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2018年06月04日 11時10分 JST | 更新 2018年06月04日 11時10分 JST

ハンセン病回復者たちに勇気とパワーを。

世界で最も多くの患者、回復者を抱えるインドでは、2005年末に回復者組織のAPALが結成されました。

日本財団
インドの回復者組織APALのナルサッパ会長(右)とベヌ・ゴパール副会長。

ハンセン病をめぐる医療、社会の両面の問題を解決するにあたって、現在大きな力を発揮しつつあるのが、回復者自身たちによる活動です。すでにインド、ブラジル、インドネシア、エチオピアで国レベルでの回復者組織が結成され、差別撤廃、社会復帰、生活保障、患者発見などに精力的に取り組んでいます。このような活動は、他の病気ではほとんど見られません。

世界で最も多くの患者、回復者を抱えるインドでは、2005年末に回復者組織のAPALが結成されました。初代の会長はゴパール博士にお願いしました。ゴパール博士は社会学者であるとともに、かつて患者だった自らの体験をもとに、長年にわたって患者、回復者の支援活動に積極的に携わってきた人物です。ゴパール博士が、あらためて自身が回復者であることを公表し、リーダーシップを発揮したことは、多くの患者や回復者に勇気を与えました。

日本財団
国連の会議で発言するP.K.ゴパール博士。

2015年からは、ヴァガヴァタリ・ナルサッパがAPAL会長を務めています。ナルサッパさんは9歳のときにハンセン病を発症、その症状を見た母親は神罰だと怖れました。病院に収容された彼は、学校に通うことができず、勉強は同じハンセン病患者から教えられました。何とか中学入試は受けることができたものの、教室ではなく炎天下の運動場で、答案用紙を投げつけられての受験でした。一時は定職に就きましたが、差別のために解雇され、結局、彼は物乞いになるしかありませんでした。

やがてナルサッパさんは、回復者の生活環境の改善のための行動を始めます。APAL会長となった彼は、独学で英語を学び、今では私よりもよほど流暢に英語を話します。インドのモディ首相と会見したときも、臆することなく堂々と回復者の窮状を訴え、権利回復を主張しました。

各国の回復者組織は私たちの活動のパートナーであるだけでなく、すでに様々な問題解決の主役となっています。また、ハンセン病患者の絶望も孤独も自ら体験している彼らこそ、主役であらねばなりません。彼らが主役であってこそ、真の問題解決に繋がるのだと思います。

私は、ハンセン病制圧という目標を同じくする関係者のまとめ役として、WHO(世界保健機関)ハンセン病制圧大使に任命されたことで、それまで以上に、各国のリーダー、あるいは行政組織のトップたちと、スムーズに面会できるようになりました。私はリーダーたちと会うときには、必ず回復者組織のメンバーに同行してもらうようにしています。現場の声を当事者から直接リーダーたちに伝えること、そして回復者と行政担当者が同じテーブルにつき、問題に対して同じ方向を向くことが重要だと考えるからです。多くの場合、そこでは何らかの対策や具体的な取り組みへの道筋が共有されます。そしてトップやリーダーが決断することにより、予算が確保され、施策がスピーディーに実行されます。

私の役割はあくまでも仲介者であり、その場で語られたこと、約束されたことの証人であることだと考えています。私が同じ国、同じ地域を何度も訪れるのは、約束が守られているかどうかを見届けるという意味もあります。そして訪れるたびに「主役」たちが、逞しく、そして自信に満ちていく姿に触れることが、私にとっての大きな喜びの一つでもあります。