたちの学び舎が再開するのは2年後の予定です。

東日本大震災で被災した楢葉町にある楢葉北小学校の校舎。玄関にある時計は、東日本大震災発生時刻で止まったままで、げた箱には子どもたちのものとみられる靴が多く残されています。楢葉南小の運動場には雑草が生い茂っています。どちらも今後、小学校として使われる予定はないそうです。

被災した楢葉町立楢葉北小の校舎。時計は震災発生直後に止まったようです=どれも2015年9月に撮影

現在は、町の復旧関連の業者が校庭を利用しています

楢葉南小学校の校庭

楢葉北小、楢葉南小、楢葉中の3校は、いわき市の仮設校舎で授業を続けています。楢葉町から約30キロ離れたいわき明星大学の敷地内にあります。小中学生あわせて約150人。校舎内にはやはり子どもたちの元気な声が響きます。

 子どもたちは、広大ないわき市各地の仮設住宅などに暮らします。そのため、全員が登下校で計13台のスクールバスを利用します。通学で歩かない子どもたちのために、学校は「体作り運動」を毎日実施しています。運動不足解消が目的で、登校後や放課後にグラウンドや体育館内でランニングなどの運動をします。中学校の部活は活発で、運動系すべての部活の卓球、バドミントン、剣道部で、2年連続県大会に出ています。

いわき市の仮設校舎の下校時間、13台のスクールバスが学校に集まります

国から避難指示が解除されてから、楢葉町に戻った住民は人口約7400人のうち一割未満とみられ、小中学生はまだ戻っていないようです。帰ることを希望する子どもの保護者らに聞くと、楢葉町から仮設校舎までスクールバスで約1時間かかるため学校再開に合わせる、町の生活環境が整ったら、家のリフォームが終わり次第、などという声がありました。一方で、避難先で家を買ったことなどから、帰らないと決めている保護者もいます。

現在、町内で商品を買えるのは、仮設商店街のスーパーとコンビニだけで、病院はまだありません。家のリフォームは半年や1年待ちというケースもあります。楢葉町での学校の再開は、来年4月という案もありましたが、それまでに戻れなかった子どもたちのために、いまの仮設校舎を分校にするのかなどの議論も必要でした。町はこうした事情から、町内での再開は2年後の2017年4月と決めました。新しい楢葉中学校に3校を集約する考えです。

楢葉町役場の近くにある仮設の食堂とスーパー

楢葉町内の田畑だった場所などに置かれた、汚染土壌などを心配する声もあります

放射線量が下がったなどとして避難指示が解除され、約4年半ぶりに町が本格的に動き始めた楢葉町。松本幸英町長が「復興のスタートラインに立ったに過ぎない」と強調するように、町の再生はこれからです。

避難指示の解除を祝う楢葉町の復興祈念式典で「コンパクトタウン」構想を発表。松本町長と子どもたちが幕を開けました

福島県楢葉町の避難解除の記事は、朝日小学生新聞9月8日、朝日中高生新聞9月13日付に掲載しました。新聞についてくわしくはジュニア朝日のウェブサイト(http://asagaku.com)。

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