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2014年08月02日 17時26分 JST | 更新 2014年09月30日 18時12分 JST

川を泳ぐ姿を確認!国境を越えるシベリアトラ

広い行動範囲を持つ野生動物が、人間が引いた国境線を越えて移動することは珍しくありません。2014年6月12日には、極東ロシアに生息するシベリアトラが、中国との国境にあたるウスリー川を泳いで渡る姿が目撃されました。こうした野生動物の保護には、国境を越えた取り組みと協力が欠かせません。保護活動の最前線からの報告をお届けします。

地元漁師が泳いで渡る姿を目撃

アジア北東部に生息するトラの亜種シベリアトラ(アムールトラ)は、その個体数が500頭前後と推定されており、今も密猟や生息地の森林伐採などにより、絶滅の危機に瀕しています。

その大半は、極東ロシアに生息していますが、国境を越えた中国側にも20頭程度が生息していると考えられており、この2国間を移動している事例も報告されています。

2014年6月12日にも、シベリアトラが実際にロシアから中国へと越境してくる様子が、中国の地元漁師2人によって目撃されました。

目撃現場は、ロシアのボルシェヘツィリスキー自然保護区と、中国の三江自然保護区の湿地帯近くを流れるウスリー川の川辺で、川幅が300~350mある場所でした。

漁師の方々はここで、川を流れるようにしながら渡ってくる物体が、2頭のシベリアトラだとわかり、その模様を携帯電話で録画したとのことです。

トラが川を泳いで渡ること自体は珍しいことではありませんが、大型ネコ科動物は長距離を泳ぐことが得意ではなく、これほどの川幅を泳ぎ切ったことに専門家も驚いています。

この2頭はオスとメスで、ロシア側の自然保護区で冬を過ごしたものの、保護区の広さが十分ではないため、国境をはさんで隣接する三江自然保護区へと足を伸ばしたと見られます。

WWFロシア・アムール支部の生物多様性保全プログラム・コーディネーターであるパベル・フォメンコは、次のように述べています。

「このトラたちがウスリー川を渡った理由は、獲物や繁殖相手、あるいは新たな生息場所を探すためだったかもしれません」

過去にもあった越境と移動の記録

今回、2頭のトラが目撃された場所以外にも、中国とロシアの国境地帯には、国境線をはさんで設置されている自然保護地域が3つあります。そのうち2つは長白山地域に、1つは完達山地域にあります。

WWFも2013年3月に、完達山地域でシベリアトラが越境する姿を記録しており、この時は、ある1頭のオスの個体が、非常に広い範囲を移動していたことが分かりました。

このオスは実に、ロシア・ハバロフスク地方のヘフツィール地域 から、同じく沿海地方のスレドネ・ウスリースキー野生生物保護区まで移動。

その後さらに、中国の科学者によって、国境を越えた完達山地域の東方紅自然保護区で足跡を確認されました。

その移動距離は、直線距離だけで見ても300キロにおよびます 。

こうした過去の目撃情報からも明らかなように、野生動物にとって国境は無関係です。 国境を越えて移動するトラを保護するために、中国とロシアのWWFは、協力してトラの移動状況を調査し、地元の人々や政府当局の協力を得て、トラがどちらの国でも安全に生息できるよう活動に取り組んでいきます。

また、こうしたトラの保護については、日本にも果たせる役割があります。

それは、国境を越えて流通するロシアの違法伐採材を、日本の企業や消費者が買わないという選択です。

ロシアで違法に伐採された木材は、中国で建材や家具に加工された後、日本に輸出されていることが他NGOの調査等により指摘されています。こうした違法な森林伐採がトラの生息地減少をもたらし、個体数減少の要因の1つとなっています。 WWFでは、今後も日本の企業や消費者に対して、FSC認証材の様な持続可能な方法で生産された木材を調達・購入するよう働きかけていきます。

関連情報

極東ロシアで許可量を大幅に上回る木材が違法に伐採されていることを定量的に明らかにした報告書